秀吉好み「天野酒」を今も引き継ぐ
西條合資会社旧店舗・主屋(国登録文化財)
さいじょうごうしがいしゃきゅうてんぽ・おもや
所在地:河内長野市長野町13-1
最寄駅:南海高野線・近鉄長野線「河内長野」駅下車徒歩5分
連絡先:TEL(0721)55-1101 FAX(0721)56-1101
<参考>「大阪府の登録文化財2008」
高野山の麓近く、といっても河内長野駅前は再開発ビルが壁のように建ち、一歩奥に入ると住宅が立ち並ぶ。そんな一帯に蛍が戻ってきた。6月末から7月初めに地元料亭と西條酒造のコラボレーションで「蛍の宴」が催された。乱舞とは程遠かったが、あちこちでひそやかな光が飛ぶのを目の当たりにして呑む「天野酒」はことのほか甘露で、秀吉もかくやと思える心持となった。
昨年5月号でも紹介したが、「天野酒」は室町から戦国時代にかけて天野山金剛寺で造られた僧坊酒で、秀吉が特に好んだと伝えられている。享保3年(1718)創業、290年余の伝統を持つ西條蔵が、昭和46年(1971)に復活させ今に至っている。
旧店舗は幕末の頃の建築で、ツシ2階に五つの虫籠窓を連ねた、造り酒屋にふさわしい風格を備えている。現在使用されていないため内部は荒れているが、道路を隔てて建つ現店舗と共に歴史を感じさせるまちなみを形成している。現店舗、工場の建築は●●●●年で、踏み込むと三和土になっており、客の待合と、かつては最新であったろう事務所になっている。周辺一帯も古いまちなみを残しており、駅近であることを忘れさせる。
駅前の再開発ビル1階にはアンテナショップ「なまくら」があり、ここでしか呑めない蔵出しのお酒を美しい切子のグラスで楽しめる。但しビールや焼酎は置いてないのでご注意を。
最近では大阪府立大学と連携して古代米「アカムラサキ」を使用したお酒「なにわの育」を試作。歴史的景観を守るだけでなく、地元企業として頑張りを見せている。(鶴田 晴子)