キシレン
(3)キシレン
<一般的性質>
キシレンは無色でベンゼン様の芳香を持つ。市販品はo-,m-,p-の混合物である。常温では可燃性の液体。分子量は106.16で、常温での蒸気圧は約1.3kPa(0.8〜2.2kPaの混合)、蒸気密度は約3.7である。従って揮発性は高いが、空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、通常は対流により拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる。
<主な家庭内における用途と推定される発生源>
接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、通常は他の溶剤と混合して用いられる。キシレンの市販品は通常エチルベンゼンも含んでいる。トルエンと同様、ガソリンのアンチノッキング剤として添加されることがある。
室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、内装材等の施工用接着剤、塗料等からの放散である。建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である。
<健康影響>
トルエンと同様、労働環境における許容濃度として100ppmが勧告されている。また高濃度の短期暴露の影響はトルエンと類似している。蒸気はのどや目を刺激し、頭痛、疲労、精神錯乱を起こすことがあるという。200ppm程度の濃度で明らかに目、鼻、喉が刺激され、労働者の中に作業反応時間の延長するものが出るといわれている。生物学的半減期は4〜7時間と推定されている。
また、比較的高濃度の長期暴露により頭痛、不眠症、興奮等の神経症状へ影響を与えることがあるといわれている。発がん性の指摘はない。
<現在の指針値>
現在の指針値は、870μg/m3(0.20ppm)で、安全性の観点から影響が認められた濃度のうち最も低くなる、ラットの中枢神経系への影響が認められた濃度を採用し、これに安全率を加味して設定している。
厚生労働省「室内空気中化学物質についての相談マニュアル作成の手引き」