室内空気中化学物質測定方法

1.測定時刻及び場所
 測定前 :30分間換気後5時間以上密閉。
 測定時刻:午後2?3時頃が望ましい。
 測定場所:居間、寝室、及び外気を各1ヶ所。(一般測定の場合)
 測定位置:部屋の中央付近の少なくとも壁から1m以上離した高さ1.2?1.5mの位置。

厚生労働省「室内空気中化学物質の測定マニュアル(案)」より
 新築住宅の測定においては、30分換気後に対象室内を5時間以上密閉し、その後概ね30分間空気を採取する。採取の時刻は午後2?3時頃に設定することが望ましい換気は窓、扉、建具、備付品の扉等の全てを開いて行い、密閉中は外気に面した開部は閉鎖する。全ての操作中常時換気システムを有している場合は稼働させてよいこのシステムに必要な開口部は閉鎖の必要はない。
 居住住宅の測定においては、日常生活を営みながら空気を24時間採取する。
<解説>
 新築住宅を対象とした空気の採取方法では、30分換気後に5時間以上の密閉期間を置き、その後概ね30分間採取することとしている。最初の30分間換気と最後の30分間の空気採取はどちらも多少変更しても問題はない。但しどちらもその時間は明記する必要がある。最初の換気は、過去に蓄積された室内空気中のVOCを一旦除去するもので、発生源が室内にある揮発性有機化合物量を測定するという目的には欠かせないものである。よってこの目的が達成されると推定されるのであれば、換気時間の長短は厳密である必要はないが、測定条件を後に振り返って判断する際の材料として記載しなくてはならない。また、採取時間は最終的に30分間平均値を出すためには欠かせないものであるが、捕集管の種類や機器の感度を勘案して採取時刻を変えてもよい。但しこの場合も測定条件を後に判断するために実測時間を明記することは必須である。
 密閉時間は、室内空気中の化学物質濃度が平衡になる(放散量と換気又は漏出による逸散量が等しくなる)まで行うべきものであるが、換気回数が0.5回以上あると見込まれる家屋ではこれで充分である。換気設備を有する家屋ではこの値は充分達成されていると考えられる。換気回数がこれよりも低い場合はほぼ平衡に達するのには長時間かかるとされる。例えば、0.5回/hでは約8時間かかる。しかしながら、温度変化による換気回数の変動や放散量の変動を考慮した場合、閉鎖時間による濃度の変動幅よりも、日温変化による変動幅が大きくなると推定され、日本の現状を考えると最低限5時間の密閉と、気温の日変動が最大となる午後2時?3時に空気を採取するやり方が、測定作業効率も良く、室内由来の化学物質放散量を把握する上では必要かつ充分であると考えられる。5時間閉鎖法についてはECA(EUROPEAN COLLABORATIVE ACTION) Report No.6中にも記載されている。さらに、閉鎖時間を延長することは差し支えない。上記理由から、閉鎖時間、採取時刻の記録は必須である。同時に換気回数が測定できれば記録する。
 備付品の開放を行った上で測定するとしているが、これらは移動不可能なものを前提としている。建築物と一体であり、住宅の一部として認められるという考えから、安全面を考慮して要求しているものである。よって後から持ち込まれた家具等は該当しない。また、閉鎖中に常時換気システムの稼働を認めているが、これは常時使用されることが前提となって設計・設置されているものについては、住宅の一部として当然認められるべきであるとの考えからである。この場合「住まいのしおり」等にその旨の記載が必要であろう。
 居住住宅を対象とした空気の採取は、通常の生活状態で行うことになる。

 試料採取は室内の居間、寝室、及び外気を1ヶ所の計3ヶ所で行う。室内の採取場所は部屋の中央付近の少なくとも壁から1m以上離した高さ1.2?1.5mの位置を設定する。外気の測定場所は外壁及び空調給排気口から2?5m離した、室内の測定高さと同等の高さの所を設定する。
<解説>
 室内採取場所として居間、寝室を設定したのは、当該箇所が最も滞在時間が長いと想定されるためである。基本的には、室内の全ての建具は開放されるので全ての室内は近似した空気環境におかれることにはなる。
 採取の高さはおおよその呼気の高さを考慮して設定されている。壁から1m以上離すこととしたのは、壁からの放散の影響を排除するためである。よって、この条件を満たしていても近くに戸棚や机がありそれらが影響する場合は望ましくない。設定はこれらの影響がいずれもないところを選んで行われるべきである。条件の記載については高さや位置はもちろん、周囲の状況を図を利用する等して記載したほうがよい。可能であれば写真として残しておくことが望ましい。
 外気については、室内濃度の算出時に減算に用いたりはしないが、得られた値を評価する上で測定しておいた方がよい。
 位置については標記の通りであるが、高層建築物や気象条件によって当該位置への採取口の設置が困難な場合は位置を変更してもよい。但し、その場合には設定位置を明確に記しておくことが必要である。
 また、風向きによっては外壁に施された、防水・撥水・防カビ等の加工剤や塗料の影響が出る場合があるので、風向きを記しておくことも重要である。