第1回シックハウス勉強会(2001.7.11

 

相談者とのトラブルを避けるために「シックハウス、化学物質過敏症の相談を受けるにあたって」というプリントを渡し、お互いに無駄な費用と時間をかけないよう最初に話をする。

・本来はこのような相談は保健所で受けるべきである。

・北里研究所病院で診断を受け、化学物質過敏症であることを明確にするよう強く勧める。

・相談者が「このようにしたい」と明確に希望をいえる段階で相談にのる。

・「出来る限りお金や時間を使わないで最大限の利益をもたらす」ことを常に考えアドバイスする。

・常識的に話が出来ないと判断した場合はお断りすることがあることを了解してもらう。

(プリント参照)

 

このようにする理由

・相談に来る人は、こちらに来る前にいろいろなところを渡り歩いている人が多いので、トラブルが発生しがちである。7割位の人が診断書を持ってくる。

・相手に責任を取らせたいという人と、自分も軽率だったという人は半々くらいである。

親戚筋に建ててもらったので文句言えないと言う場合もある。

・半数以上の人が加害者に責任を認めさせれると思っていて、自分だけでは弱いので専門家の力を借りたいと思っているが、実際はほとんど無理である。弁護士に相談すると百万円単位でお金が出てゆくので、その費用をリフォームにまわすべきである。

 

●シックハウスの相談を受けるには以下の把握が必要である。

@     日本全体で現状どのくらい被害がでているか

A     医学的な話

B     汚染の現状

C     建材の現状

D     行政の対応(法律も含め)

 

・ユーザーの認識はすごく増えているが「シックハウス」、「ホルムアルデヒド」など言葉だけで内容は知らない場合が多い。

・つくり手側の認識の現状は「建材メーカーが対応しているから大丈夫」、「F1合板とノンホルマリン糊を使っているから大丈夫」程度しか工務店にはない。建築条件付の土地を買った人と工務店と話が通じない場合がある。

大手住宅メーカーはよく知っているが知らないふりをしている。3年前に大手住宅メーカーでアレルギーを持っている奥さんが「気をつけて建てて」といって新築したが、今ひどい過敏症になっている。メーカーの対応は「あなたは特殊だ。うちは業界一のレベルでしているから責任取れない」と言っている。そのメーカーも新築の打合せ段階では「合板はF1、ビニールクロスはノンホルム」しかいってない。他のVOCの言葉は出てない。

・建材――何が原因か被害者の環境を探る為に詳しく知らないといけない。リフォームする時に何を使ったらいいかわかる。

どこにどんな建材がどのくらい使われ、どんなものがそれに含まれているか。

現在の家に使われているものだけでなく以前使われていたものも含め、建材の流れがわかっていないと相談は受けれない。(実際の相談では3〜4年位前の相談も受ける)

プラスチックと農薬がわかれば建材もわかる。

 

 

◆プラスチックがわかれば、接着剤・塗料もわかる

 

・プラスチックは、溶剤をバケツに入れ、そこへ主に樹脂原料と添加剤の2つを加えたものである。

反応させ溶剤がとんだのがプラスチックで、接着剤は反応を途中で止めた柔らかい状態のものである。塗料はそれに色(着色顔料)をつけたものである。

樹脂原料はモノマーと呼ばれる小さな分子がバラバラになっている状態のもので、この小さな分子が多数結合してポリマー(プラスチック=樹脂)を形成する。

 添加剤――プラスチック製品に必要な特性を与えるためのもので、ポリマーを柔軟にする可塑剤もそうである。可塑剤は、反応の手の結び方を弱くさせるような働きをする。

 

 

壁紙

防カビ剤業界自主規格としてドイツのRAL規格(1990年)と壁装材料協会のISM規格(1995年)、スウェーデンのエンゼルマーク等がある。

塩化ビニル壁紙は、溶剤をバケツに入れ、そこへ樹脂原料(塩化ビニル)と添加剤(可塑剤、防カビ剤、難燃剤等)を加えたものである。

防カビ剤は毒性、揮発性ともメーカー名しか分からず評価できない。可塑剤は使われているフタルサンエステルが今問題である。難燃剤はスッパイ匂いがするが有機リン系ではないか。

ISM規格商品にしても安全であるとはいえない。壁紙は使用面積も広く影響が大きいので塩化ビニル以外の選択肢を考えたほうが良い。

・今の塩化ビニル壁紙と昔のそれとは可塑剤が少し変わっただけでほとんど同じである。

ISM規格でもトルエンは検出される。

・ISM規格で問題になるのは[ 塩素系、芳香族系含有溶剤は使用しない ] [ ひとつの分子量が300g/moL以上の蒸気圧が極めて低い可塑剤のみを使用する ]である。

トルエン、キシレンは芳香族。

発泡剤としてクロロフルオロカーボン類はこういう問題が起こる前から使われていない。

・塩化ビニルクロスには可塑剤が全部入っている。ひとつの分子量が300g/moL以上のものを使えば出にくい。TCP,DDP,DOP,DINPは300以下。

・添加剤として使われる可塑剤・防カビ剤・難燃剤が含まれていない、オレフィン系(不織布)の壁紙が選択肢になるだろう。しかし、塩化ビニルクロスに比べ、施工性は悪く価格も高い。

・今後、塩ビ材は燃やすとダイオキシンを発生することから問題になるだろう。

・今までの経験から難燃剤が入っている壁紙はスッパイ匂いがし、防カビ剤が入っているものはニガイ匂い、芳香族は甘い匂いがする。防カビ剤の事を調べても、メーカー名や商品名しか出てこない。

・無機質壁紙は表面素材がガラス繊維などで、塩ビのものと比べましである。

・ 防汚フィルムを張っている壁紙は、そのフィルムを何でくっつけているのかわからない。

・MSDS(化学物質等安全データシート/対象化学物質の性状や取扱いに関する情報の提供制度)を取り寄せても、そのメーカーで使っている溶剤しか分からなかったが、PRTR制度(化学物質管理促進法)が施行されたので、指定化学物質や指定化学物質を含む製品を譲渡又は提供する際、相手方に対して当該化学物質の性状及び取扱いに関する情報を提供することが義務付けられた。

 

 

合板

単位容積当り接着剤が1番使われている建材である。

co、Eoのものでも安全性は高くない。Fcoでフェノール系接着剤が使われている。

フローリングや化粧合板仕上げの壁、通気性のある壁紙の下地にたくさん使うとかなりのリスクになる。もし使うならホルムアルデヒドの放散の可能性がない水性ビニルウレタンのものがよい。西日本海合板と光洋産業は両方とも水性ビニルウレタンで接着している合板をあつかっている。接着剤は樹脂レベル名で把握し、きちんとデータをもらう。

1999年 F1はフェノール樹脂の接着剤が使われている。それ以前の合板は最高レベルでF2で、それ以上のものは使っていない。構造用合板もシナ合板も接着剤によるので全て同じである。

     床材はムクを使うほうがよい。複合フローリングはウレタン塗装の問題もあるが、接

着剤の問題もある。床暖房をするとホルムアルデヒドもはやく放散される。

・相談を受けて現場に行った場合、外壁にはってある構造用合板も含めて押し入れ、階段下収納、下地材、家具など使ってある部分をみる。

・ホルムアルデヒドは一度接着しても加水分解され出てきやすい。

・ホルムアルデヒドはツンとくる刺激臭がする。

 

 

 

*(参照)建築知識2001年3月号 シックハウス[完全対策]バイブル