新築の建物で初めての労災認定
(環境配慮ビルにてシックハウス騒動)
シックハウスの女性に労災認定 横須賀労基署
 新築の職場で発生した化学物質ホルムアルデヒドが原因でシックハウス症候群になったとして、環境省所管の「地球環境戦略研究機関」(葉山町)の元契約職員の女性(32)=長野県在住=が休業補償を求めた労災申請について、横須賀労働基準監督署は二十五日までに、業務との因果関係を認め、労災認定した。
 厚生労働省によると、シックハウス症候群の労災認定は、これまで北海道、大阪、愛媛など全国で六件あるが、労災申請を支援した神奈川労災職業病センターは「新築の建物での認定は初めて」としている。
 認定の理由は、女性の職場にホルムアルデヒドが存在したことや他の原因がないこと、複数の職員が症状を訴えていたことなどがあったとみられる。
 同センターなどによると、女性は一九九九年十月から研究秘書として勤務。研究機関が移転した二〇〇二年六月ごろから吐き気や頭痛、不眠が始まり、同十月、シックハウス症候群と診断され〇三年一月から休業。〇四年三月、契約期間満了を理由に契約を打ち切られた。
(2005/3/26:中日新聞)
同記事 労災:シックハウスの女性が認定−−地球環境戦略研、30代の元職員/神奈川
 環境省所管の財団法人「地球環境戦略研究機関」(葉山町)で働き、シックハウス症候群と診断された30代の元女性職員について、横須賀労働基準監督署は労災と認定した。シックハウス症候群による労災認定は全国的にも珍しい。
 女性は02年6月に新しい研究所に引っ越した直後に、めまいや頭痛、不眠などの症状に悩まされ、同10月にシックハウス症候群と診断された。03年1月から休職し、04年3月で雇用契約が満期を迎えたが、体調が回復せず、更新できなかった。女性のほかにも、同時期に二十数人がめまいや吐き気を訴えた。
 同労基署は女性が業務に伴い化学物質のホルムアルデヒドなどにさらされて発症したと認定、休業補償の支給を決めた。
(2005/5/20:毎日新聞・神奈川)
●問題となっている建物について(環境配慮ビルにてシックハウス騒動として問題化)
 地球環境戦略研究機関(IGES)
 設計:日建設計 施工:鹿島JV
 受賞:東京建築賞(一般部門優秀賞)・第1回照明デザイン賞(2003)等
 建物記事:日経アーキテクチャー(02年10月14日号)・新建築他多数
 シックハウスに関する建物記事:日経アーキテクチャー(03年12月08日号)
              →記事SCANデータ1ページ2ページ3ページ4ページ(JPEG)
●以前の報道記事
職員の約半数に症状 環境省所管の建物で「シックハウス」
 職場の新築が原因でシックハウス症候群になり働けなくなったとして、環境省所管の財団法人「地球環境戦略研究機関」(神奈川県葉山町)の元女性契約職員(31)が15日までに、横須賀労働基準監督署に労災の休業補償請求をした。女性からの相談に乗ってきた神奈川労災職業病センターが同日発表した。
 センターによると、同財団が研究所を新築したのは02年6月。「環境と人にやさしい建物」との目的で、床や壁には廃材などを多用した。
 当時勤務していた元職員は新築直後からめまいや頭痛などに悩まされるようになり、同10月に北里研究所病院(東京都港区)からシックハウス症候群と診断された。
 元職員だけでなく、当時この研究所に勤務していた約60人のうち27人が、同症候群や化学物質過敏症などと同病院などから診断されたという。
 同財団によると、27人中6人は現在も勤務しているが、残りの21人は退職した。新築から間もない02年7月、同財団が建物内の化学物質濃度を測定した結果、ホルムアルデヒドの濃度は建築物衛生法の限度基準値に近かったが、基準値内だったという。
(2004/6/16:朝日新聞)
環境省の研究所、シックハウスで女性が労災申請
 職場で発生した化学物質ホルムアルデヒドが原因でシックハウス症候群になったとして、環境省のシンクタンク「地球環境戦略研究機関」(神奈川県葉山町)の元契約社員の女性(31)が十五日までに、横須賀労働基準監督署に労災申請した。 
 神奈川労災職業病センターなどによると、女性は一九九九年十月から研究秘書として同機関に勤務。二〇〇二年六月に研究所が新設、同町内の旧施設から移転した直後から吐き気や頭痛などの症状が出始め、同十月にシックハウス症候群と診断された。
(2004/6/16:日本経済新聞)
環境省所管法人で被害、労災申請も
環境省所管の財団法人「地球環境戦略研究機関」(森島昭夫理事長、神奈川県葉山町)で職員約60人中27人がシックハウス症候群などと診断され、うち5人が数カ月〜1年の長期療養を余儀なくされていたことが15日分かった。30代の女性の元職員は、同症候群で勤務を続けられなくなったとして横須賀労働基準監督署に労災申請。同症候群による労災が認定されれば珍しいケースという。
財団などによると、02年6月に現在の建物(鉄筋コンクリート)に入居後、目まいや吐き気、頭痛などを訴える職員が続出。財団が「建物が原因の可能性を否定できない」と同症候群に詳しい東京都内の病院を紹介した結果、02年7月〜03年3月に27人が同症候群や化学物質過敏症などと診断され、財団が医療費を全額負担した。休日も換気した結果、現在は同症候群による休業者はいないという。
労災申請した女性は目まいや不眠などに悩み、03年1月から休職。今年3月で雇用契約が満期を迎えたが、体調が回復せず、更新できなかった。
財団は「室内の化学物質濃度を3回測ったが、普段使わない宿泊室を除き、値は厚生労働省の指針以下だった。原因は今も分からない」と話している。
(2004/6/15:毎日新聞)
●詳細・関連情報 (社)神奈川労災職業病センターHPより・3記事
地球環境戦略研究機関は、シックハウス症候群を職業病として認めよ
        (社)神奈川労災職業病センターHP・2003年9月の活動より
 Tさんは、〇二年一二月に、(財)地球環境戦略研究機関(以下、「研究機関」とする)に研究者の秘書として派遣された。この研究機関は、地球環境問題の政府系のシンクタンクである。〇二年六月に、葉山町の湘南国際村に、新しい研究施設が建設された。ところが、直後から多くの職員が「シックハウス症候群」「化学物質過敏症」を発症し、大きな問題になっていた。Tさんは、そんなことは全く知らされないまま、派遣会社から派遣されたのだ。
四日間の派遣業務でシックハウス症候群になる
 Tさんは、実は面接に来た時から、どうも具合がおかしいと感じてはいた。得意なはずの英文和訳が思うようにできない。派遣初日から、頭がボーっとして、目が痛くなった。自分の引継ぎをする秘書が患者で、あまり長い間この建物にいることができないため、引継ぎ作業もままならなかった。実は約六〇名の職員のうち四分の一が、一〇月から借りた別会社の建物で勤務していた。
 とんでもないところに派遣されてしまったと気が付いたTさんは、早速派遣元に連絡して、やめたいと伝えた。しかし派遣会社の方は、シックハウス問題があることは知っていたが、そんなにひどいとは聞いていない、そしてもしも発症しても労災があるから大丈夫だと言う。研究機関も、もう濃度が低くなっているはずだから、あなたには関係ないし、ストレスや精神的なものだ、人手が足りないのでやめないでほしいと言う。やむなくそのまま仕事を続けたが、ひどい頭痛や身体中の痛みで眠ることができず、視覚異常、吐き気、目まいなど、症状はますますひどくなった。それはシックハウスの症状だから仕事を辞めて病院に行ったほうがいいと、やはり患者である職員から言われて、四日後にようやくひきあげるように指示した。
 Tさんのかかりつけの医師は、シックハウス症候群のことを理解しており、たまたま一一月に健康診断も受けて全く問題がなかったこともあって、シックハウス症候群と診断した。さらに日本では数少ないシックハウス、化学物質過敏症を専門的に治療している北里研究所病院臨床環境医学センターでも、他の職員と同じようにシックハウス症候群による中枢神経障害および自律神経失調症という診断を受けた。
泣き寝入りを強いられる被災者
 Tさんは、自宅療養を余儀なくされ、現在も仕事ができない状態だ。神経障害による聴覚異常、歩行障害の他、化学物質過敏症によって、今まで何ともなかった洗剤や化粧品、香水やたばこなど、日常生活用品に反応が出るようになったため、まさに生活そのものを変えざるを得なくなる。思考力や集中力が欠けて、日常生活に支障を来たしている。しかも抜本的な治療方法は確立しておらず、今後仕事をするにしても、そこの職場環境が合わなければ、再発、悪化する危険性もある。まさに一生の問題なのだ。
 ちなみに研究機関の職員は、みんなこの北里研究所病院の診断を受けているし、一二月には、研究機関はそこの医師を招いて講演会を開催している。研究機関は社会保険の自己負担分を「補償」する他、最長二年間の休職を認めて、賃金を一〇〇%「補償」している。しかし、治療法が確立していないために、健康保険が適用されない治療を強いられているので、患者の多くは、実際高額な自費治療を強いられているのが実態だ。労災認定も極めて困難であると、監督署自らが、Tさんや相談に行った研究機関に対しても述べており、仮に労災保険が適用されても、基本的には健康保険準拠なので、治療費が出ない可能性が高い。つまり、他の被災者に比べれば、一定「補償」されているために、Tさん以外の研究機関の職員らも社会的に声をあげにくいのであろう。
東京ユニオンに加入して派遣会社の責任を取らせる
 インターネットを通じて、労災職業病センターを知ったTさんは、派遣労働問題に詳しい東京ユニオンに加入した。派遣会社は、Tさん個人に対して、派遣とはそういうリスクが伴うもので、責任を回避していたが、ユニオンにはさすがにそのような対応ができるはずがない。団体交渉の結果、派遣労働者に対する安全配慮が欠けたことを認めて、一定の解決金を支払うことなどで解決した。しかし、最も責任があるのは、言うまでもなく研究機関の方である。
研究機関は情報提供はするが、責任はとらない
 研究機関が葉山町にあることもあって、Tさんはよこはまシティユニオンに加入。七月二九日に、第一回目の団体交渉が開催された。研究機関は、口頭でこれまでの経過を説明。確かに二七名もの職員が発症し、いまだ休業している職員も五名(うち一人は自宅勤務)にのぼり、退職者もいることなどが明らかになった。一方で、すでに〇二年七月の時点で化学物質の濃度が下がっていることを何度も強調。いずれにせよ、文書での提供を求めたところ、八月には二〇ページ以上の報告資料が提供された。そこでは、理事会において、移転も含めた検討がなされていることまで含まれていた。真剣に問題解決を図っていると感じられたが・・・。
 九月一七日の第二回団体交渉で、ユニオンは、まずシックハウス症候群を職業病として認めて謝罪すること、研究機関の移転をすること、この間の経過をきちんと調査・研究して社会化することを求めた。ところが、研究機関の事務局長は、驚くべき回答を繰り広げた。まず、シックハウスなり化学物質過敏症には医学的な定義がないから、自分たちは認めていない。さらにTさんは濃度が下がった後に働いたのだから、発症するはずがないし、業務との因果関係はない。当然責任もない。したがって移転や研究など必要ない、と言う。ちなみに、この事務局長は環境省からの派遣(公務員の第三セクター派遣法というのがあるらしい)。まるで四〇年前の公害発生に対する政府答弁を聞くような気持ちで、怒りを抑えることができない。
 研究機関提供の資料によると、二〇〇二年一一月に着任した研究員一名がシックビル症候群と診断され、二〇〇三年一月に着任した職員も、そのおそれがあると診断されている。他の職員についても因果関係がないと考えるのか、その医学的な根拠があるのかと尋ねても、「じゃあ定義をどう考えるのか」とはぐらかすばかり。結論的には「因果関係についてわからない」ということであるとした。全くいいかげんな主張だ。いすれにせよ、改めて文書で回答することに。
国(環境省、厚生労働省)、県の責任は重大 
 そもそも環境問題を研究する機関に、どうして環境問題に真摯に対応するようにという要求をしなければならないのか。事務局長の姿勢は象徴的であるが、新しい環境問題の被害者に対する対応として最低だ。さらに厚生労働省も労災としては、なかなか認めようとしていない。本省交渉でも、「医学的所見の収集に努めている」などという悠長なもの。県も、湘南国際村の施設を住宅供給公社を通じてとはいえ、無償で貸与しており、研究機関の事務局次長は県の派遣だ。
 今後の研究機関の対応によっては、大きく社会問題として、各々の行政機関の責任追及も必要になるだろう。注目、支援を。
((社)神奈川労災職業病センターHP内「最近の活動(2003年9月の活動)から」)
(財)地球環境戦略研究機関でシックハウス症候群患者が労災請求
        
(社)神奈川労災職業病センターHP・2004年6月の活動より
 さる6月14日、(財)地球環境戦略研究機関(略称IGES)で働いていた女性労働者(31歳)のKさんが、「シックハウス症候群」で横須賀労働基準監督署に休業補償請求をした。これまでの経過を報告する。
一生懸命働いてきたKさん
 Kさんは1999年10月に、IGESで研究秘書として勤務し始めた。米国の大学を卒業後、研究秘書として働いてきたが帰国して初めて入ったのがIGESである。Kさんは自分にとっても勉強になると考えて、一生懸命働いた。ある研究者からは「ここまでやってくれる人は見たことがない」と言われたことも。IGESの研究秘書は、基本的に一年契約であるが、三年ごとに研究プロジェクトを見直すことになっている。その区切りが2000年4月であった。ただし、秘書はプロジェクトごとではなく、IGES全体で採用されるのであり、Kさんも02年4月からは二つのプロジェクトの秘書を兼務するようになった。一層忙しくなって、残業や休日勤務を余儀なくされていた。
 IGESは、地球環境問題に関する環境省所管の外郭研究機関である。2002年6月に、葉山町の湘南国際村に本部研究施設が新設された。IGESは自らホームページで以下のように説明している。
「IGESは新たな地球文明のパラダイム構築を目指して、地球環境問題についての戦略的な研究を行う研究機関であり、持続可能な開発のための革新的な政策手法の開発、及び環境対策のための政策的・実践的研究を行い、その成果を様々な主体の政策決定に具現化し、地球規模、特にアジア・太平洋地域の持続可能な開発の実現をはかることを目的としている。」「この研究施設は、このようなIGESに相応しい、快適な研究環境を創出することによってレベルの高い研究成果の創出に資することを目的として計画された。」「設計にあたっては、高度な研究を将来にわたって完全にサポートしていける快適な研究環境の創出を第一の目標としたが、恵まれた敷地のポテンシャルを最大限活用しつつ、施設自体をIGESの研究内容に相応しい、環境親和型建築のプロトタイプとすることも設計の大きなテーマの一つと考えた。」
この仰々しい文章と全く相反する事態が進行するなどとは、あまりにも皮肉な現実である。
シックハウス症候群患者が続出
 2002年6月9日、Kさんは引越し担当者として休日出勤したが、強烈な悪臭が漂っていた。設計上窓の開閉ができないようになっていて、だんだん頭が痛くなってきた。実は工期が遅れていて、入所後も、工事が残っている部分もあった。当時はちょうど連日夜の9時や10時まで残業があり、めまい、眼の刺戟感、皮膚のかゆみ、不眠などの症状に悩まされるようになる。
 他の同僚の中にも、同様の症状を訴える人が出始めた。7月には、2名が化学物質過敏状態ということで、東京勤務となった。七月末、IGESは、ホルムアルデヒド、トルエンなどの濃度測定を実施した。このときホルムアルデヒドの値は、0.078ppmである。厚生労働省が定めている指針値は0.08ppmで、それにかなり近い濃度である。もちろん0.08ppmのホルムアルデヒドを吸うと、必ず病気になるわけでもないし、逆に0.08ppm未満だと、全く問題がないということではない。しかし、建築物衛生法でも、これを限度基準値としており、労災認定基準でもかなり参考にされているようである。三ヵ月後の一一月の測定では、0.008ppmまで下がっている。一般にホルムアルデヒドは揮発性が高いので、一気に下がって、後は安定する。六月の入所当初は、かなり高濃度であったと推測される。
 IGESは8月には職員にアンケート調査を行ったり、設計者や県(研究施設そのものは県住宅供給公社が無償で貸与している)とも相談して、対策についての検討専門委員会を開くなどした。10月には、検査費用の負担と共に、北里研究所病院を紹介する通知を全職員に出した。Kさんも、早速同病院を受診、「シックハウス症候群」と診断される。この月には一一名、一一月にはさらに七名が診断されて、2003年3月までには、なんと二六名が、シックハウス症候群(疑いも含む)と診断されることになった。
 IGESは、シックハウスと診断された人のために、別の建物を借りることにした。Kさんも診断書があればそちらに移れると聞いていた。しかし、具体的な別棟勤務のための措置はなかなかなされず、実際に別棟で勤務することができたのは、11月22日になってからであった。しかも、やはり本部の建物に入らざるを得ないことも少なくなくて、12月にはかなり症状が悪化。自分を責めてしまう、物忘れが激しいなどの精神的な症状が出るようになった。翌年1月に北里研究所病院を再受診したところ、早急な改善、休業を指示される。ところが、「精神的症状はシックハウスと関係がないはずだ」などという、法人事務局長の心ない発言もあった。結局すぐには休むことができず、実際に休職に入ったのは、1月20日からであった。Kさん以外にも、5人が休職し、1人が自宅勤務、さらに1人は3月で退職した。
解雇、賃金保障等打ち切りへ
 IGESの就業規則が、県の職員の規則に準拠していることもあり、休職中の賃金は100%保障された。治療費もIGESが負担してきた。前述の通り、一年契約であったが、Kさんも他の秘書も、03年4月に契約は更新された。Kさんは実家に帰って、療養に専念することにしたが、なかなか症状は改善しない。
 2004年2月、IGESは、3年ごとの研究プロジェクトの見直しということで、研究秘書に対しても試験を実施、公募もした。まだKさんは試験を受けたり、勤務のできる状態ではなかった。3月になって、IGESに派遣されてシックハウス症候群になったTさんの問題に、センターが取り組んでいることを知り、相談に訪れる。早速よこはまシティユニオンに加入し、団体交渉を申し入れることになる。
 IGESの雇用は、形式上一年契約であるが、実質的には労働基準法違反の三年契約であり、期限のない雇用とみなすべきである。そして休業中の労災職業病患者の解雇は違法である。そのような主張に対して、IGESは、あくまでも一年契約であり、契約が切れた以上、治療費も賃金も払わないという回答。
 同時期にやはりIGESに雇い止めされた研究秘書のMさんがいる。Mさんは、試験の成績は悪くないが、協調性がないなどと言う理由で更新を拒否に相談し、団体交渉を重ねたが、やはりIGESは雇い止めということで復帰を拒否。現在横浜地方裁判所で仮処分裁判を闘っている。要するに、IGESは、今回の契約更新で、「職業病患者」や「出産を控えている人」を「厄介払い」したとしか思えない。
県や国の責任も追及するぞ
 団体交渉では、やはり当時の事実関係をきちんと認識させることが重要である。ところが、IGESの法人事務局を担うのは、県や環境省からの出向者。いずれもKさんが休職してから派遣されてきており、全然当時の状況を把握していない。さらに、Kさんの休業補償の請求書で平均賃金を算定するのであるが、そこの残業代はゼロ。基本給に19時間分入っていると言うのだが、どうも労働時間も全く把握していないようだ。
 新聞記事によると、シックハウスと診断された27人のうち、すでに21人までが退職したと言う。わずか60人余の研究機関で、約3分の1が退職するということでは、いい研究成果があがるはずがないのではないか。地球環境戦略を研究するのもいいが、まずは職場環境で起きた事態に対して、きちんとした責任を、つまり労災補償、雇用責任を取って、原因究明を行うべきである。そして、環境省や県の責任も含めて、徹底的に追及することが必要である。
((社)神奈川労災職業病センターHP内「最近の活動(2004年6月の活動)から」)
シックハウス症候群で画期的な労災認定
        (社)神奈川労災職業病センターHP・最近の活動より
(共同通信が配信したのに、なぜかマスコミはほとんど無視)
 (財)地球環境戦略研究機関(IGES)で働いたKさんのシックハウス症候群(「かながわ労災職業病」〇四年八月号参照)について、横須賀労働基準監督署は、三月八日付けで支給決定、職業病と認めた。Kさん以外にも多数の被害者がいること、新研究施設に引越ししてから二ヵ月後ですら厚生労働省の指針値とほぼ同じ濃度のホルムアルデヒドが検出されていたことを考えれば、当然と言えば当然ではあるが、非常に画期的な労災認定である。おそらく新築の建物のシックハウス症候群としては、初めてであろう。
 今後は、IGESや実際に建築した県の責任なども追及することになる。IGESなどは、有害物質の濃度は指針値以下であり、原因は不明、できるだけのことはしてきたと主張している。しかし原因ははっきりした。被災者の多くは退職してしまっており、実態把握は行なわれていない。事業主、あるいは建築主の責任として、被災者に対して、労災認定の事実を情報提供すると共に、健康実態を把握して補償をするべきである。また、そもそも工事が遅れて、完成したとはいえ、職員は悪臭に苦しんでいるにもかかわらず、理事会で来日する海外の理事らに披露するために?、引越しを強行した責任も免れないだろう。ちなみにIGESは、残業代未払いの労働基準法違反問題もあって、是正勧告を受けているのだが、それに素直に是正していない。地球環境戦略以前の、職場環境戦略に大いに問題があるようだ。Kさんが所属するよこはまシティユニオンが、団体交渉で要求していく予定である。
((社)神奈川労災職業病センターHP内「最近の活動から」)