3回勉強会及び第4回例会議事録

 

日 時 8月30日(木)6:30〜10:00

場 所 建築士会4階会議室

出席者 (敬称略) 中村 梅本 阿部 打越 大野 尾関 坂上 田中 為末 西野 水畑 三宅 福田

司会 梅本 書記 福田

はじめに

 司会者からシックハウス研究会米倉代表からの下記の伝言がありました。『研究会でセミナーの開催を企画しているようですが、いろいろな対象者向けのセミナーも企画してください。』

 

3回勉強会の部

 講師  尾関知子氏

″室内空気汚染により苦しんだ経験を経て″

 

中古賃貸マンション入居後発症

  シックハウスについての知識が少しあったので、入居前のリフォームでは、業者に注問をつけていた。しかし、入居後1ヶ月程から、喉の乾燥、イガイガ感、そして次第に激しい咳に悩まされる。あまりの体調不良に不安になり、シックハウスに関するHPを開いたりして情報を求めた。そこで、シックハウスを考える会から、病院やドクターを紹介され、シックハウスと診断される。ある日、畳下の防虫シートが原因らしいと疑われ、本人は原因物質から一時避難し、家族が原因物質を除去、清掃、こまめな換気をした。帰宅が可能となった。少しずつ症状は治まるが、他のものに対しても科学物質過敏症の症状が出てきた。シックハウスと疑った頃から転居先を探し始め、なかなか条件に合致する物件が見つからず苦労する。今は、見つけた中古賃貸物件に、シックハウス対策のリフォーム施して、入居した。(畳を和紙で製造された健康畳としたーシックハウスを考える会からの情報)症状は、少しずつおちついてきている。(中村氏が転居先を見てほしいと依頼を受けた。)

 

体験からの結論

1.             早い時点で原因物質を見つけ、遠ざける。

2.               患者本人は近づけないので。家族の理解と協力が必要。

3.             症状には個人差があり、その対処法も自分の体感が頼りである。(私の場合、風向きなどを考慮した換気が有効だった。)

 

転居先探しでの問題点

1.             室内を構成する建材の情報が少ない。(建材に含有する物質について)

2.             賃貸物件において、選択肢が少ない。(構造上、仕様上、流行のものが多い。)

3.             シックハウスに対する正確な知識を持った不動産業者が少ない。

 

その他

1.             発症時色々な面でパニックとなるので、相談や情報提供の場が多くほしい。症状について不安。経済的不安。将来への不安(後遺症、子供への影響、仕事の継続の可能性有無等)

2、シックハウスにならないための基準と、発症経験者のための基準を分ける必要がある。

Q1 まず誰に相談されたのか。

 A1 シックハウスを考える会へ。病院・ドクターを紹介された。

Q2症状回復は実感できるのか。
 A2 徐々に楽になっているが、化学物質過敏症の症状は残っている。

Q3一時避難した場所には、和室はなかったのか。

A3 以前にも宿泊した場所だが、発症後は反応した。原因らしきもの排除して、避難した。和室はあったが、

古いので反応しなかった。

          その他内容の詳細はホームページの共有ファイルか、中村さんのサーバにある講演者尾関さんの資料を参照してください。

 

第 4 回 例 会 議 事 録

1. 測定器利用状況について 報告者 中村〈英〉

 ア 使用者 中村(英)→中村伸二→山本尭子

 イ 光明理化学工業から一時返却の要請があり、現在返却。あちらで用済みになれば、再度借り受けられます。このようなことが、度々あるでしょうから、やはり自前の機器が早くほしい。

 ウ 検知管について 新購入 現在 2本使用済み 使用期限が残り2ヶ月であるから返却しました。

 

2. 住宅調査について(調査事業の準備進行について) 報告者 西野

 担当メンバー達が、野池氏を訪問し,調査方法の指導を受ける。それを受けて以下の調査票を作成。

1                 シックハウス研究会・住宅相談の流れ

2                調査規約

3                調査について

4                誓約書〈相談者がシックハウス研究会に対して〉

  《[意見]費用を支払う依頼者が誓約書を書く必要があるのか。意見あり。》

5 室内空気中化学物質測定についてのお願い(測定準備説明書)

6 お願い   必要書類の準備と送付

7 見取り図記入用紙

8 住環境調査票

9 仕上げ表

10 測定記録シート

11 使用化学物質チェックシート

12 経過報告書

13 結果報告書(意見書)

ア、【シックハウス研究会・住宅相談の流れ】にそって調査を行い、結果報告書提出までがシックハウス研究会の責任範囲。以後、改修相談等生まれた場合は各自調査委員の責任で行う。

イ、調査費は未定

ウ、調査結果を訴訟等の紛争処理(弁護士の範囲)に利用することを、不可と明確にする。

エ、測定表は今のところホルムアルデヒドのみとする。

オ、 使用物質チェックリストは室毎に作成する。

 

3、建築学会の「化学物質による室内空気汚染の現状と対策」最終成果報告書 報告者 三宅

ー室内化学物質による室内空気汚染に関する研究の最先端ー

 文部科学省科学技術振興調整費ー生活者ニーズの対応研究ーの助成により、平成10年度より室内化学物質汚染の解明するために日本建築学会を中心として化学・医学・社会科学分野の研究者も含んだ大規模な学際的共同研究の3年間の最終報告4つのTASKに分かれていた。

 

TASK1 化学物質汚染に関する居住環境・人体汚染負荷調査と医学的影響の解明

(1)化学物質汚染に関する住まい手の意識と居住環境の実態調査

(新潟大学大學院:赤林伸一、国立公衆衛生院:池田耕一)

住まい方や換気方法の異なる住戸約150戸を対象とした化学物質汚染の実測調査とアンケート調査により居住者の住まい方と室内化学物質の関係を解明。調査で得られた化学物質濃度、住宅性能、住まい方を取りまとめ、データ―ベースを構築し、設計基礎資料を広く一般に提供。

(2)化学物質の人体に対する汚染負荷量調査と医学的影響の解明。

(東京大學大学院:柳沢幸雄、北里研究所病院:石川 哲)

化学物質過敏症患者が示す自覚症状は心因的のものではないだろうか。本当に化学物質が過敏症状の原因なのだろうか。これらの疑問に答えるには心因性因子を除外した他覚的所見の集積が必要。他覚的所見を得るための測定法を開発。データの集積を行った。

 

TASK2 化学物質汚染発生の測定・評価法と抑制対策手法に関する研究

(1)化学物質発生量の測定方法と評価方法の研究

(早稲田大学:田辺新一、お茶の水女子大学:久保田紀久枝、鹿児島大学:岩下 剛)

(田辺氏)「C量の測定、評価方法の研究」

 汚染対策の基礎資材とするための建材・施工材からの放出されるアルデヒド類、VOC等の汚染化学物質を高精度に測定・評価する方法を開発。(小型チャンバーADPAC)建材の放出濃度測定

(久保田氏)「化学分析とサンプリング最適手法の研究」

ヘッドスペースガス法による建材のVOC分析測定 VOCの種類・量が簡単に精度良く測定。データ集積が容易。低VOC放散建築材料の開発・利用に応用が期待できる。

(岩下氏)「汚染物質の知覚空気質による評価方法の研究」

知覚による調査。作業効率による比較。複合量の総量よりもある一つのにおいの強い物質が、感覚に大きく影響。刺激感を訴えていた敏感な被験者群は、知的作業の効率が減少。作業効率向上のためにも室内空気質を良好にすることが望まれる。

(2)居住環境における化学物質の抑制対策手法の開発

(独立行政法人建築研究所:坊垣和明、本橋健司、千葉工業大学:小峰裕己)

(本橋氏) 「建材からの発生量抑制対策手法の開発」

フラスコ法によるスモールチャンバー実験。材料について統一的なデータ蓄積及び放射特性を解明。塗料は3〜4週間にて放散量がかなり軽減。表面シールによる発生抑制や吸着剤の効果は、無機質系仕上げ材や塗料が有効。

(坊垣氏) 「現場施工と日常生活に関わる発生源調査と抑制対策手法の開発」

集合住宅・戸建住宅を対象として、施工段階毎のホルムアルデヒド、VOC等の濃度変化・作業者の被爆強度を調べ、大面積工事直後の濃度の上昇や施工の進行に応じての濃度の上昇を明らかにした。作業環境における安全対策を示した。上階の方が濃度が高い。施工時期・室温の関係からなると考えられる。給気口の少ない部屋ほど濃度が高い。工事を行っている段階での濃度は高くない。締め切った翌日の濃度はデータを取ってないが高く感じられた。リフォームなどを行うときは、居住部分と改修部分をきっ
ちりと区分する必要がある。日常生活における化学物質の発生源の実情調査―アンケート、室内濃度調査・実験・家具・喫煙の影響、開放型暖房器具からの発生量等を解明。

(小峰氏) 「設備機器・生活用品に関わる抑制対策手法の開発」

吸着・分解効果のある空気清浄機や除去シート等の浄化性能試験・評価方法を構築。除去効果のあると考えられる製品を選別、その効果を解明。TVCOの除去に効果のある製品は無し。浄化シート、容器詰薬剤、空気清浄機の中にはホルムアルデヒドの除去効果ある製品がある。

 

TASK3人体吸気汚染防止のための室内環境計画の最適化手法の開発

(1)室内における化学物質の放散・拡散過程の解明と人体吸気濃度予測手法の開発

(慶應義塾大学:村上周三、東京大學生産技術研究所:加藤信介)

(村上氏) 実験と理論考察により、@建材・施工材内部。A建材・施工材と空気境界面。B室内空気中。各部における化学物質輸送現象の数学的モデルを吸着・脱着を含めて作成。これを空気気流及び室内空気のCFD(数値流体力学)シュミレーションに組み込み、建材と換気条件を与えれば、汚染室の室内放散と濃度分布の予測を可能とするシステムを作成。このCFDの手法を用いて化学物質の室内汚染拡散性状を評価した。化学物質放散量測定チャンバーFLEC(欧州型)・ADPAC(日本型)を用いた測定には問題点あり。

内部拡散支配型建材―TVOC放散速度正確に測定可能。

蒸散支配型建材―放散速度過小評価 

複合建材―内部拡散支配型建材の厚さが薄いほど蒸散支配が強く、放散速度過小評価。

(加藤氏) CDFによる人体吸気の汚染濃度評価手法を開発し、化学物質の室内汚染拡散性状評価手法と統合して室内各部位にある汚染源の人体吸引リスクを解析するシステムを作成。代謝発熱による人体周りの熱上昇流で、ほぼ静穏時には、床面の空気を呼吸で吸入。 立位状態―53% 臥位状態―73% 呼吸に用いる空気の汚染影響は、床面が天井・壁より大。汚染源対策は床がまず重要。

(2)人体吸気汚染低減のための省エネ型ハイブリット換気・空調システムの開発

(東北大学大学院:吉野 博)

換気実験棟・実在住宅における実験・実測・数値計算により、

@化学物質による室内空気汚染を低減するための換気システムの性能評価法の確立

A省エネルギー型ハイブリット換気・空調システムを開発

B各種の条件に対応した最適換気システムを設計する上で有用な評価・選定マニュアル作成。

2種換気システムや、2階への機械給気付あるいは床下からの給気付のハイブリッド換気システムが省エネルギーや室内空気汚染防除の観点から優れている。

 

TASK4 化学物質空気汚染防止対策の実用化と住まい手マニュアルの作成

(社) 日本建築学会:川田昭朗、大成建設(株)技術センター:森川泰成)

各研究課題で得られた研究成果に基づき、ホルムアルデヒド・VOCを対象とした素人でも利用可能なマニュアル作成。【8月中旬より日本建築学会のHPよりダウンロード化の予定】 総合的情報発信・評価システム―「問診票」と「住まいの簡易診断システム」で構成

 「問診票」―住まい手に入居前・入居後の2種類、設計・施工者用に計画・設計時と完成後2種類 問診票での診断結果は、評価シートで改善点がわかる。

「住まいの簡易診断システム」―内装材やタバコの煙から化学汚染物質発生量、空気清浄機の化学物質除去効果、換気方法等をデータベース化しており、内装材選定、住まい状況、換気状況等任意に組み合わせて、住宅内の空気汚染度を、コンピューターで簡易に評価できるシステム。空気清浄機等のデータは、現在調査に用いたものから算出。

 

会場でのQ&Aのピックアップ

Q&A1 化学物質過敏症は治そうと思っている人は良い方向に向かっている。

Q&A2 医学会の動きは厚生科学研究費がでて、石川先生のグループと、昭和大學の先生のグループが研究している。

Q&A3 化学物質過敏症の診察が受けられる所 北里研究所病院 南岡山病院国立診療所(クリーンルーム有) 国立相模原病院(クリーンルーム建設中) 南福岡病院 (クリーンルーム 無) 名古屋大学名誉教授トリイ先生

Q&A4 医学的に、化学物質過敏症は分解酵素等2,3種類のものが関連していると見られており、現在その遺伝子解析が行われている。

Q&A5 このグループは、国土交通省の助成により3ヵ年計画で研究は継続

Q&A6 品確法換気量は負担が多いので居室単位となっていない。無理ではない。機械換気の測定レベルを表示するように指導している。

Q&A7 化学物質過敏症は、研究結果により存在する。

Q&A8 他覚的所見とは、目の所見、瞳孔の開き具合等

Q&A9 厚生省のガイドラインは化学物質過敏症とならないための現時点の値を基準指針値とした。本来は、症状獲得前後の2つの値があるべきであろう。

Q&A10 メーカーが作り上げたものを評価できるシステム作りをしている。研究しているメーカーも少なくない。いずれは、建築基準法での建材規制を行う考えがある。

Q&A11 メーカーの今後の開発は、単に代用化学物質を乱用するのでなく、総量として規制をかけてほしい。その商品にどのような化学物質を製造過程で用いたか、すべて明記してほしい。(研究費の効率化を図るためにも)

Q&A12 TVOCは、トータルVOCであるから、測定法に左右され現在定説はない。

Q&A13 吸着(物理吸着・科学吸着)が良いか、脱着が良いか、用途に合わせて考える。

Q&A14 接着剤としてユリア樹脂やフェノール樹脂を用いている以上、加水分解が起きればHCHOを放出。完全になくなるのは、完全に接着力が無くなった時。

Q&A15 TVOCのJIS化に向けて動いている。早くて今年か来年中。異なったチャンバー間相互関係も調査中

Q&A16 室内空気の測定位置は、厚生労働省で作成中。アメリカでは、ブリージングゾーン(120〜200cm。環境により考慮必要。

 

4、 セミナーの実施に向けて 報告者 福田

 8月27日建築士会4階情報コーナーにおいて開催されたシックハウス建売セミナー打ち合わせ会での検討内容説明。会議の結果に基づいて作成されたシックハウス研究会計画書及び本セミナーのリーフレット作成、提示される。

 [意見] ア, 打ち合わせ会でセミナー名の印象が問題になったようだが、建売業者向けセミナーの方が明解である。

     イ, リーフレットのキャッチコピーが弱い。対象受講者に5000(6000)円を出しても受講する必要をアピールするコピーがよい。彼らの関心は法的に訴えられるかどうかが一番ではないか。

     ウ, 講師の構成は、法的な見地から弁護士、実際に施工業会に身を置いて苦労している業者、

シックハウス症候群の概要・対策・建材・原因測定法については当研究会員建築士が妥当。

     エ, 後援予定 大阪府 趣意書をもって事前打ち合わせが必要。担当 中村(英)

(社)大阪建築士事務所協会  担当 梅本

 大阪府宅地建物取引業協会 中村さんが約束を取り付けている。

 NPOシックハウスを考える会  担当 阿部

 

5、 今後の勉強会内容のついて  資料作成・提案者阿部

勉強会全体テーマ 「シックハウス問題に関する基礎知識の取得」

勉強会内容案       
 @ 「化学の基礎知識の取得」  −東氏(科学者)《済》

 A 「医学の基礎知識の取得」  −日赤和歌山 池田氏または関西医大 遠藤氏

 B 「住環境の基礎知識の取得1(ダニ・カビ)」  −奈良女子大 東氏

 C 「住環境の基礎知識の取得1(空調・換気)」 −大阪大 山中 摂南大 楢崎氏

 D 「大気または測定の基礎知識の取得」     −大阪市立環境化学研究所 宮崎氏

 E 「住宅に関する苦情・相談対応のノウハウの取得・実態把握」−PLセンター・消費者センター・国民生活センター等の担当者

 F 「患者の声・体験を聞く」    −尾関氏 《済》  堂本氏

 G 「市民活動の基礎知識の取得」  −NPO支援機構 日本NPOセンター等
 H 「対策リフォームの基礎知識の取得」  −炭と環境社  野池氏

[追加]I 「シックハウス対応建材の基礎知識の取得」  ー建材メーカー

 ア、勉強会の運営(講師依頼交渉と以後の連絡・機器の準備)   担当 梅本(しばらくは1人で様子を見る)

6、その他

 お知らせ

ア、 コンペの紹介  2000年度日本建築学会設計競技(技術部門)

「ヘルシーハウス」アイディアコンペティション 室内化学物質空気汚染防止に配慮した住宅設計

 申込・問い合わせ:(社)日本建築学会事務局 「設計競技(技術部門)」係

 TEL 03(3456)2057 FAX 03(3456)2058 E-mail=an@aij.or.jpあるいはkawata@aij.or.jp

10月6日17:00必着
イ、  梅本さんより 大阪建築士事務所協会リニュアール事業部会からの伝言

 建築士事務所協会でリニュアール事業部会が立ち上げられた。中村さんに入会の誘い。他の方々も協会に入会して、部会に参加してください。