シックハウス関連各種報道情報 (2003年以前)

<報道情報>  2003(平成15)年以前 現存データ分
シックハウス:大阪の裁判所が初の対策へ 原告の要望受け
シックハウス症候群の重症例とされる化学物質過敏症(CS)になったと訴えた民事訴訟の原告側が「裁判所内の微量の化学物質に反応して出廷できない」と改善を要望し、大阪地裁と法廷を管理する同高裁が改善する方針を示したことが29日分かった。地・高裁側は、既に所内の害虫駆除剤や除草剤の薬品名や成分のリストを開示している。今後、清掃業者に害の少ない薬剤使用の検討を要請し、法廷内での化学物質の空気中濃度測定をもとに専門家の助言を得て対策を実施する。 浦和、前橋、青森、盛岡各地裁でもCS患者が同様に提訴したが、化学物質のため出廷できないか、我慢しているという。今回の取り組みは、公共施設の化学物質に対するバリアフリー化の先例となりそうだ。 きっかけは、自宅の新築でシックハウス症候群になった大阪市東淀川区の19歳と15歳の兄弟が4月に提起した「シックスクール訴訟」。2人は学校がシックハウス症候群に配慮しなかったため、CSになるなどして通学できなくなったと主張し損害賠償を求めたが、提訴当日に大阪地裁に入った際、化学物質に反応し、頭痛や鼻血で敷地外に出ざるを得なかった。 このため、「シックハウス連絡会」(事務局・東京都練馬区)など三つの患者・支援団体が5月、大阪地裁所長に対策を要望。「施設内と周辺の環境で身体への悪影響が予想される」として、身体に影響のある化学物質が含まれない製品を施設管理に使用する▽施設内外での害虫駆除は極力行わず、やむをえない場合も身体に影響のある原料を避ける――などを求めた。 地高裁側は協議に応じ、「指摘してもらったら可能な限り対応したい」として、ワックスや洗剤、消毒剤などを含め約20項目の化学物質リストを示し、空調、換気設備についても説明。対策の検討を進めている。
大阪地裁総務課の話 対策は、今回の原告に限らずに可能な限り考え、裁判を受ける権利や傍聴による裁判の公開の原則を確保したい。
(2003/7:毎日新聞)
接着剤:ユーカリ天然成分を添加 シックハウスなどに配慮
 大阪市立工業研究所と建材メーカーの日本テクマ社(大阪市北区)は3日、オーストラリア特産のユーカリの成分を、粘着力を持たせるための可塑剤や防かび剤に利用する建材用接着剤を開発したと発表した。環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と疑われる物質やシックハウス症候群の原因となる化学合成物質ではなく、天然の植物成分を添加したのが特徴で、同研究所は自然志向の建築物に需要があると見込んでいる。
 同研究所などは、ユーカリオイルが可塑剤の役割を果たし、接着剤に必要な防かび効果も期待できることを実験で確かめた。開発した接着剤は、主材のポリアクリル酸エステルにユーカリオイルを添加したもので、従来品とほぼ同様の接着性能を持つという。コストは従来品の1.5倍以上だが、同研究所は「天然志向から、需要があるのではないか」と話している。 【大島秀利】
(2003/4/3:毎日新聞)
<シックスクール>子供の症状悪化で全国初の提訴 大阪地裁
 大阪市東淀川区、自営業、入江利之さん(43)の長男(19)と二男(15)が1日、「シックハウス症候群であることを学校に説明したのに配慮されず、症状悪化などで通学できなくなった」として、それぞれが通っていた私立中・高校(学校法人)と同市立小学校(大阪市)を相手に各1000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。学校の化学物質が原因の「シックスクール」をめぐる全国初の訴訟となった。
 訴状によると、化学物質過敏症になっていた兄は、大阪府内の私立中2年だった97年以降、教室の床へのワックスがけなどで頭痛がひどくなったり、病気に無理解な教師の対応でPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったうえ、高校に進学後、化学物質過敏症を理由に除籍処分にされた。弟は軽症だったが、大阪市立小4年だった97年、校内エレベーター工事で化学物質を吸ったのをきっかけに症状が悪化した。
 兄は無職。弟はこの春から定時制高校に通う予定。兄弟は「学校の化学物質で苦しむ児童・生徒の存在が広く知られるきっかけにしたい」と話している。大阪市教委、学校法人とも「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。
 シックスクールをめぐっては大阪府堺市の市立保育所の保育士4人が02年5月に労災認定された事例がある。 【大島秀利】
(2003/4/1:毎日新聞)
大京マンション有害物質問題 不自然な測定結果
 マンション分譲最大手の「大京」(東京都渋谷区)が販売した大阪市内のマンションから国の指針値を超える有害化学物質が検出され、入居者が健康被害を受けた問題で、完成時の施工業者による化学物質の測定結果が指針値を大幅に下回っていたことがわかった。健康被害を受けた入居者は「結果は信頼できない」と指摘するが、大京は「販売に使ってはいない」としている。
 大阪市北区の「ライオンズマンション」(95戸)では完成時の00年11月、施工業者の中堅ゼネコンが大京の指示で、建材に使われる化学物質「ホルムアルデヒド」の室内空気中の濃度測定を計10戸で行った。1戸につきリビングや台所など計5カ所で、密閉状態と換気した後に行われた。
 その結果、濃度は最高でも0.0275ppmと、指針値の0.08ppmよりかなり低かった。
 また計100回の測定結果は「0」と「0.025」、「0.0275」の3種類の数値しか記されていなかった。
 入居者らによると、施工業者は健康被害を受けた入居者の苦情に対し、結果を示して「完成時の測定ではこうだった」と説明していたという。
 建材に詳しい早大理工学部の田辺新一教授によると建材のホルムアルデヒドは、新築の建物などで空気にさらされてから、数週間で半分から3分の1の量になることが多い。
 だが、このマンションでは完成1年後からの保健所の測定で、計3回とも指針値を上回り、1年8カ月後に大京が行った精密測定でも指針値を平均1.9倍上回った。完成時に測定した10戸のうち8戸でも完成時の測定より高い数値で(2戸は測定せず)、うち6戸で指針値を超えた。
 完成時の測定結果についてホルムアルデヒドの測定に詳しい医師は「通常、多く出る台所で低くなっているなど考えにくい結果だ」と指摘する。
 これに対し、施工業者は「簡易測定法で実際に行った。細かい数値が読みとれない場合に機器の説明書に従って算出した」。大京広報部は「参考として測定を依頼したが、結果を使って販売はしていない」と説明する。
 シックハウス症候群と診断された入居者、今井義治さん(36)は「測定結果の信頼性は極めて怪しい。入居者から苦情が出た時の言い逃れのために使ったのも許せない」と話している。
(2003/3/5:朝日新聞)
「対策十分」マンションで入居者がシックハウス症候群に
 マンション分譲会社最大手の「大京」(東京都渋谷区)が00年11月に完成させた大阪市内のマンションで、シックハウス症候群の原因物質「ホルムアルデヒド」が厚生労働省の指針値の最高で4倍以上の濃度で検出され、一部の入居者が同症候群と診断されていることが、3日わかった。大京は「シックハウス対策は十分」と説明して販売。健康被害を訴える入居者に一時、買い戻しを申し出ていたが、朝日新聞の取材には「因果関係ははっきり分からない」としている。
 問題のマンションは、大京が99年末から販売した大阪市北区の「ライオンズマンション」(95戸)。
 入居者らによると、01年の入居直後から約半年の間に、少なくとも10世帯十数人が発疹や頭痛、呼吸器の異常などを訴えた。重い症状が続いて会社を退職したうえ、マンションを所有したまま、医師の勧めで転居せざるをえなくなった男性もいる。
 これまでに6人の入居者が、同症候群かどうかが厳密に判定できる北里研究所病院(東京都港区)で診察を受けたところ、全員が同症候群と診断されている。
 入居者の依頼を受けた保健所が01年11月からマンションの一室でホルムアルデヒドを計3回測定した結果、高い時には0.16ppmと、いずれの時も厚生労働省の安全指針値(0.08ppm)を超える数値が出た。
 また大京が昨年7月に研究機関に委託した調査でも、指針値を超える量が検出された世帯が約7割に上り、最高で指針値の4倍以上、平均で約1.9倍の数値を示した。
 このマンションを販売した大京の元社員や入居者らによると購入前、大京の営業マンは「建材はホルムアルデヒドの最も少ないものを使用」「(指針値の)0.08ppmをクリアすることはもちろん、限りなくゼロに近づける」とシックハウス対策を強調したパンフレットを渡したり、「対策は十分」と説明したりして購入を勧めていたという。
 このマンションには実際には、ホルムアルデヒドが比較的多く放出される恐れがある性能の低い建材が多用されていた。
 この建材について大京は「01年以降は使用していない」とし、それ以前の使用量や使用したマンション名は明らかにしていない。
 入居者からの苦情を受けた大阪府が昨年5月、大京の担当者から事情を聴き、パンフレットの表現が誤解を招きかねないと指摘。大京はパンフレットの使用をやめた。
 また、いち早く健康被害を訴えた2世帯に対し、奥田一副社長が昨年4月、マンションを訪れて直接謝罪し、2戸の買い戻しと移転費用などの補償を申し出た。1世帯とは交渉が決裂したが、残る1世帯と交渉が続いている。ほかにも十数世帯がリフォームなどの補償交渉を検討している。
 00年に全国で9000戸以上を販売した大京は、このマンションの入居者に対し「より安全な建材が、この時期には供給不足で入手できなかった」と説明している。
(2003/3/4:朝日新聞)
シックハウス対策十分、説明に反し症状 大阪のマンション
 マンション分譲会社最大手の「大京」(東京都渋谷区)が00年11月に完成させた大阪市内のマンションで、シックハウス症候群の原因物質「ホルムアルデヒド」が厚生労働省の指針値の最高で4倍以上の濃度で検出され、一部の入居者が同症候群と診断されていることが、3日わかった。大京は「シックハウス対策は十分」と説明して販売。健康被害を訴える入居者に一時、買い戻しを申し出ていたが、朝日新聞の取材には「因果関係ははっきり分からない」としている。
 問題のマンションは、大京が99年末から販売した大阪市北区の「ライオンズマンション」(95戸)。入居者らによると、01年の入居直後から約半年の間に、少なくとも10世帯十数人が発疹や頭痛、呼吸器の異常などを訴えた。重い症状が続いて会社を退職したうえ、マンションを所有したまま、医師の勧めで転居せざるをえなくなった男性もいる。
 これまでに6人の入居者が、同症候群かどうかが厳密に判定できる北里研究所病院(東京都港区)で同症候群と診断されている。
 入居者の依頼を受けた保健所が01年11月からマンションの一室でホルムアルデヒドを計3回測定した結果、高い時には0.16ppmと、いずれの時も厚生労働省の安全指針値(0.08ppm)を超える数値が出た。
 また大京が昨年7月に研究機関に委託した調査でも、指針値を超えた世帯が約7割に上り、最高で指針値の4倍以上、平均で約1.9倍だった。
 このマンションを販売した大京の元社員や入居者らによると、営業マンは「建材はホルムアルデヒドの最も少ないものを使用」「(指針値の)0.08ppmをクリアすることはもちろん、限りなくゼロに近づける」とシックハウス対策を強調したパンフレットを渡したり、「対策は十分」と説明したりしていたという。
 このマンションには実際には、ホルムアルデヒドが比較的多く放出される恐れがある性能の低い建材が多用されていた。
 入居者からの苦情を受けた大阪府が昨年5月、大京の担当者から事情を聴き、パンフレットの表現が誤解を招きかねないと指摘。大京はパンフレットの使用をやめた。
 また、いち早く健康被害を訴えた2世帯に対し、奥田一副社長が昨年4月、マンションを訪れて直接謝罪し、2戸の買い戻しと移転費用などの補償を申し出た。1世帯とは交渉が決裂したが、残る1世帯と交渉が続いている。ほかにも十数世帯がリフォームなどの補償交渉を検討している。
 大京は、このマンションの入居者に「より安全な建材が、この時期には供給不足で入手できなかった」と説明している。
 ◆因果関係は分からない――大京広報部の話
 一部の建材が当時の最高のものではなかったにしても日本工業規格(JIS)などの規格品を用いており、当時、それらの使用では指針値を超えないものと考えていた。
 当社の測定はホルムアルデヒドが多く放散される夏場だったために高い数値となった。残念な結果だが、原因が建材だけによるものかどうかや、入居者の訴える体調不良との因果関係ははっきり分からない。
     ◇            ◇
 《キーワード》ホルムアルデヒド
 接着剤や塗料に含まれる揮発性の化学物質。建材から出る物質の影響で体調を崩す「シックハウス症候群」の主原因。97年、当時の厚生省は世界保健機関の基準を基に、健康に害が及ばない室内濃度指針値を0・08ppm以下とした。環境省は「空気中に含まれた状態で発がん性がある」と指摘している。北里研究所病院客員部長の宮田幹夫さんによると、指針値レベルで花粉症を悪化させる可能性が高く、半分以下でも小児ぜんそくの原因になるという研究報告もあるという。 (2003/3/4:朝日新聞)
塩尻市長、職員を減給・戒告−−西小のシックハウス症候群問題など /長野
 ◇特養「浅間つつじ荘」肺炎死問題
 塩尻市の小口利幸市長は28日、市立塩尻西小(寺沢勝校長、児童数約380人)新築校舎でシックハウス症候群の原因とされるトルエン濃度が環境基準を超えていた問題と、松本市原の特別養護老人ホーム「浅間つつじ荘」で入所者7人がインフルエンザとみられる肺炎で死亡した問題で、職員の処分を発表した。
 塩尻西小問題では、飯田正弘教育次長を2カ月減給10分の1、小宮山信学校教育課長を1カ月同とし、担当職員4人も戒告などとした。藤村徹教育長も自ら3カ月減給10分の1とした。小口市長は「事実公表が遅れたのは怠慢だった。悪意を持った隠ぺいはなかったが、結果として公表しないまま授業を続け、児童の健康に対する配慮を怠った」と説明した。
 一方、浅間つつじ荘問題で小口市長は施設管理者として、松塩筑木曽老人福祉施設組合の樋口勝彦事務局長を厳重注意、同ホームの奥原武次所長を戒告とするなど計8人を処分した。同市長は「大きな社会問題になり、行政不信を招いた責任は重い」と述べた。同ホーム家族会から提出された不処分を求める嘆願書なども考えたうえで処分を決めたという。【森有正】
(2003/3/1:毎日新聞)
「シックスクール」対策、財政難に学校苦慮/アサヒ・コム
 建材などに含まれる化学物質で、学校に通う子どもが体調不良を訴える「シックスクール」。財政難から、学校現場が対策に苦慮している。原因とされるホルムアルデヒドなど化学物質の濃度測定検査さえ十分にできない。基準値を超えた場合も、原因物質を除去する根本的な対策がないのが現状だ。
 東京都調布市立調和小学校。9月に使い始めた新校舎で7人の児童がじんましんなどを訴えた。市教委が化学物質の濃度を測定すると基準値を超えるトルエンが検出された。転校したり、一時的に別の学校に通ったりする子どももいた。
 大阪府堺市の保育所でも昨春、建て替えのために仮設の園舎に移った園児や職員約20人が、直後から頭痛や目の痛みを訴えた。
 だが、検査に対する国の補助制度は整っていない。自治体は1校約30万円かかる検査費用を独自に確保しなければならない。文部科学省は、検査をするように求める通知を出しているだけだ。
 東京都教育庁は8月、比較的新しい都立校21校を対象に調べた。が、これらは1回250円でできる簡易法。新年度からより精度の高い方法で検査するが、都立の280校のすべてを調べるには数年はかかる見通しだ。
 さらに、検査で基準値を上回っても、文科省は「汚染物質の発生を低くするなど適切な措置を講じる」とするだけで、具体的な対策は示していない。
 都教育庁が検査した21校のうち、3校が基準値を5割程度上回った。窓を開けたり、換気扇を回したりして濃度を下げた。担当者も「根本対策はこれから。出来ることから進めていくしかない」。
 埼玉県教委が今夏、公立学校を対象に実施したアンケートでは、同県内1552校のうち37校で「工事後に体調が悪くなった子どもがいる」との結果が出た。
 同県教委は11月末、シックスクールに対する取り組み方針をまとめた。建材や机、コンピューターなどはホルムアルデヒドの放散量が少ないものを選ぶことなどを定めた。しかし、「ホルムアルデヒドは氷山の一角。指定物質以外、基準値以下でも発症する子どもたちもいる。どこまでやればいいのか、難しい」(同県教委担当者)と、手探りの状態だ。
(2003/1/6 佐藤 登さんより)
■シックハウス対策マニュアルを学校に配布 /建設通信新聞
 文部科学省は2003年度、シックハウス対策のマニュアルを作成、私立も含めた全国の小・中・高校に配布する。また、00年度に調査したホルムアルデヒドなど4物質を除く化学物質について、校内の室内濃度を調べる。今年度は、児童生徒のシックハウス症候群の実態を調査する。
 文科省は、教育委員会に対してはシックハウス症候群について指導しているため、理解が進んでいるが、現場となる学校では遅れていると判断、マニュアルを作成して啓蒙していく。
 マニュアルの内容は、同症候群とは何かという基本的な事項から、改修や新築の際の注意事項、濃度の検査方法などを想定している。
 同省は00年度、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの4物質について、50校を対象に夏季と冬季の2回、普通教室、音楽室、体育館などで室内濃度を測定した。この調査結果を基に、今年2月、照明や騒音、水質などを良好な環境に維持するためのガイドラインとなる「学校環境衛生の基準」を改訂、新たにこれらの4物質を盛り込んだ。
 厚生労働省は、4物質を含む13物質について室内濃度の指針値を定めている。文科省は、アセトアルデヒドやエチルベンゼンなど残りの9物質についても来年度、室内濃度を調査する。
 今年度は、私立を含むすべての小・中・高校生を対象に、シックハウス症候群の実態を調査する。ただ、医学の面でも同症候群の診断基準が決まっていない状況のため、調査項目の作成に時間がかかれば、調査は来年度にずれ込む可能性もある。
(2002/11/1 佐藤 登さんより)