シックハウス関連各種報道情報 (2005年第2四半期:4〜6月)

<報道情報>  2005(平成17)年第2四半期
「北方型住宅」の施工データ登録 道、品質向上へ新制度
 道は、産学官連携で普及を目指している「北方型住宅」について、施工データの登録制度を導入した。施工者が設計、施工資料を建築主(ユーザー)に提供する一方、指定登録機関で登録・保管するよう定める内容で、地域の工務店の信用と品質向上を通した需要拡大を目指す。
 「北方型住宅」は道内の気候風土に合った良質な住まいを目指し、道や住宅業界が一九八八年から普及を推進してきた。これまでの基準は、高断熱・高気密で家屋に車庫を組み込むなどの大まかな条件を満たした住宅で、施工者の申請に基づき認定され、道内で約千三百戸あった。
 今回は近年の需要に合わせ、《1》壁、天井などのすき間面積が一平方メートル当たり二平方センチ以下など、断熱性と気密性に優れた省エネ構造《2》含水率20%以下の乾燥材の使用など高い耐久性《3》バリアフリーやシックハウス対策確保など安心、健康面の配慮《4》木材など地域資源の活用−の四つの基準に明確化。
 その上で、施工者が設計・施工の図面や資材の資料を施工途中で五回にわたりユーザーに提供、報告するよう定めた。また建築時に断熱施工技術者を活用するよう義務付けた。
 こうした手順を踏んだ住宅のみ、施工者の申請に基づいて道の指定登録機関である財団法人北海道建築指導センターで北方型住宅として登録。データを十年間保管して、後のトラブル回避などに役立てる。
 道建築指導課は「一部の悪質なリフォーム工事で工務店の信頼が失われているが、ユーザーが安心してマイホームを購入し、地域の工務店が自信を持って売れる手助けになれば」と話している。
(2005/06/12:北海道新聞)
シックハウス症候群:対策協を結成 病院関係者ら勉強会/高知
 建物の建材に使われる化学物質による健康被害であるシックハウス症候群について考える勉強会がこのほど、県議会棟で開かれ、民間や県、病院関係者らで作る「県シックハウス対策連絡協議会」を立ち上げた。今後、実態の調査などを行い、シックハウス対策について研究を行う。
 この日の勉強会には県議やNPO、病院、県の関係者らが出席。連絡会はシックハウスやシックスクールから県民の健康を守ることを目的に設立。研究や情報収集を行い、症候群の啓発活動や県民の相談窓口、安全な建材に県独自の「認証マーク」を付ける制度の検討などを行う。勉強会では参加者から「データがまだ少ないので、まずは調査を行っていくべきだ」などの意見が出されていた。
 設立を呼びかけた植田壮一郎県議は「議論を深めていき、しっかりとした対策を探っていきたい」と話していた。
(2005/6/6:毎日新聞・高知)
プラスチック製品などに含まれる化学物質が男児生殖器の発育を阻害
  San Francisco Chronicle紙によると、ビニール製品や他のプラスチック製品によく用いられるフタル酸エステルが、男子乳幼児の生殖器の発育を阻害する可能性があることが、米ロチェスター大学の研究により明らかにされた。
 フタル酸エステルは、香料や石鹸、化粧品類、塗料、錠剤のコーティーングなどにも用いられている化学物質。母体の尿中フタル酸エステル濃度が著しく高値を示した男児のうち、21%が精巣下降不全や小陰茎などの合併症を来していた。
 EU(欧州連合)はすでにフタル酸エステルの使用を禁止しており、化学産業界からは異議が唱えられているものの、米カルフォルニア州議会が規制について審議中であるという。
 担当の研究者らによれば、今回の試験で対象としたのは3〜24カ月齢の乳幼児134例で、比較的小規模であることから、被験者を拡大して研究を進める意向であるという。
 この研究結果は、米国立環境健康科学研究所(NIEHS)発行の「Environmental Health Perspectives」5月27日付オンライン版に掲載された。(Health Day News 5月27日
(2005/6/6:Dr.赤ひげ.com)
環境省など3省、化学物質の安全情報を収集・発信へ
 環境省、厚生労働省、経済産業省の3省は、産業界と連携して「官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラム」を開始する。
 同プログラムは化学物質の安全性情報を広く国民に発信することを目的とする。「化学物質の審査・製造等の規制に関する法律(化審法)」が制定された1973年時点で既に製造・輸入されていたため、事前審査の対象となっていない化学物質に関する安全性情報を収集する。
 有機化合物を中心にリスクの観点から優先度の高い物質から情報収集を進める。国内製造・輸入量が1000t以上の有機化学物質を優先情報収集対象物質リストとして公表。これらの化学物質の安全性情報を収集するスポンサーの募集を開始する。
 情報収集するのは、経済協力開発機構(OECD)で既存化学物質の有害性の初期評価に必要な情報として定められている項目。OECDや米国と協調し、データ取得の重複を防ぐなど、連携を図る。毎年度末には進捗状況を確認し、2008年度までに安全性情報を収集する計画という(日経エコロジー編集/EMF)。
関連情報 環境省のWebサイト http://www.env.go.jp/index.html
(2005/6/3:日経BP)
建築学会、シックハウス対策テーマに「eラーニング」
 日本建築学会は、「シックハウスを防ぐ最新知識」をテーマにインターネットを使って講義内容を配信する、eラーニング講習会を行う。、全国の建築設計者、施工者等の実務者を対象に、シックハウス問題の基礎知識から対策などの最新情報をわかりやすく解説する。
 配信期間は7月15日(金)0時から8月31日(月)24時まで。配信期間中は、24時間好きなときに受講でき、繰り返し受講、途中受講も可能。
(2005/6/2:新建ハウジング)
“欠陥住宅”が生んだ健康障害
 かけがえのないお金で買ったマイホームに、体をむしばまれた家族がいます。
入居した直後、歯が抜け、手足がマヒするようになって、6年に及ぶ裁判を続けました。
一家の重い健康被害を生んだのは、住宅の設計ミスと防水工事の欠陥という、二重のミスでした。
〜2003年12月取材〜
神戸に住む本田紀美代さん。
まだ、58歳だというのに、杖なしではほとんど歩けません。
<本田紀美代さん>
「歩行困難とか、排尿障害とかがありますね」
趣味は登山でした。
夫と六甲山に登ったこの日からわずか数ヵ月後、突然全身がマヒし始めます。
やがて歯が抜け出し、骨がもろくなった首は、コルセットなしでは支えきれません。
短期間の異常なまでの変化。
医師はこう診断しました。
「中枢神経機能障害」
原因は、『新築家屋』。
<本田紀美代さん>
「(医師が)『シックハウスです』って」
神戸市長田区。
96年、4,380万円で購入した我が家は、わずか2年で空家になってしまいました。
中に入ると…。
<記者>
「何かにおいがしますねー」
<夫・仁義さん>
「におうでしょー」
<記者>
「すごい刺激臭がします・・・」
鼻を突き刺す強烈な刺激臭。
どうやら、奥の和室から出ているようです。
ことの始まりは8年前、入居翌年の雨の季節でした。
和室の畳にカビが生え、床下をのぞいてみると・・・。
一面の赤カビが。
業者はすぐに補修に応じましたが、この「補修」がその後の悲劇を招きます。
<夫・仁義さん>
「家の中から防水工事されたんです。そのおかげで家内がああいう病気になりました」
本来ならば、壁を取り払って行なうべき防水工事を部屋の内側から施工したため、トルエンを多量に含む接着剤や、発がん性物質が問題視されている防腐剤が、室内に充満したのです。
まず、息子夫婦や幼い孫が、次々と体調不良を訴えます。
そして紀美代さん。
家にいる時間が長かっただけに、症状は深刻でした。
<本田紀美代さん>
「突然息が止まるんですよね。ハッって感じで、息が出来ないんです。この家に殺されるって思った」
そもそもなぜ、新築の家にカビが大量繁殖したのか?
専門家に調査を依頼した結果、意外なモノが見つかりました。
<平野憲司一級建築士>
「家の壁はここですけど、くっついてる。擁壁(ようへき)と建物がくっつくということは考えられませんね。『欠陥建築』といえる」
確かに。
隣の家の境界の壁と本田さんの家の壁が、何故か、一体化しています。
どうやら設計ミスのようですが、平野建築士によると、雨水がここに出来た隙間から内側の和室に流れ込み、その結果、室内にカビが繁殖したといいます。
「設計ミス」と「防水工事の不備」、この2重の失敗がシックハウスを生み出したとというわけです。
<平野憲司一級建築士>
「ホルムアルデヒドの問題とかトルエンとか、社会的に問題になってるけど、工事やってる人には全く認識がない」
当の業者は、責任をどのように考えているのでしょうか?
社長に聞きました。
<記者>
「本田さんの健康被害と工事の関係について、どう思っているんですか?」
<社長>
「僕はないと思いますよ。シックハウスとかね?言うんですかね?」
まるで他人事。
では、家の構造に問題は無かったのか?と聞くと。
<社長>
「ない、絶対ない。それは自信持っていえる!」
ならば何故、水が漏れたんでしょう?
<社長>
「それはどないいうの?ちょっと水が出ていたというか、それはまー、うちのミスっていうか。工事のミスやったんちゃう?水切りの・・・ね」
ちょっとした「ミス」はあったようです。
防水工事についても聞いてみました。
<記者>
「そういうものの危険性については認識してますか?」
<社長>
「いや、ないです」
<記者>
「社長はあの家に住めると?」
<社長>
「もちろんですよ!もちろんですよ!もちろんです!!」
<記者>
「シックハウスが起こりうるとは認識してないということ?」
<社長>
「認識してない。ぜんっぜん認識してない。絶対にしてない!!」
そんな業者を相手取り、本田さんは6年前、裁判を起こしました。
本田夫婦は今、アパートを借りて暮らしています。
裁判は長期化。
業者は責任を真っ向から否定し、病気との因果関係を認めません。
脳障害から紀美代さんの記憶力が低下したこともありましたが、夫婦二人三脚で何とか裁判を続けました。
そして辿り付いたのは・・・。
2005年5月31日、「和解成立」。
6年の争いの末、裁判所が病気と家の因果関係を認め、業者に対し慰謝料を含め1,876万円を支払うよう和解勧告をしたのです。
<田中厚弁護士>
「裁判所がシックハウス被害の慰謝料を明確に認めたという意味で画期的。勝利的和解」
<本田紀美代さん>
「すっごい長かったですね・・・うん」
未だ、後遺症に苦しむ本田さんですが、裁判を終えて、心境に変化が芽生えました。
<本田紀美代さん>
「主人がぽつっとゆうたんです。『あの家に帰りたい』って。何で?って聞いたら、あれはわしが一生働いた金で買った家やって。何とかして『住める』ようにすれば、またこういう被害にあった人たちも住める、って希望が持てますよね。
逃げるのではなく、立ち向かう」
もう一度、この家で暮らしたい。
家を追われてから7年。
和解金を元手に、今度こそちゃんとした補修工事を始める予定です。
(2005/6/1:毎日放送・Voice)
 同事件  業者1860万円支払い和解 「シックハウス」訴訟
 (2005/4/7:神戸新聞)
化審法未審査物質の安全性情報収集・発信事業 枠組み案への意見募集結果公表
 経済産業省、厚生労働省、環境省の3省が合同で取組む、化学物質安全性情報収集・発信プログラム「Japanチャレンジプログラム」について、平成17年4月25日から5月20日まで実施されていたプログラム枠組み案への意見募集結果が17年6月1日に公表された。
 「化学物質安全性情報収集・発信プログラム」は、「化学物質の審査・製造等の規制に関する法律(化審法)」が制定された昭和48年時点で、すでに製造・輸入済みであったため、化審法による有害性の事前審査を受けていない化学物質の安全性情報を改めて収集し、情報発信を行うことをめざすプログラム。
 化審法制定時点で製造・輸入済みだった化学物質に対しては、これまでにも有害性・リスク評価に関する施策が実施されているが、対象物質数が非常に多いため、海外での評価事例を含めても評価が行われていない物質もいまだ多く存在している。
 プログラムの枠組み内容は、(1)既存化学物質に対し情報収集の優先度を設定し、(2)優先度に基づき優先的に情報収集を行う物質を選定、(3)優先的に情報収集する物質については、安全性情報を収集する民間スポンサーを募集し、スポンサーが情報を収集・報告。そのデータの信頼性は国が委嘱する専門家が確認する、(4)国は新規性、開発性が認められる物質や民間では情報収集困難な物質について情報を取得、(5)信頼性が確認された既存データを積極的に活用し、(6)スポンサーや情報収集進捗状況は積極的に公表する、(7)収集された化学物質の安全性情報は広く国民に発信する−−というものだった。
 意見募集中に意見を寄せた人・団体数は47で、意見には例えば「欧州で実施される同趣旨のプログラムでは、企業の提供情報は要約のみを公開し、オリジナルデータは公開されない。日本でも公開情報制限が必要ではないか。また、費用をかけてデータを提供する企業と、それ以外の競合会社との間に不公平が生じないような配慮が望まれる」との内容があった。
 この意見に対しては「収集情報の公表の形式は今後検討するが、営業秘密や知的財産権には配慮する。プログラムへの参加については、現に製造・輸入を行っている事業者に広く呼びかけていくつもり」との回答が示されている。【経済産業省】
<記事に含まれる環境用語>
   リスク評価  ・ 化審法  ・ 知的財産権
<プレスリリース>http://www.meti.go.jp/feedback/data/i50601cj.html
(2005/6/1:EICネット)
学校を化学物質から守ろう 「シックスクール」正しく認識を
防げるはずの被害
 子どもたちが多くの時間を過ごす学校や幼稚園、保育所で健康を害するようなことがあってはならないのは当然だが、防げるはずの被害が、学校や教育委員会の認識の甘さ、対応の遅れで逆に拡大してしまうような事態が起こるのは大変に残念だ。その意味で、神奈川県の県立高校で起きた「シックスクール」は多くの反省点に満ちているし、今後のために貴重な教訓とすべきだろう。
 「シックスクール」は新築、改修した校舎の建材や塗料、パソコンなどから放散される微量の化学物質により頭痛や筋肉痛、倦怠感、脱力感といった神経・全身症状、味覚や聴覚など感覚器症状、抑うつや不安、焦燥などの精神症状を含む多彩な症状を引き起こす。
 一般に原因となる化学物質から遠ざかることで症状が消失することが多いものの、大量の化学物質にさらされると、その後、たばこの煙や塗料の臭い、燃料排気など空気が汚れている場所で決まって体調を崩すなど症状を悪化させる「化学物質過敏症」に進行。そうなると極めて微量の化学物質にさらされただけで症状が出てしまうことから、児童・生徒なら不登校に、社会人なら仕事にも就けず自宅から一歩も出られないなどの深刻な事態に陥りかねない。
 このため現在では、ホルムアルデヒドやトルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンなど13の化学物質について「室内濃度指針値」が厚生労働省によって定められ、学校については文部科学省が「学校環境衛生の基準」で、先の4物質にエチルベンゼン、スチレンを加えた6物質について教室内の空気環境の基準を定め、適切な措置を講じるよう求めている。
 神奈川県の県立高校で起きた事例は、「室内空気には関係のない屋上の防水工事だから」という安易な見方に落とし穴があった。この工事では、屋上に塗った防水剤に含まれる有機溶剤がコンクリートの割れ目から染み込み、揮発して直下の教室に漏れ出た可能性が強く指摘されている。4月下旬から生徒や教職員約100人が頭痛や吐き気を訴え騒ぎが大きくなったことから問題化したものの、工事が行われたのは昨年(2004年)の9月。県は屋上工事で「シックスクール」が起きることは「想定外」と説明するが、工事中から異臭を指摘する声があったのを、結果的に「基準に定められていないから」という理由で漫然と見過ごしてきた。
 この問題は国会でも取り上げられ、今月(5月)18日の衆院決算行政監視委員会で公明党の古屋範子さんが「認識の甘さ、県教育委員会の対応の遅れが混乱を招いた。どうにかなるのではないかという感覚で危機管理能力が欠け、対応が後手後手になった」と指摘にしたのに対し、中山成彬文部科学相は「ショックだった。学校は生徒や児童が大半を過ごす場所で安全でなければならない。まことに遺憾だ。研修会などを通じ、一層の指導徹底を図りたい」と答えている。
校庭の芝生化でも
 子どもたちが健やかに育つように心を砕いていきたい。そのために関係者は「シックスクール」の理解を深めるべきだ。「基準」を守るのは当然だが、その「基準」も過敏症にならないよう予防する水準であり、過敏な人はそれより低い濃度でも体調は悪化することへの配慮が必要だ。校庭の芝生化も良いが、農薬など新たな化学物質が学校に持ち込まれるような事態は避けるべきだろう。
(2005/5/31:公明党・公明新聞)
食品容器や歯科治療材由来の化学物質、乳がんに関与か=米研究チーム
 米タフツ大学医学部の研究者らはこのほど、食品・飲料用のプラスチック容器や歯科治療材シーラントから溶解するビスフェノールA(BPA)が出産前後期の若いマウスの乳腺発達に影響を与えるとの研究成果を発表した。5月26日付医学雑誌「Endocrinology」(内分泌)に掲載された。
 5月30日付け英タイムズ紙(電子版)は「(BPAのような)化学物質に曝露した女性は乳がんのリスクが高まる」と伝えている。
(2005/5/31:ニッポン消費者新聞)
シックハウス症候群 理解して
 高知市横内の住宅コーディネーター西田政雄さん(49)=写真=は、シックハウス症候群で苦しむ人の相談に乗る。NPO法人「我が家を見直す会」を4年前に立ち上げ、事務局長を務めている。
 シックハウス症候群は、住宅に使われる建材や塗料の化学物質を吸い込むことで、吐き気やめまいなどの症状が引き起こされる病気。西田さんによれば予備軍を含めた患者は全国で1千万人を超えるという。
 県内外の10人ほどの相談者を継続的に支えてきた。一人ひとりの体に合う壁紙や建材を紹介、症状の出にくい暮らし方を提案する。NPOを立ち上げる前は「ボランティアなんて暇な人がやる生徒会みたいなもんだと思っていた」と笑う。
 シックハウス症候群の存在を知ったのは職を転々としていた8年前。独学で知識を深め、患者に会っていくうちに「自分がやらなければ」と、シックハウス問題に本気で取り組むようになった。
 7月には市内の中学生に向けた講義を予定している。「苦しみは当事者にしか分からないが、せめてこの問題に関心を持ってもらい、理解を深めてもらえれば」
(2005/5/30:朝日新聞・高知)
韓国・「新設校、シックハウス症侯群」無くす…環境基準強化
 早ければ下半期から新設校の建設に汚染物質を多く放出する建築材料の使用を制限し、室内空気質測定が義務化され、その基準も強化される。
 教育人的資源部は新たに開校する学校の環境問題として「新設校シックハウス症侯群」を無くすため、学校保健法施行規則などを改正して2学期からの施行を発表した。
 改善法案では、学校新築時に汚染物質を放出する建築材料の使用を制限し、汚染源を事前に無くし、学校施工者に学校建物の完工後、フォルムアルデヒドと揮発性有機化合物などの測定結果の提出を義務化する。
 また、すでに開校した学校も、開校後の3年間、毎年2回以上汚染物質を測定して基準値を越す場合、休みや公休日を利用して揮発性有害物質の排出を予定している。
 また、古い学校は微細なほこりと浮遊細菌などを集中的に管理し、自然換気や真空掃除をするようにし、学校を改修・補修する時は環境にやさしい建築材料の使用を勧奨している。
(2005/05/27:innolife・韓国)
日本最大の化学物質データーベース無料公開へ
  日本で最大の化学物質データベースが無料公開された。科学技術振興機構の日本化学物質辞書(日化辞)。有機低分子化学物質の化学構造および各種名称データを収録。約200万件のデータを収録し、化学構造、物質名、俗称などから検索できる。検索結果は画面上で見ることができるほか、構造情報を一般的な化学構造フォーマットで出力できるため、分子動力学シミュレーションなどにも使えるのが特徴。
  日化辞の対象物質は、水素を除く構成原子数が247以内の低分子有機化合物、組成比が確定している有機酸、無機酸の金属塩、相対的な立体構造のみ判別している化合物、ラセミ混合物など。具体的には、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)の既存化学物質名簿に載り官報公示された13万4000物質、労安法(労働安全衛生法)で定められ官報に公示された3万3000物質、米国保健教育福祉省発行のRTECS(毒性データリスト)に記載された化学物質や教科書、ハンドブック類に記載された化学物質などのデータが搭載されている。さらに、JSTの文献データベース収録論文の主題になった化学物質データなどが加えられている。
  キーワードを入れる簡易検索、物質名や分子式、法規制番号等で調べる文字列検索に加えて、構造から検索できるのも売りの一つ。無料で配布されているChemDrawPluginをインストールすれば、自分でベンゼン環や元素を組み合わせて化学構造を画面上に描画できるので、その画像情報で検索できる。また、手持ちの化学構造描画ソフトで作成し、一般的に使われているモルファイル形式で出力したファイルを使っても検索可能だ。そのため、授業や学生の自習にも活用できる。
  検索結果は、構造と独自に付けている日化辞番号、分子式で表示され、目的物質の日化辞番号をクリックすれば詳細情報を見ることができる。日化辞番号、物質タイプ、分子量、CAS登録番号、法規制番号、体系名、慣用名などに加え、化学構造図のモルファイルをダウンロードすることも可能だ。モルファイルは分子動力学計算にも使うことができるため、シミュレーションを動かすときに構造情報を入力する手間が省ける。
 また企業にとっては、法規制番号が重要になる。法規制番号が付いていない物質は、化審法や労安法で許可されていない物質なので、製造や輸入の際に関係省の審査が必要になる。簡単に調べられれば、素早い経営判断が可能になる。
  現在、日化辞は論文情報とはリンクしていないため、物質から論文を検索することはできない。JSTは来年度には論文検索サービスJDREAMなどともリンクし、さらに使いやすくしたいとしている。
【詳細】日本化学物質辞書Web
(2005/5/26:科学新聞社)
『対応の遅れは反省』保土ケ谷高のシックハウス
 横浜市保土ケ谷区の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、生徒数六百六十人)で、屋上防水工事後に教職員と生徒らが、頭痛や吐き気などシックハウス症候群とみられる症状を訴えていた問題で、松沢成文知事は二十日、同校を視察、生徒代表との意見交換で「対応の遅れは反省したい」と語った。
 知事はまず、防水工事が行われた直下の教室を訪れ、校長や県教委の説明を受けた後、授業開始前に生徒会役員と合唱部員の計十人の生徒と面談。生徒からは「においが出た時になぜすぐ対応ができなかったのか」「改修工事を早くやってほしい」と疑問や要望が出た。
 知事は「もっと調べれば良かったが、屋外工事が教室内に影響を与えるとは予想できなかった。対応が後手に回ってご迷惑をかけた。二度と起こさないよう取り組みたい」と述べ、全面改修工事の予定や再発防止のマニュアルを作成中であることを説明した。
 同校によると、女性教員二人が、医師からシックハウス症候群の可能性があるとの所見を得ている。また因果関係は不明だが五月上旬のアンケートで生徒三百八人が何らかの症状を訴えており、今月二十六日に全生徒を対象に健康診断を行う。
(2005/5/21:中日新聞・神奈川)
病院がわかる:第3部・「患者様」の時代/7 新しい診療科
 ◇シックハウス−−旅行外来も
 治療の専門性を求める患者に応え、肝臓科、糖尿病外来など、臓器や病気の名前を診療科に掲げる病院が増えている。シックハウス、旅行外来など新しい外来窓口も目立ってきた。
 ◇クリーンルーム
 東京労災病院(東京都大田区)には、化学物質過敏症を診察する「環境医学研究センター」(シックハウス科)がある。02年5月から予約制で診療を開始。「自宅の新築をきっかけに頭痛が始まった」「職場に入ると吐き気やだるさを感じる」などの症状を訴える患者が、年間100〜150人訪れる。
 目玉は通常の家庭の室内に比べ、化学物質濃度を10分の1〜100分の1に抑えたスーパークリーンルーム。患者は着替えて入室、外部から持ち込まれる物質の影響を抑えて、どんな化学物質に反応するか調べる。室内の塗料、漂白剤、芳香剤など原因はさまざまだ。シックハウスへの理解は十分ではなく、西中川秀太医師(38)は「患者の多くは病院を転々とし、心の病などと診断され苦しんでいる」と専門科の必要性を訴える。同病院の小林達雄事務局長は「東日本でオンリーワンの診療科を目指す」と差別化を意識する。
 ◇過労死の予防に
 疲労感や倦怠(けんたい)感が長期間続き、社会生活に支障が出る「慢性疲労」。90年代から研究が盛んになり、日本人1000人のうち2〜3人に症状が見られるが、治療法などは確立されていない「現代病」だ。
 大阪市立大病院は12日、「慢性疲労外来」を開設した。慢性疲労について、病院全体で診察・治療に取り組むのは日本では初めてという。原因は免疫やホルモンの異常、ウイルス感染などが指摘されているが、解明されていない。怠惰な人との区別も付きにくいため、周囲からの理解を得られず精神的な苦痛も大きい。西沢良記副院長は「将来は『疲労クリニカルセンター』として、糖尿病など生活習慣病と疲労の関係や、過労死予防の研究も行いたい」と話す。
 ◇海外へ行く前に
 「ブラジルに行くが流行している感染症は」「糖尿病の持病があり、もしもに備えて英文の診断書がほしい」
 東京厚生年金病院(東京都新宿区)で週1回、旅行医学外来を担当している溝尾朗(みぞおあきら)・内科医長(42)のもとには、海外への旅行や留学、赴任前の人たちがさまざまな相談に訪れる。
 旅行医学外来の開設には、シンガポールの日本人会診療所で3年間、働いた経験が下地にある。日本人の海外旅行者は増え続け、年間2000万人に達する勢いだが、旅先での危険には疎い傾向がある。「だれかがやらなければならない仕事だ」。そう感じた溝尾医長は帰国後、院長に掛け合い同外来を作った。
 毎年約400人の日本人が海外で重症になるという。うち約3割が心筋梗塞(こうそく)や脳卒中、1割が感染症とのデータもある。溝尾医長は「現地の情報や持病の診断書があれば、安心して旅行を楽しめるはず」と話している。【下桐実雅子、藤原尚美、根本毅】
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 ◇96年、5科を新たに認可−−院内表示、どんな診療科名でも自由
 病院の看板に掲げられる診療科名は医療法で37科に限られ、広告に規制がかけられている。診療科に加えるかどうかは厚生労働省の医道審議会専門委員会で審議され、96年、学会などから要望のあった24科のうち、アレルギー科、心療内科、リウマチ科など5科が新たに認められた。それ以降、専門委員会は開かれていない。
 新診療科の認定基準は、(1)学問領域としての確立(2)国民の需要が大きい(3)一般に分かりやすい(4)知識、技術の医師への普及・定着−−など。同省医政局総務課によると、国民が病院を選ぶ判断材料として、客観的かつ誤解を与えないことを重視しているという。
 一方、病院内の表示ではこの規制はかからず、どんな診療科名でも自由だ。96年の専門委員会で認められなかった「ペインクリニック」「糖尿病」などを掲げている病院もある。
(2005/5/16:毎日新聞)
地元建設業にとってのPFI、企画・提案力の強化が課題
 十日市場小学校整備のPFIや、権田坂三丁目用地活用事業のプロポーザルなど、4月に事業者が決まった横浜市の一連の民間活用事業で、地元建設業のグループが選定されなかったことに関して、市内の建設業界では今後の新たな事業での対応を慎重に見極めようとする空気が広がっている。十日市場小を事例に、地元企業にとってのPFIの課題を探った。
 十日市場小のPFIには7グループが応募、このうち地元が代表を務めるグループは4つだった。結果的に、大成建設のグループが事業者に決まった。
 事業者選定の方法は、入札価格や事業運営計画、建設・維持管理計画を総合的に評価して落札者を決定する総合評価一般競争入札。PFIで一般的に行われている方式だ。
 具体的にはまず、シックハウスや安全対策、設計・建設などに関する事業者の提案を百点満点で採点。この点数を入札価格で割って得られる数値によって落札者を決める。提案による得点が高いことと、入札価格が安いことで落札の可能性が高くなる。
 今回の審査で大成グループは、入札価格の安さでは第3位(27億3834万6669円)だった。しかし、提案の得点で97・2点という高得点を獲得し、落札者になった。
 入札価格の安さでは、第1位(25億7064万5994円)と第2位(25億9200万円)の地元グループが勝ったが、提案の得点は両者とも80点台。提案審査で敗北した格好だ。
 提案審査は「シックハウス対策の向上」や「設計・建設」など、あらかじめ設定された10項目で行われ、大成グループはこのうち5項目で満点を獲得、圧倒的な提案力を見せ付けた。
 大成グループの具体的な提案内容はどうだったのか。市によると、満点のシックハウス対策では、通常の換気設備に加え自然換気サッシを設置することや、工期短縮によって3カ月程度の換気期間を確保することなどが評価された。また、安全確保では、防犯カメラの追加設置や、各教室への非常ボタンの配置、地域ぐるみの防犯対策などが特色だという。
[提案審査は合議制]
 実際の提案審査の方法では、建築や法律など各分野の専門家である5人の審査員が話し合って点数を決める「合議制」が採られた。各審査員がそれぞれ点を付ける「持ち点審査方式」の方が客観性を保てそうだが、それぞれの審査員の専門を越えて審査項目が多方面にわたるPFIでは「合議制」のケースが多い。
 また、各項目の評価の基準については、入札説明書に添付された「落札者決定基準」の中で簡単に「評価の視点」が示されいる。しかし、詳細なチェックリストなどは使っていない。自由な提案を求める目的もあるからだ。
 地元建設業がPFIを受注するためには、価格面で努力する一方、審査員に訴えかける斬新かつ合理的な企画・提案力を強化していく必要がある。
[経営を圧迫する応募経費]
 一方、地元業界からは、PFIなどに応募する際の経費負担を課題として指摘する声も聞こえてくる。施設の設計があらかじめできていた今回の十日市場小の事業に応募するだけでも各グループは数千万円の負担を強いられたという。受注できないまま、応募を重ねていけば、「先行投資」はやがて経営を圧迫し、コスト面で努力する力も奪われる。
 横浜市の中田市長は民活事業での地元支援の工夫を地元業界に改めて約束しているが、応募の入口部分での負担軽減などからまず手を付けてもいいのではないか。
(2005/5/16:建通新聞・神奈川)
保土ケ谷高シックハウス 校舎全面補修へ
  横浜市保土ケ谷区川島町の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、660人)で生徒308人がシックハウス症候群とみられる症状を訴えていた問題で、県教委は14日、保護者らに対し、(1)原因となった校舎を全面補修する(2)全生徒を対象に臨時健康診断を行う、などの対応策を提示。保護者側も基本的に了承した。同校では6日から校内での授業が開けない事実上の休校状態が続いていたが、16日から再開する。
  2回目の保護者会となったこの日の会合には、約150人が出席した。
  県教委の阿久沢栄・学校教育担当部長が対応策として、シックハウスの原因とみられる2棟の校舎の雨漏り補修をやり直し、化学物質を吸収しているとみられるセメント部分や内装材をすべて撤去する工事内容を説明。総工費は3千万円といい、7月上旬に着工して約2カ月で終える予定という。
  さらに、今月26日と、工事後の9月に全生徒を対象とした臨時健康診断を実施するほか、化学物質濃度についての定期的な検査も行う方針を示した。生徒が通常使用する一般教室について化学物質の検査をした結果、いずれも文部科学省が定める基準値を下回ったことも明らかにした。
  そのうえで阿久沢部長は「異論がなければ授業を16日から再開したい」とはかった。
  保護者らからは「代替校舎を探すべきではないか」との質問が出たが、阿久沢部長は「空いている施設がない。全生徒が移動するのは難しい」と回答。また、「原因の究明はどうするのか」との質問には「まずは子どもたちの安全確保を最優先し、危険な物質を排出したい」と述べた。
  また、県職員だけでつくる対策検討委員会の構成についても保護者らから批判的な意見が出され、メンバーに専門家のほか、保護者代表も加えるよう検討する考えを県側は明らかにした。
  保護者からの質問は約2時間に及び、県教委は、授業再開について強い異論は出なかったとして、授業を再開する方針だ。
  説明会に先立ち、県教委は国立相模原病院の専門医による相談会も開き、生徒の健康相談に応じた。保護者に対し、同校は「不安なことがあれば医師やカウンセラーに相談して欲しい」と呼びかけた。
  ただ、県教委の説明に納得できない保護者もおり、説明会後に20人ほどの保護者らが「授業を再開して本当に大丈夫なのか」などと県教委側に詰め寄った。1年男子生徒の父親(47)は「シックハウス症候群はいったん過敏症になると、基準値以下の環境下でも吐き気などの症状を起こすという。まだ納得はできない」と話していた。
(2005/5/15:朝日新聞・神奈川)
同様記事 保土ケ谷高:校舎屋上の防水工事で異臭 体調不良訴え続出 /神奈川
 ◇シックハウス症候群の疑い−−知事、被害状況視察
 県立保土ケ谷高校(横浜市保土ケ谷区、寺崎和男校長、660人)で、校舎屋上の防水工事が原因でシックハウス症候群とみられる体調不良を訴える生徒が相次ぎ、松沢成文知事は20日、同校を訪れ、被害状況を視察した。生徒からは「工事直後から異臭がし、体調が悪くなった人もいた。早く改修してほしい」と切実な訴えがあった。
 ◇県教委、7月に改修工事
 県教委などによると、屋上の防水工事は昨年9〜10月に2棟で実施。工事終了後、うち1棟の直下の音楽室や書道室で異臭が発生、頭痛や目の痛みを訴える生徒や教師が出た。12月に両教室の使用を中止したが、今年4月下旬に、別棟でも異臭が発生、体調不良を訴える生徒が相次いだ。
 学校のアンケート調査で、4月下旬から5月初めにかけて、308人の生徒が何らかの体調不良を訴えたため、3日間の休校措置がとられた。また、教師2人がシックハウス症候群の疑いがあるとの診断を受けた。
 原因は防水工事に使われた有機溶剤が、コンクリートを通して下の教室の天井や壁に染みこんだと考えられる。4月28日の空気中の化学物質濃度調査では、音楽室内の個別練習室で、キシレンが文部科学省の基準値(1立方メートルあたり870マイクログラム)を上回る1000マイクログラムが検出された。県教委は7月上旬から約3000万円で天井や壁の撤去などの改修工事を行う。
 知事と生徒の懇談では、生徒から「音楽室で合唱中に気分が悪くなり、歌えなくなった部員もいた」「有機溶剤を扱う店に行くと、肌が荒れるようになった人がいる」との声が上がった。
 松沢知事は「対応が遅れ、混乱を招き申し訳ない。再発防止のため、原因究明に取り組み、学校だけでなく、県関連施設全般について、修復工事の材料や工法についてマニュアルを作りたい」と述べた。
(2005/5/21:毎日新聞・神奈川)
保土ケ谷高校シックハウス問題
  横浜市保土ケ谷区川島町の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、660人)で教職員や生徒が「シックハウス症候群」とみられる症状を訴えている問題で、学校が実施したアンケートで、体調不良を訴えている生徒が308人に上ることがわかった。同校では4月28日以降、教室内での授業がほとんど実施されていないが、12、13両日も休校とすることを決めた。
  アンケートは、4月下旬から体調不良を訴える生徒が相次いだため、2日に実施された。それによると、「頭痛」を感じた生徒が140人、「気持ちが悪い・吐き気」を感じた生徒が84人、「のどの痛み」が61人、「皮膚がかゆい」が49人などの結果だったという。
  昨年9月に雨漏り修理をした際に使われた有機溶剤が原因とみられているが、該当の校舎内から基準を超える有機化合物「キシレン」の数値が検出されていたことも明らかになった。県教委が4月28日に空気中の化学物質濃度を調査したところ、同校舎3階の音楽室から、文部科学省の基準値(1立方メートルあたり870マイクログラム)を上回る千マイクログラムが検出された。
  同校ではこの事態を受け、2日に全校集会を開き、それ以降も休校や遠足などで校舎内での授業はほとんど行われていない。
  同教委は調査の範囲をさらに広げている。同校は「検査結果などをみて、今後の対応を決めたい」として、臨時休校を13日まで延ばすことにしたという。
  同校では7日に約300人の保護者が出席した説明会が約6時間にわたって開かれ、対応が遅れたことについて県教委の担当者が謝罪した。
  県立保土ケ谷高校で「シックハウス症候群」とみられる被害が拡大している問題で、県教委は対応の遅れなどを保護者らに謝罪したものの、原因については「換気せずに閉め切った教室だから(基準を超える)高い数値が出た。きちんと換気すれば問題はない」との立場だ。だが、シックハウスが社会問題化して以降、東京都教委が化学物質濃度を国の基準値の半分以下に目標を定めるなど「対策先進自治体」も目立つのに比べ、県教委の対応の甘さを指摘する専門家も出始めている。
  シックハウス対策として、東京都教委がこうした目標値を設定したのは03年。埼玉県教委も同じ03年に、教室の床をワックスする際は夏休み期間に限る▽改修工事などではトルエンやホルムアルデヒドを含む塗料や接着剤は原則として使用禁止など具体策を盛り込んだ対策マニュアルを作っている。
  これに対し、県教委にはこうしたマニュアルはなく、保土ケ谷高校の問題発覚後の今年1月に、学校関係の工事を発注する際の施工指示書に「使用する材料はVOC(揮発性有機化合物)などに十分配慮する」という一文を加えた。
  また、県教委は4月27日に対策検討委員会の初会合を開いたが、委員10人全員が県職員。都立高校で同様の問題が起きた際には、こうした対策委員会には外部の建築士や化学物質の専門家も加わった。
  県教委は「多感な時期の生徒たちなので、心理的な影響もあるのではないか」とも説明するが、化学物質過敏症支援センター事務局長の網代太郎さんは「専門医でも診断が難しいシックハウスや過敏症を、どこまで理解しているのか」と県教委の姿勢に疑問を投げかける。
  シックハウス問題に詳しい横浜市中区の1級建築士の尾竹一男さんも「基準値を超える数値が出た以上、一刻も早く専門医による診断を受けさせるべきではないか」と話している。
■キーワード
  シックハウス 建材や内装などに含まれるホルムアルデヒド、キシレンやトルエンなどの有機化合物が空気中に出て、頭痛や吐き気、目の痛みなどの健康障害を引き起こす。症状は個人差が大きい。化学物質に長くさらされるなどすると、微量の化学物質にも反応する化学物質過敏症になり、日常生活に支障をきたすケースもある。
(2005/5/12:朝日新聞・神奈川)
シックハウス対策に効果 法改正後の新築、化学物質減る
 シックハウス対策を盛り込んだ03年7月の建築基準法改正後、新築住宅の室内空気中から、国の指針値を超える濃度の化学物質はほとんど検出されなくなっていることが、国土交通省の昨年度の実態調査でわかった。ホルムアルデヒドの濃度超過があった住宅は1.3%、トルエンは0.7%で、00年度調査の28.7%、13.6%と比べて激減。同省は「法改正の効果が数字に表れた」と分析している。
 調査は、新築1年以内の住宅を公募して00年度から毎年実施。昨年度は法改正前に着工した1780軒と改正後着工の1349軒で、シックハウス症候群の原因とされる物質6種類を調べた。
 法改正で内装材への使用が制限されたホルムアルデヒドについては、改正後着工分の平均濃度は0.026ppmで、厚生労働省の指針値(0.08ppm)を大幅に下回った。トルエンは指針値0.07ppmに対し0.004ppmだった。
 キシレンも指針値を超えたのは0.3%、スチレンは0.1%。エチルベンゼンはすべて指針値を下回った。
 00年度の調査では、ホルムアルデヒドの平均濃度は指針値とほぼ同じ0.073ppm、トルエンは0.041ppmだった。
 今回の調査結果について、国土交通省建築指導課は「建築基準法の改正によって、すべての新築住宅に24時間換気システムを義務づけた効果が大きい」と分析している。
 今年度の調査はマンションを重点に調べる方針。改善の傾向が続けば、法改正時に国会で付帯決議された将来の規制物質の追加は見送るとみられる。
(2005/5/11:朝日新聞)
同記事 ホルム規制後も1.3%が指針値超過、国交省の住宅実態調査
 国土交通省は5月10日、室内空気中の化学物質濃度の実態調査について、2004年度の調査結果を速報ベースで発表した。今回の調査では、2003月7月の建築基準法改正でシックハウス対策を施した住宅が、初めて調査の対象となった。
 規制対象となったホルムアルデヒドの平均室内濃度は、2003年7月以降に着工した1349戸で0.026ppmと、前回調査の0.040ppmから大幅に低下した。ただし、1.3%に当たる18戸が厚生労働省の定めた指針値である0.08ppmを上回った。理由として、これらの住宅では24時間換気設備が運転されなかった、気温が高かったなどの点を挙げている。2003年6月以前に着工した1780戸でも、平均濃度は0.028ppmと、7月以降着工並みに低かった。指針値を超過したのは1.6%に当たる29戸だった。
(2005/5/11:日経アーキテクチャー)
防げ シックカー症候群
材料や接着剤変更 清浄フィルター装備
 誰もがあこがれるピカピカの新車。しかし、車内の空気も新鮮で快適とは限らない。新築住宅で問題になった「シックハウス症候群」と同様に、車内の装飾品や接着剤に含まれる化学物質で鼻がツンとしたり、目がチカチカして、なかには新車には乗れない人もいるのだ。(高田 真之)
目標値の30倍
 揮発性が高く、溶剤に使われるトルエンなどの化学物質(揮発性有機化合物=VOC)を吸うと、鼻やのどの痛み、頭痛、めまい、集中力の減退といった症状が出ることがある。住宅の建材や接着剤が原因となる場合をシックハウス症候群という。
 厚生労働省は、1997年から2002年にかけて、住宅で発生するVOC13種類について、一生吸い続けても影響が出ない量を室内濃度指針値として公表した。自動車や鉄道車両内も「指針値の適用を考慮すべきだ」と指摘している。
 車内のシートの表皮やカーペット、天井材など、内装のいたる所にはVOCが使用されている。大阪府立公衆衛生研究所が2000年に公表した調査では、納車直後の国産ワゴン車から、厚労省の総VOC暫定目標値(1立方メートル当たり400マイクロ・グラム)の30倍の濃度のVOCが検出された。東京労災病院シックハウス科によると「頭痛がひどくなるので自動車に乗れない」と訴えるシックハウス症候群患者も珍しくないという。
VOC半減
 各メーカーも独自にVOCの低減目標値を定め、さまざまな取り組みを進めている。
 トヨタは、すべての部材のVOC発生量を細かく計算した上で、03年12月に発売した高級乗用車「クラウン」から、シート表皮など10部品をVOCの発生しない材料や接着剤に変えた。日産も部材などを見直し、04年10月発売の「フーガ」では、車内のアセトアルデヒドなどの濃度を、従来の半分程度にした。

 発生を減らすだけでなく、発生したVOCを取り除く取り組みも進んでいる。マツダは99年4月にVOC除去剤を加えた空気清浄フィルターを発表し、全車にオプション追加できるようにした。三菱自動車も一部車種にホルムアルデヒドなどを吸収する天井材を使用している。ホンダはすべての車種で溶剤を使用しない窓ガラス用接着剤を採用し、4月に発売した「エアウェイブ」にはVOCを吸収するエアコンフィルターを搭載した。
解決2年後?
 日本自動車工業会は今年2月、厚労省の指針を車室内にも適用することを決めた。07年度以降に発売される乗用車では、住宅並みの清浄な快適空間が求められることになる。ただ、症状が出るまで対策の重要性に気づかない人も多く、各社の新型車のカタログでも“シックカー症候群”対策の記述はまだ少ない。
 シックハウス症候群に詳しい中井里史・横浜国立大教授(環境疫学)は「取り組みの第一歩としてはいい」と業界の対応を評価しつつ、「既に症状の出ている患者もクルマを利用できるよう、さらに濃度を低減する努力を続けてほしい」と要望している。
(2005/5/9:読売新聞)
生徒ら100人がシックスクール症状、保土ケ谷高
 横浜市保土ケ谷区川島町の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、660人)で2日、教職員と生徒約100人が、建材などに含まれる化学物質の影響で頭痛や吐き気などを引き起こす「シックハウス症候群」と見られる症状を訴えていることが分かった。ふらつきや目に痛みを生じた教師2人が近くの病院で治療を受けた。
 登校直後から体調不良を訴える生徒が相次いだため、授業は行わず、全生徒を帰宅させた。同校によると、昨年9月に雨漏り補修工事をした際に使われた有機溶剤が原因とみられる。3月にも10人近い教職員や生徒に被害があった。
 刺激臭のある部分は防火シャッターを閉めるなどして対応していたが、ここ数日の気温の上昇に伴い、被害が広がったとみられている。
(2005/5/3:朝日新聞)
同記事 高校でシックハウス症状 生徒ら数十人、頭痛など
 横浜市保土ケ谷区の県立保土ケ谷高校(寺崎和男校長、生徒660人)で、生徒や教職員数十人が4月下旬から、頭痛や吐き気などシックハウス症候群とみられる症状を訴えていることが3日、分かった。
 同校によると、昨年9月の校舎の雨漏り防止工事で使われた有機溶剤が原因とみられる。
 昨年末から、工事場所の近くを通った生徒らが頭痛などを訴えるようになり、今年3月にも約10人が症状を訴えたという。同校は「気温が上がり、症状を訴える人が増えたのではないか」としている。
 廊下の一部を板で仕切るなどしても改善されなかったため、同校は6日を臨時休校にすることを決め、対策を検討している。
(2005/5/3:河北新報社)
同記事 校舎の防水工事が原因でシックハウス症候群に
 横浜市の神奈川県立保土ケ谷高校で、昨年秋から教職員や生徒が頭痛や吐き気などシックハウス症候群と見られる症状を訴えていることが明らかになった。教師2人が病院で治療を受けた。学校が実施したアンケートによると300人を超える生徒が体調不良を訴えた。ただし、これらが化学物質が原因であるかどうかは特定できていないという。同校は5月6日から休校にするなどして、教室内での授業を避けた。5月16日から、臭気の出た場所から離れた教室を使うなどして、通常通りの授業を再開した。
 神奈川県財務課によれば、雨漏り防止のために行った屋上のウレタン塗膜防水工事が原因だという。化学物質がコンクリートのクラックなどに浸透して下の教室に流れ込んだ。
(2005/5/22:日経BP)
森とむすぶ ことしの森林林業白書から 『保護・育成』から『活用』へ
 ことしの森林林業白書は「我(わ)が国の森林は、『伐(き)らないで守る時代』、『植えて回復する時代』を経て、『成長した森林を活(い)かす時代』」と冒頭に記している。そんな“木使いの時代”の基礎知識を、白書から拾ってみた。 (飯尾 歩)
■現況
 森林の面積は、一九五二年に二千四百七十四万五千ヘクタールだったのに対し、二〇〇二年には二千五百十二万千ヘクタールとほぼ横ばい。一方、一ヘクタール当たりの森林蓄積(樹木の体積)は、五二年の七十立方メートルに対し、〇二年には百六十一立方メートルまで増えている。
 これは、第二次大戦中から敗戦直後にかけての乱伐、荒廃で、「伐採跡地」や「荒野」に分類される“はげ山”が、〇二年より二百万ヘクタールほど多かったことなどによる。
 その後植林が進んだことにより、人工林面積の約二割は、一般的に伐採が可能な林齢四十六年生以上になり、木材資源として“旬”にさしかかる。
■需要
 〇三年の木材(用材)自給率はは18・5%と、対前年比0・3ポイント増えた。
 輸入量が1・4ポイント減ったのに対し、国内生産量が十五年ぶりに0・5ポイント増加した。
 これは、シックハウス対策のための建築基準法改正により、同年七月からその原因とされるホルムアルデヒド(接着剤の成分)放散量の表示が義務化。合板の主な輸入相手国であるインドネシアの対応が遅れる一方で、合板の原料としてスギなど国産針葉樹材の利用が増えたことなどによる。
 林野庁は「自給率の向上が一過性のものなのか、今後もその傾向が続くのかは分からない。ただ、二〇一〇年の国産材供給量の目標を二千五百万立方メートルとしているので、自給率というより、十五年ぶりに増加した国産材供給量(千六百十五万立方メートル)を引き続き増やせるよう努力したい」としている。
■活用
 森林面積の六割は私有林であり、森林所有者の施業意欲を向上させるには、林業の採算性が不可欠。
 昨年七月に農水省が実施した「林家の森林施業に関する意向調査」によると、森林所有者の69%が「木材の生産を考えている」といい、74%が「間伐を実施したい」としている。
 林野庁が〇三年度から始めた「緑の雇用担い手対策事業」の効果で、同年度の新規就労者は四千三百三十四人と、対前年比で倍増した。
 しかし、一九九六年六月から三年間の新規就労者の、〇三年七月時点での定着率は55%にすぎない。この間の新規就業者中、六十五歳以上が占める割合は15%に上っている。
■京都議定書
 地球温暖化防止のための京都議定書で、日本は6%の温室効果ガス削減分中3・9%を森林吸収量に頼っているが、現状の森林整備量では、目標を大幅に下回り、約束期間(一二年まで)内の達成は不可能だ。
 前田直登林野庁長官は「白書では、人工林資源が成熟しつつある中、森林の多面的機能維持には、林業、山村が活力を維持し、国民の支援を受けつつ保全、整備が続けられる必要があることを指摘した」と話している。
(2005/5/2:東京新聞)
秋田産珪藻土 放射線遮へい材に利用へ
 秋田県内で大量に産出し、飲料品のろ過などに用いられている珪藻(けいそう)土に、コンクリートの約2倍の放射線遮へい性があることを発見したと、秋田大工学資源学部(地球科学)の村上英樹講師(41)が21日発表した。8月に東京で開かれる国際粘土学会で成果を報告する予定。
 遮へい材としての開発手法については、珪藻土採掘・販売の中央シリカ(北秋田市)、独立行政法人海上技術安全研究所(東京)と共同で特許を出願中。原子力施設などへ利用が考えられている。
 村上講師によると、珪藻土の表面には多量の水素、微量のリチウムやホウ素など、中性子遮へい効果の高い元素が存在し、同じ重さのコンクリートに比べ約2倍の中性子遮へい性がある。表面の水素は、約700度まで存在する耐熱性も判明したという。
 村上講師は「秋田産の珪藻土は粘土鉱物の含有量が少なく純度が高い。大量に産出するのでコストも安い。ジルコニウムやハフニウムの元素を加えると、遮へい性や耐熱性が増すことも分かった」と話している。
 遮へい材は、放射性廃棄物移送用貯蔵容器、原子力施設や核燃料サイクル施設、核融合実験施設などでの利用が考えられるという。
 研究開発は、秋田県の外郭団体、財団法人あきた企業活性化センター(秋田市)が産学連携事業として支援した。
 珪藻土は、植物性プランクトンの死骸(しがい)の堆積(たいせき)物。能登半島など日本海側に多く、秋田県内では北秋田市を中心に数百万トン以上の埋蔵量があるとみられる。物質の表面積が大きいため、一般的にはビールなど飲料品のろ過材、シックハウス症候群対策の新建材などとして利用されている。
(2005/04/22:河北新報)
シックハウスマンション提訴
 購入した新築マンションで「シックハウス」症候群を発症したとして仙台市内の女性らがマンションを販売した業者におよそ4600万円の損害賠償を求める訴えをきょう仙台地方裁判所に起こしました。訴えを起こしたのは黒川郡内の36歳の女性と5歳の長女です。訴えによりますとこの親子は99年に泉区内の新築マンションを購入しましたが入居後数ヶ月で頭痛や倦怠感などのシックハウス症候群を発症したということです。シックハウス症候群は新築や改装後の住宅で頭痛やのどの痛みなどの症状がでる健康障害で建材などからでる化学物質が原因と考えられています。訴えの中で原告側は部屋からは厚生労働省の定める基準値を超える化学物質が検出されているとして販売した不動産業者に対しこれまで通り仕事をこなせなくなったことによる損害や、治療費などあわせて4600万円の支払いを求めています。訴えに対し業者側は「症状がシックハウス症候群なのか分からない上、シックハウスだとしてもマンションが原因とは考えられない」として全面的に争う構えです。
(2005/04/21:東北放送)
追跡京都2005:学校薬剤師配置義務 幼稚園で“形骸化” /京都
 ◇府内の公立で3割、私立は7割が不在−−「シックスクール」対策急務
 教育施設の環境を保つため法律で配置が義務づけられている「学校薬剤師」を、府内の公立幼稚園72園のうち3割、私立156園のうち7割で置いていないことが毎日新聞の調べで分かった。配置義務を認識していない自治体や幼稚園もあった。身の回りの化学物質が多様化するなか近年、児童らが校舎の建材などが含む有害物質で体調を崩す「シックスクール」も問題化している。学校薬剤師制度が形骸(けいがい)化している側面があり、実効性ある有害物質対策が急務だ。
 ◆公害時代に制度化
 学校薬剤師は、学校保健法などで「置くものとする」とされ、薬剤師資格を持つ人を任命する。身分は原則として非常勤職員で、置かなくても罰則はない。高度成長による公害が社会問題化していた1961年、学校医、学校歯科医とともに制度化された。
 当初は「学校で良質な飲料水を」との目的で、化学物質に詳しい専門家である薬剤師が水質検査などを行った。現在は国のガイドラインに従い、教室の明るさや二酸化炭素濃度などの空気清浄度、飲料水やプールの塩素濃度など15項目を定期的に調べ、校園長らに指導、助言する。府内でも小学校では大半で配置している。
 ◆「知らなかった」
 公立幼稚園で薬剤師が不在だったのは5市町20園。各教委の担当者は「幼稚園にも必要とは知らなかった」(綾部市)、「経緯は不明だがずっと置いていない」(久御山町)と説明。福知山市教委では92年に配置が検討されたが、財政難を理由に見送られたという。
 現場の幼稚園も同様だ。京都市内のある私立幼稚園は、水質検査は民間業者に委託しているが、室内照度や空気の測定はしていない。園長は「多くの園が薬剤師を雇っていない。法律の規定は知らないし、行政の指導もない」と話す。
 ◆法律と現実のかい離
 法的義務との認識が薄い現状に、文部科学省学校健康教育課は「問題は幼稚園を所管する府や府教委の意識」などと、あくまで行政指導による法の順守を求めるスタンスだ。しかし、府側は法律と実態が合わない現状を指摘する。
 私立幼稚園を担当する府文教課は3年に1回程度、監査を行う際に薬剤師の不在が分かれば、配置を指導しているという。同課の担当者は「昔は井戸水の安全性の問題があった。今は上水道が発達したうえ、検査は専門の業者に頼んだ方が早い場合もある。配置には人件費もかかり、強く言えない」と本音を漏らす。
 ◆専門家が必要
 幼稚園関係者の中には「環境衛生面は職員が自己点検し自信を持っている」との声もある。しかし、京都市内の小学校で学校薬剤師を務め、月1度担当校を訪れている女性は「蛍光灯が切れて照度が足りなくても、言われないと直さないもの。薬物や紫外線の有害性について子どもに話す機会もある。薬剤師の存在意義は大きい」と話し、外部の専門家がかかわる重要性を訴える。
 長山淳哉・九州大医学部助教授(環境衛生学)は「幼稚園は一般的に小規模で、医師と違って薬剤師は、検診などで子どもと直接接することもない」と配置が進まない要因を推測。「環境衛生面について責任の所在がどこにもないことが問題」と指摘する。
 ◆制度見直し望む声も
 90年代以降、問題化した「シックハウス症候群」。建物に使われている新しい建材、床ワックスや殺虫剤などが含むホルムアルデヒドといった有害物質のため、過敏な居住者は頭痛などの症状を起こす。学校では子どもが集団的に発症し、「シックスクール」という言葉が生まれた。
 「学校薬剤師」制度について大阪のNPO「シックハウスを考える会」(本部・大阪府)の上原裕之理事長は「薬剤師の位置づけがあいまいだ。保健所などの活用も考えた方がいい」と提言する。現在は有害物質の検出技術も発達し、民間も含めて環境測定機関も多い。また、「化学物質問題市民研究会」(東京)の安間節子事務局長は「教室の明るさなど旧態依然としたチェックよりも、健康を害する新たな化学物質への対策を保護者を交じえて話し合うシステムが必要だ」と制度見直しを訴える。
 子どもたちの身の回りは、多様な化学物質であふれている。「被害が出てからでは遅い」。関係者の共通する声だ。
(2005/4/18:毎日新聞・京都)
迎賓館の農薬散布悩まし 近くの過敏症の中3通学に支障
 国賓のもてなしに使われる東京・元赤坂の「迎賓館」での農薬散布が原因で、近くの区立中学校に通う化学物質過敏症の3年生男子生徒(14)の通学に支障がでている。散布を事前に知らせてもらうが、多い時はひと月の半分が登校できない。農林水産省は03年秋、学校などの周辺での散布を極力避けるよう各省庁に通知したが、迎賓館を所管する内閣府には、想定外で通知していなかった。生徒の保護者らは迎賓館に見直しを要望している。
 男子生徒は小学4年の時に有機リン系の殺虫剤に反応して頭痛や思考力低下などの症状が出た。北里大学病院で化学物質過敏症の診断を受けた。
 区立中学校に入学したのは03年春。母親(46)はその直前、中学校と150メートルほどしか離れていない迎賓館の敷地で農薬の定期散布があることを知り、散布の事前通知を区教委を通じて迎賓館に依頼し、対応してもらうことになった。
 04年度の散布は11回実施され、うち4回は1学期末試験のある6月に集中した。発症を避けるために散布から3〜4日は休むので、登校できなかったのはのべ半月にのぼった。さらに7月2日の試験最終日が散布予定日と重なった。生徒側は日程変更を求め、散布は4日後に延期された。
 患者団体などは今年3月末、迎賓館長と内閣官房長官に散布回数削減などの要望書を提出した。
 迎賓館によると、敷地面積は約11万8000平方メートル。松400本弱は特に貴重で、害虫防除のために農薬散布は欠かせないという。また、芝生地の除草も含め毎年度9回程度、散布している。
 農水省が03年秋に出した通知では、(1)住宅地での定期的な農薬散布を避ける(2)やむをえず散布する際、近くに学校などがある場合は、学校や保護者らに知らせ、子どもの健康被害防止を徹底する、などを求めている。
 通知は文部科学省や環境省など、生活圏での農薬散布と関係すると考えた省庁だけに出したため、内閣府は含まれていなかった。迎賓館へは昨年夏、通知の趣旨に沿った対応を求めている。周辺の街路樹や公園では散布を中止、または以前からしていない。
 中学校に隣接する公園を管理する新宿区は、男子生徒の入学を機に樹木管理に農薬使用を中止した。周辺街路樹を管理する東京都や国土交通省、近くの上智大学でも、農薬散布は行っていない。
 迎賓館の児島公孝庶務課長は「迎賓館の散布で発症するのかどうかや、散布による休学日数などを把握した上で、専門家の意見なども聞きながら、できる努力はしたい」としている。
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〈キーワード:化学物質過敏症〉 一度に大量の化学物質に接したり、微量でも長期間接したりすることで発症するとされるが、その仕組みは解明されていない。一度発症すると、量の多少に関係なく、接触する度に頭痛や昏睡(こんすい)、どうきや思考力の低下などさまざまな症状がでるため、患者は化学物質を避け続けなければならない。日本での患者数は把握されていないが、米国では10人に約1人とも言われており、同程度いるとみる専門家もいる。
(2005/4/16:朝日新聞)
6月に「シックハウス対策アドバイザー」講座 NPO生活環境協会
 NPO法人 生活環境協会は、同協会主催の「シックハウスアドバイザー」養成講座を開催する。5回目となる次回の実践講座は、17年6月11日(土)の12:30〜。
 横浜国大院・中井里史氏の「旭川・化学物質過敏症 一時転地住宅の経緯とその取り組み」をはじめとする、4人の講師陣による勉強会後、情報交換会。参加費5000円。申し込みは【FAX】0426−79−3560、またはメールconsult@seikatsukankyo.or.jpにて。
(2005/04/14:新建ハウジング)
シックハウス症候群 目・のどが痛い、鼻水…花粉症と違うの?
 進学や転勤のシーズン。新居住まいを始めた人にとっては心機一転、大切な時期なのに、家にいて体調不良を訴えるケースが後を絶たない。そんな時は、「シックハウス症候群」を疑ってみては。
●保健所で相談、有害物質の測定を
 「新築マンションに入居したら、頭がふらふらしたことがあって…」
 神戸市兵庫区の設計士竹國文悟さん(36)は昨年、同市東灘区の40代女性から「新築する自宅にシックハウス対策をしてほしい」と頼まれた。
 そこで、北海道の女性設計士と知恵を出し合い、木造2階建ての家を完成させた。壁紙や床材はすべて天然素材。水道管をつなぐボンドにも気を使った。完工後の検査で、シックハウスの主因といわれる化学物質ホルムアルデヒドの値がゼロと出て、ほっとした。
 新築や改装直後の家に入居した人が悩まされるのが「シックハウス症候群」。建材に含まれる化学物質を吸い込み、目、鼻、のどなどの粘膜に刺激症状が出る。
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 県立生活科学研究所が00年、県内460世帯を対象に行ったアンケートでは、回答者の28%が「住宅建材から出たと思われる化学物質で健康被害を受けたことがある」と回答。症状は多い順に「目が痛い」「鼻水が出る」「頭が痛い」「のどが痛い」などだった。
 神戸市は00年から、市内5カ所の衛生監視事務所(保健所)でシックハウスの相談を受け付けている。相談件数は年間約80件。うち約9割が室内の化学物質量の簡易測定を希望する。3〜4カ所でホルムアルデヒドやパラジクロロベンゼン、トルエンの値を計り、国の指針値を超えた場合、換気を指導している。担当者は「指針値以下でも症状が出る人もいる。敏感な人は建材のほか、家具、防カビ剤、殺虫剤などにも注意が必要です」と話す。
 03年7月、建築基準法が改正され、ホルムアルデヒドの発散が速い建材と、防蟻剤のクロルピリホスの使用が禁止された。こうした中、建築業者の取り組みも加速している。西宮市の「無添加住宅」は「食べても害がない」を合言葉に、米のりやしっくい、にかわといった自然素材だけを使った住宅を二百数十戸手がけている。
 尼崎市の関西労災病院は昨年10月、西日本で初めて院内にシックハウスの診断に必要なクリーンルームを設置し、「化学物質過敏症診療科」を開設した。5カ月間で36人が来院。自宅を改装するなど対策を講じても、職場で症状が再発し、退職したケースもあった。
  *  * 
 神戸市内の建築士らでつくる「健康な住まいを考える会」の野崎瑠美代表は「法改正後、ホルムアルデヒドが原因のシックハウス症候群は減りつつあるが、規制対象外の化学物質で症状が出る人が少なくない」と言う。国土交通省は、トルエンとキシレンについて一定の規制を設けることを検討中だ。
 ■シックハウス症候群かも?と思ったら…
 ◇対策の相談は「神戸市すまいの安心支援センター」(078・222・0005)
 ◇改築や民事訴訟を検討している人は「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」
                        (03・3556・5147)
 ◇身体症状を改善したい人は「関西労災病院シックハウス診療科」 
                        (06・6416・1221、予約制)
(2005/4/12:朝日新聞・兵庫「ひょうご健康のページ」4/3)
消毒剤被害:頭痛など8人労災認定 厚労省が基準濃度設定
 消毒薬として広く使われてきた化学物質のグルタルアルデヒドを吸い込むなどして皮膚炎や頭痛などを訴える医療従事者が相次ぎ、99年以降、8人が労災認定を受けていたことが分かった。事態を重くみた厚生労働省は、健康被害防止のため空気中の管理基準濃度を初めて設定し、全国の労働局に通達した。同物質が原因で労災認定された人の中には、「化学物質過敏症」になる人もいて対応の遅れが指摘されていた。
 グルタルアルデヒドは、シックハウス症候群の原因物質として規制されているホルムアルデヒドと同じアルデヒド類。優れた殺菌効果があり、内視鏡や、手術、歯科医療機器の消毒に使われてきた。ところが、日本消化器内視鏡技師会のアンケートでは消毒に携わる医療従事者の6割以上がグルタルアルデヒドの副作用を訴えていた。
 厚労省によると、99年以降、皮膚炎や、手などの痛みやかゆみ、気道粘膜損傷、微熱、食欲不振などになった8人が労災認定された。これを受け、厚労省は専門家の検討委員会を設けて対策を検討してきた。
 通達ではグルタルアルデヒドの作業管理基準濃度を0.05ppmと設定した。これを超えた場合は、呼吸用保護具などを装着し、濃度を低く抑えるため、代替物質への変更や、自動洗浄機の導入、局所排気装置の設置などで、再度測定することとした。異常がみられた人には就業場所を変更するなどして、物質の有害作用などについて教育を行うなどとしている。
 英政府は99年に濃度基準値を0.05ppmとし、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)も同濃度を勧告値としていた。
 ▽市民団体「住まいの科学情報センター」(奈良県生駒市)の東賢一代表の話 化学物質の多様化と量的拡大が進む中で、医療機関などの事業者が有害性の高い物質を十分に管理できていない一つの表れだと思う。他の物質も安全教育と、環境の管理が大切だ。
(2005/4/9:毎日新聞)
業者1860万円支払い和解 「シックハウス」訴訟
 自宅の防水工事で、手足がしびれるなどの症状が出たとして、神戸市の本田仁義さん(60)、紀美代さん(59)夫妻が「体調を崩したのは工事に使われた化学物質が原因」などと、建築会社など三社に損害賠償を求めた訴訟は六日、神戸地裁(紙浦健二裁判長)で、三社が和解金約千八百六十万円を支払うことで和解が成立した。
 和解金には建物の評価額の六割にあたる約千五百万円の算定に加え、夫婦への慰謝料百万円が盛り込まれた。
 訴状などによると、本田さんは一九九六年六月、同市長田区内の土地と建物を購入し、入居。約三カ月後からかび臭いにおいがしたり、壁面に染みができたため、九七年八月に防水・防腐工事を施した。約一カ月後、紀美代さんが足腰が立たず、下半身まひの状態となり入院。仁義さんも視力が急速に落ち、一時は声帯がまひした。
 化学物質による健康被害の専門治療を行う北里大学病院での診断を受けたところ、化学物質過敏症による中枢神経機能障害と判明。一九九九年に提訴に踏み切った。
 弁論の中で本田さん夫婦は「夫婦ともに健康だったのに、防水工事後に発症した。使われた有機溶剤や防腐剤が原因と考えられる」と訴えた。
 提訴から約六年が経過。社会的にシックハウス症候群や化学物質過敏症の認知は進み、二〇〇三年には予防対策を含んだ改正建築基準法が施行している。
 今もつえを使って生活する紀美代さんは「長く、つらい六年間だった。和解という形になったが、私たちの訴訟が同様の被害に遭う人の励みになってほしい」と話している。
(2005/4/7:神戸新聞)
ポスターで香料自粛啓発 岐阜市が市庁舎内などに掲示
 「化学物質過敏症」への理解を広めようと、岐阜市は、香料の使用自粛を呼び掛けるポスターを市役所庁舎内などに掲示した。
 ポスターには「香料(香水・整髪料など)自粛のお願い」として、香料などがアレルギー症状やぜんそくを誘発することがあることを指摘。化学物質過敏症についても説明している。
 市役所南庁舎では、入り口の自動ドアや庁舎内の掲示板などに張られ、気づいた職員がポスターを読む姿が見られた。市関連の公共施設すべてで四月中に掲示する予定で、すでに市保健所、市立図書館、市内の小中学校などには張られている。
 市保健所環境保健室は「分煙などは進んできたが、香料でも被害に遭う人がいることはあまり知られていない。そんな人が近くにいたら、ぜひ配慮をお願いしたい」と話していた。
(2005/4/6:中日新聞・岐阜)
福井市の本郷小学校で開校式 新たな歴史の第一歩
   〜上郷小と下郷小を統合 中間地点に新校舎〜
 過疎や少子化で児童数が減少している福井市の本郷(ほんごう)地区に、2つの小学校を統合した本郷小学校が開校し、新たな歴史の第一歩を踏み出しました。
 本郷小学校は上郷(かみごう)小学校と下郷(しもごう)小学校を統合したもので、福井市が13億円をかけて、それぞれの学校のほぼ中間地点の高台に、鉄筋コンクリート3階建ての校舎を建設しました。
 校舎の外観はシンボルとなる時計台や瓦ぶき屋根など、明治時代の学校建築のデザインを取り入れています。
 またそれぞれの教室と廊下との仕切りを無くしてスペースを広くしたほか、床をはじめ階段や腰板などに天然木をふんだんに使い、いわゆるシックハウス症候群への対策も徹底しているということです。
 きょうは開校式があり、この春から新しい校舎に通う児童45人や地元の人たちが出席し、新しい校歌を歌うなどして開校を祝いました。
(2005/4/3:福井放送)
シックハウスの女性に労災認定 横須賀労基署
 新築の職場で発生した化学物質ホルムアルデヒドが原因でシックハウス症候群になったとして、環境省所管の「地球環境戦略研究機関」(葉山町)の元契約職員の女性(32)=長野県在住=が休業補償を求めた労災申請について、横須賀労働基準監督署は二十五日までに、業務との因果関係を認め、労災認定した。
 厚生労働省によると、シックハウス症候群の労災認定は、これまで北海道、大阪、愛媛など全国で六件あるが、労災申請を支援した神奈川労災職業病センターは「新築の建物での認定は初めて」としている。
 認定の理由は、女性の職場にホルムアルデヒドが存在したことや他の原因がないこと、複数の職員が症状を訴えていたことなどがあったとみられる。
 同センターなどによると、女性は一九九九年十月から研究秘書として勤務。研究機関が移転した二〇〇二年六月ごろから吐き気や頭痛、不眠が始まり、同十月、シックハウス症候群と診断され〇三年一月から休業。〇四年三月、契約期間満了を理由に契約を打ち切られた。
(2005/3/26:中日新聞)
  →●この記事の関連資料は→シックハウス関連各種資料にて(クリック)
同記事 労災:シックハウスの女性が認定−−地球環境戦略研、30代の元職員/神奈川
 環境省所管の財団法人「地球環境戦略研究機関」(葉山町)で働き、シックハウス症候群と診断された30代の元女性職員について、横須賀労働基準監督署は労災と認定した。シックハウス症候群による労災認定は全国的にも珍しい。
 女性は02年6月に新しい研究所に引っ越した直後に、めまいや頭痛、不眠などの症状に悩まされ、同10月にシックハウス症候群と診断された。03年1月から休職し、04年3月で雇用契約が満期を迎えたが、体調が回復せず、更新できなかった。女性のほかにも、同時期に二十数人がめまいや吐き気を訴えた。
 同労基署は女性が業務に伴い化学物質のホルムアルデヒドなどにさらされて発症したと認定、休業補償の支給を決めた。
(2005/5/20:毎日新聞・神奈川)