シックハウス関連各種報道情報 (2005年第1四半期:1〜3月)

<報道情報>  2005(平成17)年第1四半期
シックハウスの女性に労災認定 横須賀労基署
 新築の職場で発生した化学物質ホルムアルデヒドが原因でシックハウス症候群になったとして、環境省所管の「地球環境戦略研究機関」(葉山町)の元契約職員の女性(32)=長野県在住=が休業補償を求めた労災申請について、横須賀労働基準監督署は二十五日までに、業務との因果関係を認め、労災認定した。
 厚生労働省によると、シックハウス症候群の労災認定は、これまで北海道、大阪、愛媛など全国で六件あるが、労災申請を支援した神奈川労災職業病センターは「新築の建物での認定は初めて」としている。
 認定の理由は、女性の職場にホルムアルデヒドが存在したことや他の原因がないこと、複数の職員が症状を訴えていたことなどがあったとみられる。
 同センターなどによると、女性は一九九九年十月から研究秘書として勤務。研究機関が移転した二〇〇二年六月ごろから吐き気や頭痛、不眠が始まり、同十月、シックハウス症候群と診断され〇三年一月から休業。〇四年三月、契約期間満了を理由に契約を打ち切られた。
(2005/3/26:中日新聞)
  →●この記事の関連資料は→シックハウス関連各種資料にて(クリック)
同記事 労災:シックハウスの女性が認定−−地球環境戦略研、30代の元職員/神奈川
 環境省所管の財団法人「地球環境戦略研究機関」(葉山町)で働き、シックハウス症候群と診断された30代の元女性職員について、横須賀労働基準監督署は労災と認定した。シックハウス症候群による労災認定は全国的にも珍しい。
 女性は02年6月に新しい研究所に引っ越した直後に、めまいや頭痛、不眠などの症状に悩まされ、同10月にシックハウス症候群と診断された。03年1月から休職し、04年3月で雇用契約が満期を迎えたが、体調が回復せず、更新できなかった。女性のほかにも、同時期に二十数人がめまいや吐き気を訴えた。
 同労基署は女性が業務に伴い化学物質のホルムアルデヒドなどにさらされて発症したと認定、休業補償の支給を決めた。
(2005/5/20:毎日新聞・神奈川)
産廃撤去巡り深い溝
 国内有数規模の約67万立方メートルの産業廃棄物が不法投棄された村田町竹の内地区の産業廃棄物処分場をめぐり、対応策の検討が大詰めを迎えている。地元住民や学識経験者らで構成する検討委員会が26日、具体策を話し合うものの、「廃棄物の全量撤去以外に解決策はない」と主張する地元住民に対し、県は「全量撤去は困難」としており、双方の溝は依然として深い。(藤山圭、田中美保)
●苦悩
  「生後2週間の赤ちゃんが、鼻水を流しっぱなしだったんですよ。それを分かってください」。19日に県が地元住民を対象に開いた説明会で、高山美津子さん(57)が声を震わせた。
  かつて高山さんら家族6人は、処分場から約150メートル離れた場所に住んでいた。家の前の道路は毎朝、マスクをした運転手が乗る大型トラックが処分場へと列をなし、粉じんを舞い上げた。
  処分場からは、腐った卵やプロパンガスのようなにおいが漂ってきた。夜中に目が覚めては、のどや頭の痛みを感じ、家族のうち3人がぜんそく症状を訴えた。
  県が処分場周辺の住民410人へのアンケートと医師の分析の結果として2月にまとめた報告書によると、化学物質過敏症の疑いがある人は回答者の27%。「のどの違和感」「せきやくしゃみ」「目やにがでる」「涙がでる」などの症状の訴えが相次いだ。産廃近くに住む人ほど異状を訴える割合は高く、報告書は、産廃が健康被害を与えている可能性を認めた。
  高山さんは今年2月、「小さい子どもを育てることはできない」と、処分場から約2キロ離れた住宅に引っ越した。
  住民団体「竹の内産廃からいのちと環境を守る会」の岡久事務局長(68)は「大雨や地震で地中の有害物質が出てくる可能性がある。全量撤去しなければ、住民は永久に健康不安を抱えなければならない」と訴える。
●難色
  昨年1月、県警は同処分場業者や暴力団幹部を廃棄物処理法違反の容疑で逮捕。浅野史郎知事は不法投棄を見過ごしたなどとして県の責任を認め、陳謝した。
  同2月には、悪臭の源である硫化水素の発生を抑えるために、産廃を土で覆う行政代執行に着手。同3月には、同処分場のような安定型処分場では本来、ほとんど検出されないはずの鉛やヒ素、水銀、有機化合物などが県の調査で検出されたことが明らかになっている。
  県議会2月定例会では、浅野知事は対応策について「産廃の全量撤去は困難」と答弁し、一部の撤去にも難色を示した。作業の際に有害物質が発生して周辺に悪影響を及ぼす恐れがあることや、産廃の受け入れ先確保が困難であることなどを理由にあげた。
  26日の記者会見では、「検討委員会だけにげたを預けるわけにはいかない。行政的判断も必要」と述べ、最終的には県がコスト面を含めて判断する考えを示唆した。
  県が業者に委託してまとめた対策案では、(1)全量撤去は工事期間23年、コスト700億円以上(2)不法投棄分のみの撤去は工期17年、コスト500億円以上(3)処分場全周を遮水壁で覆って汚水を処理施設に排出するなどの措置は工期3年、コスト100億円未満||などと試算されている。
  県は、特定産業廃棄物支障除去特別措置法(産廃特措法)に基づき、汚染防止策を代執行する際には国から補助を受ける方針。青森、岩手県境に約88万トンの産廃が不法投棄された問題では、代執行で全量撤去することが決まり、国は青森県約434億円、岩手県約221億円にのぼる総処理費用の約6割を負担することになっている。
(2005/3/25:朝日新聞・宮城)
10人が神経系に異常 西原町住民検診で判明
 【西原】西原町棚原で廃棄物処分業者が廃プラスチックの焼却許可を得ていない焼却炉で違法に医療廃棄物を処理し、周辺住民が大気汚染による健康被害を訴えている問題で、住民10人が11日、東京の北里研究所病院臨床環境医学センターで検診を受けた。その結果、全員が中毒後遺症と診断され、うち4人が化学物質過敏症を発症か発症に近い状態にあることが分かった。
 住民らで構成する「棚原地域医療ごみ違法焼却問題を考える会」(比嘉照彦代表世話人)が21日、棚原公民館で記者会見し明らかにした。住民らは「違法焼却による健康被害の証拠」として、実態の解明や専門医による地域での集団検診などを町などに早急に求めることにしている。
 同センターは化学物質過敏症に実績のある医療機関。住民は10代から70代までの男女10人で、頭痛や不眠、けん怠感などの症状を訴えており、問診や平衡機能や眼球運動、瞳孔などの検査の結果、神経系に異常が見られると診断された。
 診断した宮田幹夫医師は意見書で「発症がごみの異常処理に起因していると思われる」と処理施設と住民の健康被害との因果関係を指摘。考える会は22日以降、町や県に意見書などの資料を基に、要請行動することを検討している。
 考える会は会見で、昨年9月の処理施設での焼却差し止め以降進まない町の対応を批判し「この結果を重く受け止めるべきだ」と救済措置の早期実現を要請した。一方で「業者の責任も追及すべきだ」と業者に賠償を求める声も上がった。
 西原町の新垣正祐町長は「検査の詳しい結果は分からないが、町としても検診実施を目指し努力している」とし「化学物質過敏症の原因が焼却炉なのか、今後、追究しなければならない」と述べるにとどまった。
(2005/3/22:琉球新報)
西原町医療廃棄物問題 化学物質過敏症と診断
 医療廃棄物の違法焼却が原因で健康への被害を受けたと西原町の住民が訴えている問題で、専門医による診察の結果化学物質過敏症などの症状が住民の間に出ている事が分かりしました。
 この問題は西原町で医療廃棄物が過去3年にわたり違法焼却されたことで、付近住民が頭痛やめまいなど健康被害を訴え町に集団検診の実施を求めているものです。これまでの話し合いでは集団検診の見通しがつかないことから、身体の不調を訴える10人は、今月11日に東京の専門医による診察を受けました。その結果、全員に神経系の異常が見つかり中毒後遺症と診断され、専門医による意見書から10人中4人が化学物質過敏症を発症している事が判明しました。
 医療ゴミ違法焼却問題を考える会の記者会見で「単純な中毒の後遺症の方は今後比較的早く軽快していくと思われますが、化学物質過敏症の患者は長期療養を必要とします」住民の代表らは今回の検診で健康被害と違法焼却の因果関係が立証されたと説明していて、今後は町や県に対して自覚症状を訴えている住民全員の集団検診や被害実態の把握に努めるよう要請することにしています
(2005/3/21:沖縄テレビ)
人体に優しいはずのワックスが火事の原因に
 シックハウス問題が注目を集めて以来、「天然」、「自然」の材料や成分で出来た建材の人気は上昇している。
 主に植物油でつくられ、木製の床や家具に塗布される天然油脂ワックスもそのひとつだ。有機溶剤を含まず、人体や環境に対する安全性が高い。容器のラベルや取り扱い説明書にちりばめられた「天然」「植物油」といった言葉は、そうした安全性を強調し、ユーザーに安心感を与える。
 ただし、全く危険性がないわけではない。
 植物油は、酸化発熱するという性質を持つ。空気を多く含んだものにしみ込んで冷えにくく乾いた状態に置かれると、数時間で発熱してしみ込んだものを自然発火させることがあるのだ。
(2005/3/18:日経BP)
シックハウス症候群:対応策を紹介、市町村にパンフ配布−−県衛生研究所 /高知
 県衛生研究所は、化学物質を出す建材を使った住宅に住むことで体調不良を起こす「シックハウス症候群」への対応策をまとめたパンフレットを3000部作成し、県内の保健所や各市町村に無料で配布している。
 パンフレットはA4判4ページで、シックハウスはハウスダスト増加や住宅の気密性が高くなったことなどが原因と解説。頭痛や吐き気を防止するには、こまめな換気や通風に配慮した家の建築をすることなどをイラストや写真入りで紹介している。また、県内各保健所の連絡先も掲載しており、同研究所は「シックハウスの可能性がある人はすぐに保健所などへ相談してほしい」と呼びかけている。
(2005/3/17:毎日新聞・高知)
シックハウス対策検査 市町立校8割がせず 広島県教育長「指導する」
 広島県議会予算特別委員会は十一日、最終日の総括審議をした。県教委の関靖直教育長は、国がシックハウス症候群対策として定めた化学物質の検査が、抽出調査をした市町立の小、中、高校の約二割でしか進んでいない実態を明らかにした。
 関教育長は、これまでに化学物質の検査をしたのは、今月初めに聞き取りをした市町立の四百七十六校のうち百三校にとどまると指摘。「検査が行われるよう、引き続き市町教委を指導する」と述べた。
 さらに関教育長は、百三校のうち四十一校で特定の化学物質が国の基準を超えたことも明らかにし、市町教委に換気の励行や再調査を指示したと説明した。
 教室などの空気検査の項目について文部科学省は二〇〇一年度末、ホルムアルデヒドなど四物質、〇四年度にはスチレンなど二物質を加えている。県立の高校、盲・ろう・養護学校は、ほぼ全校で検査を終えたという。
 予算特別委は同日、総額一兆十二億三千万円となる〇五年度一般会計当初予算案など十九議案を原案通り可決した。
(05/3/12:中国新聞)
各省庁の05年度シックハウス対策/経産省、室内環境浄化部材を開発
 建材や家具から発散される化学物質などで頭痛やめまい、吐き気などのさまざまな健康被害が生じるシックハウス問題に関する関係省庁の05年度の取り組み内容が明らかになった。経済産業省は05年度末までに、室内環境を浄化する部材を開発するほか、建築材料から発生する揮発性有機化合物(VOC)の簡易測定方法も研究。農林水産省は、シックハウスの原因物質とされるホルムアルデヒドを放散しない合板を製造する施設の整備などを支援する。国土交通省は住宅のカビ・ダニなどのアレルギー源に関する実態把握などに乗り出す。
各省庁の2005年度シックハウス対策(PDF)
(2005/3/10:建設工業新聞)
サリン10年 「目が疲れる」75% 後遺症に苦しむ被害者
 地下鉄サリン事件から二十日で十年を迎えるのを前に、被害者の無料検診活動を行うNPO法人「リカバリー・サポート・センター」(東京)は九日、昨年十月に地下鉄・松本両サリン事件の被害者を対象に行った検診の集計結果を発表した。三百二十六人の回答では、「頭痛がする」が44・7%、「目が疲れやすい」が75・4%、「事件をありありと思い出す」が19・0%となっており、今も後遺症に苦しむ被害者の姿が浮き彫りとなった。
 磯貝陽悟事務局長は「頭痛は毎年横ばいの数字で、固定されたような状態になっている。たばこや新築の建物など身近なものに反応する、化学物質過敏症に苦しむ被害者も目立つが、国や自治体は何も対応していない」と話した。
 また事件に関連しては、十九日午後一時から、東京都千代田区の日本記者クラブ・プレスセンターホールで、「あれから十年 地下鉄サリン事件の被害者は今?」と題する集会が開かれる。「地下鉄サリン事件被害者の会」の代表世話人、高橋シズエさんらが中心となって開くもので、平成十三年九月に発生した米中枢同時テロの遺族らを米国から招き、被害者対策の紹介などを行う。入場無料。
(2005/3/10:産経新聞)
化学物質、過敏な原告に配慮 地裁支部
 調布市立調和小学校の新校舎に残留した有害物質でシックハウス症候群を発症したなどとして、当時の児童4人が市を相手に損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が9日、地裁八王子支部(小野剛裁判長)であった。化学物質に過敏な反応を示す原告2人が出席するため、芳香剤を撤去し、傍聴者に注意を呼びかけるなどの対策がとられた。
 原告の子どもたちはシックハウス症候群を発症後、空気中の微量な化学物質に反応して気分が悪くなるなどの症状に悩まされており、原告側が同支部に対策を要望していた。
 同支部は、香水や整髪料、香りの強い化粧品をつけた人や、喫煙直後の人は入廷を控えるなど、4項目の注意を記した張り紙を法廷の入り口に掲示。市側には要望を事前に伝え、前日から法廷に近いトイレの芳香剤を一時的に撤去していた。
 この日は、新校舎が完成した02年度当時、原告2人の担任だった女性教諭が出廷。約2時間半、児童が発症した後の対応について話した。原告と同様の症状に悩む子どもらも傍聴に訪れた。
 原告弁護団は「裁判所の配慮は評価できる。廊下のワックスや庭木の殺虫剤などにも注意していきたい」としている。
(2005/3/10:朝日新聞・多摩)
教室も「シックハウス症候群」:韓国
 韓国学校の半分ほどから、いわゆる「シックハウス症候群」を起こす有害物質が、基準値以上検出されたとの調査が出た。
 これによって、学校の室内環境を規制する学校保健法に、有害化学物質を規制する内容を盛り込めるよう改正する方案が推進される。
 ソウル市教育庁は9日、高麗(コリョ)大保健科学研究所に依頼し、全国の幼稚園5カ所と小中高校50カ所の教室、コンピュータールーム、科学室の空気の質を3回調査した結果、全体の56.4%である31カ所で、揮発性有機化合物(VOC)平均が環境府の基準値を超過したと発表した。
 校内環境で最も深刻なのは、空気中に漂いながら各種疾病を起こす可能性のある総浮遊細菌(TBC)だ。
 基準値は1立方m当たり800CFU(細菌群集数)だが、調査対象学校の平均は1立方m当たり1330CFUで、基準値の6倍を越える1立方m当たり5525CFUを記録した学校もあった。
 断熱材ペイントなど建築材料から出るフォルムアルデヒド(HCHO)の場合、基準値(0.1ppm)を超過する学校が15カ所(27.3%)で、基準値の8倍を越える0.87ppmが検出された学校もあった。HCHOは咳、肌疾患、鼻炎などを誘発できる。
 特に、調査対象学校のうち33校が新築3年以内だったため、シックハウス症候群を誘発する物質が多く検出されたという。
(2005/3/9:韓国・東亜日報)
大阪府、保育所のシックハウス対策を支援──研修・マニュアル配布
 大阪府は新年度から保育所でのシックハウス対策に乗り出す。今月下旬に保育所を含む私公立の全教育施設を対象に研修を実施、府策定のマニュアルを配布。保健所による相談体制も強化する。保育所は小中学校などに比べ施設規模が小さく情報量も不足しがちだが、幼児は化学物質の影響を受けやすいことから、府は小中学校と同様に啓発していく。
 府が保育所を含めたシックハウス研修を開くのは初めて。当日は教育関係者約400人が参加の予定で、医師が症例や予防法などを紹介する。府は今月、「教室で使う建材の選び方」「換気方法」「殺虫剤使用の注意」などを盛り込んだ独自のマニュアルを作製しており、受講者と府内約4000の教育施設に配布する。
 また、府は各地域の保健所と連携して保育所向けの相談・研修会も開き、必要に応じて改善策などを指導する。
 シックハウスについての相談窓口は、公立学校関係は教育委員会、建材関係は建築都市部、府民は健康福祉部などと担当部署が分かれている。保育所は府内に654カ所あるが、教育委員会の管轄外である上、施設規模も小さく、啓発・相談体制が不十分だった。
 府がまとめた調査によると、保育所の4割以上で職場会議などの際にシックハウスが話題になるなど関心はあるものの、「教室などの空気環境を測定した」のは約1割。中学校では7割以上が測定しており、対応の差が浮き彫りになっている。
(2005/3/7:日経新聞・関西)
ホルムアルデヒド:札幌市内284校で検査、教室3割が基準超す−−市教委/北海道
 札幌市教委は4日、昨年7〜9月に、市立小中高など284校で空気環境検査をしたところ、密閉した状態で3割の教室から基準値(1立方メートル当たり100マイクログラム)を上回るホルムアルデヒドが検出されたと発表した。3校については、換気した状態でも基準値を上回っていた。換気を十分にすれば問題はないという。ホルムアルデヒドは、頭痛やめまいを引き起こすシックハウス症候群の原因物質とされる。
 調査は、教室を16時間密閉した状態で行った。最高値は460マイクログラムだった。
(2005/3/5:毎日新聞)
珪藻土の土壁人気 手塗りで和みの空間
 土壁が人気だ。自宅の壁を自分で塗り替える人が増えている。注目は珪藻土(けいそうど)の入った素材。自然な風合いに加え、室内の湿度調節や、ホルムアルデヒドなど有害物質を吸着する機能があるという。土壁の魅力とは−。 (飯田 克志)
 「初めは不安だったけど、塗っていくうちにコツも覚え、階段回りやトイレの壁も塗っちゃいました」。川崎市の主婦宮山町子さん(53)は昨年十二月、三階建ての自宅の壁や天井の大半を珪藻土素材に塗り替えた。築十六年のクロスの汚れや、そのムッとするにおいが気になっていた。インターネットなどで内装について調べるうちに珪藻土の存在を知った。
 会社員の夫(55)と二人で慣れないコテを握り、リビングとキッチンがつながった十六畳の部屋から始めた。「どのくらいの厚みにするかが一番難しかったけど、二、三ミリが最適みたいね」。その部屋は休日の二日間で一気に塗り終えた。ただ数日前から、部屋の汚れ防止に壁と床の際などをテープやビニールシートで覆う「養生」が大変といえば大変だった。
 費用は、珪藻土以外のコテや汚れを防ぐビニールシートなどを含め約四十万円。業者に頼んだ場合は百万円超、クロスの張り替えでも三十万円という。「いやな湿気もなくなったし、温かみのある土壁は気持ちを癒やしてくれますね」と満足そうだ。
 珪藻土の流行はここ数年のこと。雑誌で紹介されたり、日曜大工店などでも販売されるようになり、一般消費者に広まった。シックハウス対策への関心の高まりも人気を後押ししているようだ。
 建材製造販売「サメジマコーポレーション」(川崎市)が定期的に開いている壁塗り体験会にも毎回たくさんの人が参加する。東京・銀座の旅館「銀座 吉水」での体験会。東京都小平市の名取巌さん(59)は「山小屋の内装を自分でやろうと計画している。やってみたら予想以上に簡単。自分の個性も出せるので面白い」と話す。ぶっつけ本番では心配、という人はこうした体験会を利用するのもいいだろう。
 ただし、注意したい点もある。多くの商品が出回っているが、メーカーごとに珪藻土に配合している結合材や添加剤に違いがある。「OZONE(オゾン)情報バンク室内環境ラボ」(東京)の稲田智子マネジャーは、「合成樹脂の結合材や添加剤は珪藻土の穴をつぶし、機能を発揮できなくする。どんな成分が含まれているか確認することが大切」とアドバイスする。
 のりの働きをする下塗り材など他の材料も成分のチェックが必要。また、ひびやきずがつきやすい等のマイナス面もあることを知っておきたい。
 しかし、たとえひびが入ったとしても、自分が演出した和みの空間なら、手入れも苦にならないはず。その手間が壁塗りの魅力ともいえる。塗り替えを家との付き合い方を見直すきっかけにしてはいかがだろう。

 <珪藻土> 植物性プランクトンの珪藻が死んで海底や湖底で化石化した土。粒の大きさはマイクロメートル(1000分の1ミリ)単位と極めて小さく、微小な穴が無数にある。この多孔質構造が、室内の湿度が高ければ湿気を吸収し、低くなると湿気を放出する珪藻土“マジック”を起こし、脱臭、断熱、吸音などの効果を生む。
(2005/2/26:東京新聞)
能代産廃問題:県、有害廃液「位置特定は困難」 非破壊調査に限界も /秋田
◇能代産廃への有害廃液問題
 98年に破産した能代産業廃棄物処理センター(能代市浅内)の敷地内で、大量の廃アルカリ液が土中に投棄された疑いが指摘されている問題で、県環境整備課は24日、直接投棄された非有機系の液状物の位置特定は困難との認識を示した。県は、産廃特措法の適用を受けた除去実施計画に基づき、非破壊調査を実施する予定だが、この計画での調査の限界が明らかになった。
 県議会福祉環境委員会で、非破壊調査の具体的方法が示された。これによると同センターの1号水処理施設付近の約1ヘクタールを対象に、廃棄物の分布状況を深度0〜20メートルの地盤まで調べる。地中に電流を流す「高密度電気探査」ほか、人工震源での地震波、電磁波を用いる方法を実施。また地表付近の土壌では、VOC(揮発性有機化合物)のガス濃度を計測する。
 県は予算案が可決され次第、業者との契約手続きを行う方針。
 非破壊調査は、場内の不法投棄を指摘する地元住民の強い要望を受け、掘削調査の前段階として実施。委員会で答弁した佐藤充同課長は「ドラム缶での投棄なら確認しやすいが、液状物なら現実的には難しい」と述べた。【小倉祥徳】
(2005/2/25:毎日新聞)
健康相談どうしましたか?[シックハウス症候群]
問い:引っ越しをして以来、目のかゆみなどの症状に悩んでいる

 49歳、女性。昨年9月の初めから、眼のかゆみ、鼻づまり、頭痛に悩んでいます。総合病院で眼科と耳鼻科を受診すると花粉症といわれ、頭痛については、婦人科で更年期障害によるものだといわれました。しかし、それぞれ処方されたくすりをもちいても症状が改善しません。昨年の春に新築マンションに引っ越したことから、最近ではシックハウス症候群ではないかと疑っております。ただ、この病気を疑ったときにどの診療科目にかかればよいのかわかりません。どう対処したらよいのでしょうか。自己診断法や治療法などアドバイスをお願いします。なお、既往症は花粉症のみで重篤な病気を患ったことはありません。
答え:身体状況の改善と住居の改善の2本立てで対処を
(回答者:北里大学教授・北里研究所病院臨床環境医学センター部長・坂部 貢)
 シックハウス症候群は、主として新築・増築・改築(リフォーム)に使用された新しい建材・建材関連品などから放散する揮発性の化学物質により室内の空気が汚染されることによって生じる健康障害をさします。
 広い意味(広義)では、揮発性の化学物質だけではなく、室内のカビ・ハウスダストなどによるアレルギー、部屋の寒暖なども含めた居住環境の悪化による種々の健康障害も含みますが、多くの場合、揮発性の化学物質によるものをさします。
 自覚症状には個人差が大きく、発症の契機・経過も千差万別ですが、一般的な経過をお話ししますと、新築・リフォームなどを契機に、入居直後から遅くとも数か月以内で発症する場合が大半です。
 自覚症状はさまざまで、住居内の化学物質がかなり高濃度になると、かなり早い時期から目や鼻などの粘膜が刺激されて「目がチカチカする・痛い、鼻がつまる、鼻水が止まらない」などの粘膜症状がおこります。
 元来ぜんそく・アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患があった人は、それらが悪化する例も見られ、なんらかのアレルギー疾患(花粉症、ぜんそくなど)をもっている人ほどかかりやすいという報告もあります。
 また、住居内の化学物質濃度があまり高くない場合は、症状が短期間ででることが少なく、数か月すごすうちに「頭痛や眠け、倦怠感」など、神経系への影響として症状が現れることもあります。
 なかには、「不眠やイライラに悩まされる、集中力がなくなる、無気力になる」などのメンタル面のゆがみとして症状が現れる人も少なくありません。そのため「更年期障害」や「うつ病」などと診断されることもあります。
 したがって、相談のようなケースでは、自覚症状の発症経過からシックハウス症候群の可能性も否定できません。そこでシックハウス症候群が疑われる場合の対処方法について簡単に述べましょう。
 シックハウス症候群では、身体状況の改善と住居の改善の2本立てでの対処が重要になります。居住環境の悪化(空気汚染)が原因となるわけですから、空気質の調査が第一歩となります。
 まず施工業者・不動産屋さんに相談して、彼らが独自の空気測定が可能かどうかを確認します。対応ができない場合は、最寄りの保健所に相談すれば適切なアドバイスをしてくれるはずです。そこで、客観的に「空気の汚れ」を評価します。
 そして、高い値がでた場合には、施工業者・不動産屋さんとの共同歩調で発生源の特定、対応、対応後の再確認(空気質の再評価)、換気の励行を行います。
 すでに相談者の場合は、他科に受診され1とおりの検査を受けられているようなので、居住環境の改善と同時に身体状況の改善を進めるため、シックハウス症候群の専門医療機関への受診が重要となります。その際に室内空気の測定結果を持参されると診断の助けとなります。
 日本では、まだまだシックハウス症候群の専門医療機関・専門科を有する病院は少ないのですが、私ども北里研究所のほか、労災病院系、国立病院機構でも専門外来を有するところがありますので、ご自身でインターネットを利用して調べてみる、あるいは保健所に問い合わせなさるのがよいと思われます。
(2005/2/20:朝日新聞with保健同人社)
NPO横浜保全Cを設立 住環境改善で新事業展開
 建設業や建物管理業のノウハウを結集し、住環境改善の総合的サービスの市民への提供など新たな事業を展開する|。横浜市内で公共建築物の保全工事などに携わってきた事業者団体などがそんな目標を掲げ、NPO法人(特定非営利活動法人)「横浜保全センター」を設立した。少子高齢化に対応した住環境の調査・研究や住宅関連相談会の開催、公営住宅など公共施設の管理運営などの事業を計画している。早ければ5月末にも県から認証される見通しだ。
 NPOを設立したのは、横浜市建築保全事業協同組合や横浜市建築設計協同組合、横浜市塗装事業協同組合など建設関係の事業者団体9協同組合と横浜建物管理協同組合、神奈川県中小企業団体中央会、IT関連コンサルタントのシーガル。15日に設立総会を開き、設立趣意書や定款、事業計画を決定するとともに役員を選出、横浜市建築保全事業協同組合代表理事の藤田武氏を理事長に決めた。
 メンバーの中心となっている建設関係の事業者団体は16年度、「横浜市建築保全研究会」を設立、建設業の新分野進出のモデル事業として建設業振興基金の支援を受け、施設のトータル管理による建設業のサービス化▽地域コミュニティーの形成も視野に入れた保安・警備体制の構築―などの研究を行ってきた。同研究会の取り組みが、今回のNPO法人の設立にもつながった。
 同日決定した事業計画によると「少子高齢化に対応した住環境の調査・研究・相談事業」として、増改築やリフォームなどの住宅関連相談会▽シックハウス対策や高齢者福祉など、住宅に関する健康増進を目的とした講習会の開催|に取り組む。また、「まちづくりや地域安全の推進のための調査・研究・相談事業」として▽住宅などの防犯対策講習会▽商店街の防犯対策、コミュニティ形成、活性化に向けた調査・研究や相談会|を実施。「公営住宅など公共施設の管理運営に関する事業」も展開する。
(2005/2/15:建通新聞・神奈川)
自工会、車室内VOC低減に対する自主取り組みを発表
車室内VOC低減に対する自主取り組みについて
 (社)日本自動車工業会(以下、自工会)は、今般、車室内のVOC(揮発性有機化合物)低減について自主的な取り組みを進めることとした。
 VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)とは、常温で揮発しやすい有機化合物のことで、ホルムアルデヒドやトルエン等がよく知られている。乾燥しやすいことや油汚れを落としやすい等の特徴を活かし、塗料や接着剤などの溶剤、または洗浄剤として産業界で広く利用されてきた。
 近年、住宅の高気密化や化学物質を放散する建材・内装材の使用等により、新築や改装直後の住宅・ビル等に入ると鼻・のどに刺激を感じる等の体調不良が生ずるいわゆるシックハウス(室内空気汚染)症候群が注目され、厚生労働省や産業界はその一要因であるVOCの対策に取り組んできている。
 自工会では車室内を居住空間の一部と考え、自動車の使われ方や住宅とは異なる環境を考慮した最適なVOC濃度試験方法の研究や実態調査等を進めてきた。これらの結果を踏まえ、今般、濃度測定に必要な「車室内VOC試験方法(乗用車)」を新たに策定し、2007年度以降の新型乗用車について厚生労働省の定めた13物質の室内濃度指針値を満足させる「車室内のVOC低減に対する自主的な取り組み」を始める。
 これまでも、自動車メーカー各社は揮発する化学物質の使用量を抑えたクルマづくりを進めてきたが、本取り組みにより、今後は化学物質の中でも、厚生労働省が室内濃度指針値を定めた化学物質の低減を優先的に進めていく。具体的には、例えば接着剤や塗料に含まれる溶剤の水性化・無溶剤化等を推進していく。
 また車室内のVOCは車室内の様々な部品から揮発する成分の混合物であるため、今後、部品メーカーや素材メーカーの協力を得ながら取り組んでいく。
〔自主取り組みの概要〕
1.時期と対象車
 2007年度以降の新型乗用車(国内で生産し、国内で販売する乗用車)
 (トラック・バス等の商用車についても2005年度内を目途に自主取り組みを公表できるよう検討中)
2.目標値
 厚生労働省「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」において室内濃度指針値が確定している13物質に対し、その指針値を満足させる。また、それ以降も各社さらに室内濃度低減に努める。
3.試験方法
 濃度の測定は自工会策定の「車室内VOC試験方法(乗用車)」に従う。
(2005/2/14:日経新聞)
同記事 自工会:世界初の「シック・カー」対策
 日本自動車工業会は14日、頭痛やめまいが起きる化学物質過敏症「シックハウス症候群」の一因とされるホルムアルデヒドやトルエンなどの揮発性有機化合物(VOC)について、自動車内の濃度を低減する取り組みを始めると発表した。VOCの車内濃度などに一定の基準を設け、07年度から国内で生産、販売する新型乗用車に適用。08年度以降はトラックなど商用車にも取り組みを広げる。自動車業界が一体となってVOC低減に取り組む「シック・カー」対策は世界初という。
 VOCは、新築や改装直後の住宅、ビルなどで鼻やのどに刺激を感じる体調不良を引き起こすシックハウス症候群の原因物質。厚生労働省が13物質について室内濃度の指針を定めて、低減活動を進めている。
 自動車でもシートやダッシュボード、内張りなどに使用される接着剤などが原因で「不快に感じた」というユーザーの声が自工会に寄せられている。このため、自工会は接着剤や塗料に含まれる溶剤の水性化などを推進して、車内のVOC濃度が厚労省の指針を下回る濃度になるよう業界全体で目指すことにした。
 具体的には、「車室内VOC試験方法」を策定。ドア、窓を密閉した車内でホルムアルデヒドの濃度を測定するほか、トルエンはエアコンを作動させた状態での濃度を測定するなど統一の指針を設けた。トラックについては、商用車用の基準を今年度中にまとめて08年度以降からの適用を目指す。
 日産自動車はすでに、昨年発売したミニバン「ラフェスタ」で、VOCが発生しにくい吸音材を活用するなど独自の対応に乗り出しているが、「自工会の指針に基づき、車内のVOC低減をほかの車種にも広げていきたい」と話している。また、マツダも車内での「シックハウス症候群」が指摘されたことを受けて、99年から一部車種にホルムアルデヒド除去装置付きフィルターをオプションで販売している。
(2005/2/14:毎日新聞)
同記事 日本自動車工業会がシック“カー”症候群対策 原因物質削減へ
 日本自動車工業会は、乗用車の車内で「シックハウス症候群」の一因とされるホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)の濃度を引き下げる対策を推進する。2007年度以降に国内で生産・販売する新型乗用車を対象とする。
 ホルムアルデヒドやトルエンなど、厚生労働省が定めた13物質の室内濃度の指針値について、自主的なクリアを目指す。
 自動車業界を挙げて削減に取り組むのは、世界で初めてという。
 住宅業界では、化学物質によって頭痛などが発生するシックハウス症候群対策を図るため、ホルムアルデヒドなどを含まない建材の採用が進んでいる。
 これに対し乗用車では、VOCを起因とするシック“カー”症候群といった問題は深刻化していない。
 ホルムアルデヒドの場合、室内濃度は窓を開けて20分走行した段階で、ほぼゼロになるなど、住宅に比べて換気性能が高いのが理由だ。
 ただ、乗用車室内も居住空間の一部ととらえると高度な対策が不可欠と判断。自主的な取り組みを決めた。
 自動車メーカーの間ではVOCの排出量を低減するため、ボディーの塗装工程で水性塗料の導入を順次進めている。室内に使用される部品についても、部品・素材メーカーとの連携によって同様の対策が進むとみられる。
(2005/2/15:フジサンケイビジネスアイ)
参考 首相も患者、花粉に政府も頭痛 官邸主導で策練るが…
 過去最大級と予測される今春のスギ花粉の飛散を前に、政府が花粉症対策に本腰を入れて取り組む姿勢を示している。小泉首相をはじめ花粉症に悩む閣僚がいるため、最近は週2回の閣議後に開かれる閣僚懇談会でもしばしば話題に上っている。しかし、花粉を減らすなどの抜本対策には時間がかかり、妙案は浮かんでいない。
 先月25日、今月4、8、10日の閣僚懇でたて続けに花粉症が取り上げられた。厚生労働相、農林水産相、環境相らが(1)花粉の量が普通のスギの1%以下しかないスギの苗木を今後5年間で60万本以上業者に配布して植え替えてもらう(2)食べるだけで花粉症の症状を緩和できるコメの研究開発を進める(3)総合科学技術会議でアレルギー対策の研究を促進する(4)国民に対し花粉症対策のパンフレットを30万部配布する――など、各省庁の取り組みを報告。細田官房長官は「国民的課題」として、官邸主導で対策に取り組むことを提案した。
 これを受け、政府はこれまで課長級だった関係省庁連絡会議を審議官級に格上げし、内閣官房主催に切り替えた。9日の初会合では互いの情報を交換し、予防や飛散情報の提供が大切という認識で一致した。とはいえ、この日の会議自体は約30分間。今後どのように対策を検討してゆくのかといった方向性は見えていない。
 政府内には「花粉の出ない木に切り替えるには50年、100年かかる」(政府関係者)と対策の実効性に首をかしげる声もある。閣僚懇でも「スギの間伐をもっと進めてはどうか」という意見が出されると、「切りすぎると地球温暖化対策にならない」と反論する声が上がるという具合だ。
 花粉症などのアレルギーに悩む自民党国会議員ら54人でつくる「ハクション議連」こと「花粉症等アレルギー症対策議連」の小野晋也事務局長は、「地道に取り組むことしか解決策はない」と、長期にわたる取り組みを求めている。
(2005/2/12:朝日新聞)
ハウスダストや花粉のアレルギー作用低減、花王が新物質発見
 花王は7日、布団・カーペットについた花粉やハウスダストを掃除機などで除去しやすくする化学物質と、アレルギー症状を引き起こす作用を弱める効果を持つ化学物質を発見したと発表した。今後、二種類の物質を家庭向け掃除用スプレーなどに配合する計画。
 同社の研究グループは「硫酸ナトリウム・カリウム複塩」の水溶液を布団などに噴霧すると、ダニのふんや死がい、スギ花粉などのアレルギー誘発物質(アレルゲン)が繊維からはがれやすくなることが分かった。またセルロースの吸着性を高めた「セルロース誘導体」をアレルゲンに作用させると、アレルゲンをくるんで作用を弱めることも明らかになった。
(2005/2/8:日経産業新聞)
地元産木材を家造りに 下京 建築家らシンポ
 環境にやさしい木造住宅と森づくりの在り方を探るシンポジウム「木の家で森をまもり・そだてる」が5日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都であった。地元産の木材を活用した住まいづくりに取り組む全国各地の建築家らが、地産地消などについて意見を交わした。
 地域と森の新たな関係を考えるきっかけにと京都府立大が主催。市民約150人が参加した。
 シンポでは府立大の田中和博教授が日本の森林の危機を指摘し、「消費者の視点に立って国産材が流通する仕組みを再構築すべきだ」と問題提起した。シックハウス対策など健康な住まいづくりを進める大阪府の藤田佐枝子さんら建築家5人が「安らぎを与える木のぬくもりを伝えたい」「地域の森林資源を有効活用したい」などとして独自の施工例を紹介した。パネル討論では「木の住まいづくりをどう林業振興につなげるか課題」「コストや工法など建築家の力量も問われる」などの意見が出ていた。
(2005/2/5:京都新聞)
宮城の処分場、不法産廃67万立方m 住民に健康被害か
 宮城県村田町に国内有数規模の約67万立方メートルの産業廃棄物が不法に投棄され、周辺住民に化学物質過敏症などの健康被害が出ている可能性があることが同県の調査でわかった。環境省によると、不法投棄による健康被害の報告は例がない。同県は、4日に開かれる有識者らの対策会議に報告する。
 現場は許可容量35万立方メートルの安定型処分場。しかし、県によると、100万立方メートル余りが捨てられていた。安定型には投棄してはいけない石膏(せっこう)ボードなどの廃棄物も見つかり、硫化水素が発生していた。
 周辺住民410人へのアンケートや医師による分析結果では、化学物質過敏症の疑いがある人が回答者の27%に達した。のどに異常を訴える人は17%。処分場から500メートル未満の住民で訴えている割合は、500メートル以上の住民の1.7倍だったことも判明した。
(2005/2/4:朝日新聞)
関連記事 竹の内産廃 県が健康被害可能性認める
  村田町沼辺の竹の内産業廃棄物処分場で硫化水素などが発生し、健康被害が懸念されている問題で、県の調査報告書が、周辺住民への被害の可能性を認める内容となることが明らかになった。住民が悪臭を訴え始めてから11年。住民代表や有識者らが対応策を話し合う検討委員会は3月にもまとめる答申に向け、4日、仙台市内で会議を開く。住民が県に求める産廃の肩代わり処理へと、事態は動き始めるのか、重要な局面に入る。
  「粘膜刺激性のある化学物質が産廃処分場から発生し、周辺住民に様々な症状が起きている可能性が考えられる」
  県が処分場周辺の住民410人へのアンケートと医師の分析の結果としてまとめた報告書は、産廃と症状に因果関係がある可能性を認めた。01年にも、似た調査結果が出ているものの、実施したのは周辺住民。今回、住民の要求に沿って県が調査を実施、改めて懸念を裏付けたかたちだ。
  それによると、化学物質過敏症の疑いがある人は回答者の27%。症状では、目やにが出る人が11%、涙が出る人が9%、のどの違和感が17%、せきやくしゃみがでる人が16%、風邪をひきやすい人が13%に達した。
  それぞれの症状を訴えている人の割合は、処分場から500メートル未満の方が、500メートル以遠に比べて約2倍に達した。
  こうしたことから報告書は「処分場から化学物質が発生し住民に様々な症状が出ている可能性がある。小児や妊婦には十分な配慮が必要」と結んでいる。
  竹の内の産廃問題は歴史が長い。周辺住民は99年に住民団体を結成。県に抜本的対策を求めてきた。だが、県が住民に陳謝したのは昨年1月。この時も住民が産廃の撤去を求めたのに対し、県の主な対策は、土で表面を覆い硫化水素の拡散を抑えるというもの。
  背景には、数十億円とも言われる抜本的処理の費用の問題があるが、県として健康被害の可能性を認めたことで、住民からの要求が強まるのは必至とみられる。
(2005/2/4:朝日新聞・宮城)
同記事 宮城・村田 竹の内産廃 健康被害とガスに因果関係
 産廃の不法埋め立てなどが問題となっている竹の内産廃処分場(宮城県村田町沼辺)の廃止に向けた対策を協議する宮城県の総合対策検討委員会(犬飼健郎委員長)が4日、仙台市内で開かれた。処分場の周辺住民が訴えている健康被害と、処分場から発生するガスに因果関係があるとする報告書が承認された。
 県は昨年11月、処分場の半径600メートル内の成人住民を対象に、化学物質過敏症に関するアンケートを実施。回答した410人のうち、2001年に住民団体「竹の内産廃からいのちと環境を守る会」によるアンケートでも回答した78人の症状について集計した。
 多賀城市内のアレルギー専門医が分析した結果、今回は、78人のうち頭痛を訴えたのが30人(前回32人)、気道粘膜症状を訴えたのは29人(36人)おり、前回同様、健康被害が確認された。
 症状が確認された住民は処分場から500メートル以内の居住者が多く、報告書は「何らかの粘膜刺激性のある化学物質が処分場から発生し、住民にさまざまな症状が引き起こされている可能性がある」と指摘。犬飼委員長も、調査結果を考慮しながら対策を講じる方針を示した。
 許可容量(約35万4000立方メートル)の約3倍に当たる約103万立方メートルの産廃が埋められていた問題については、廃棄物層は最も深いところで地下約29メートルに及ぶことも判明。地中の廃棄物層近くでは、1000ppmに及ぶ高濃度の硫化水素の発生が2カ所で確認された。
(2005/2/4:河北新報)
関連記事 健康被害の可能性/竹の内産廃
  67万立方メートルもの産業廃棄物が不法投棄された村田町竹の内の産廃処分場の対応策などについて話し合う検討委員会が、4日開かれ、地下水や土壌、周辺住民を対象にした健康調査の結果報告があった。
  検討委に先だって行われた専門家らによる部会では、覆土と産廃の境界部分で硫化水素、可燃性ガス、ベンゼンなど有害物質が一部で高濃度で検出されたとの報告があった。地下水へ汚染の広がりはみられないとされたが、将来的な変動や、後背の丘陵地から流出する地下水への汚染を懸念する指摘もあった。
  県による代執行で撤去が決まった焼却施設の焼却灰など約15立方メートルからは、環境基準を超えるダイオキシンやカドミウムなどが検出された。これに接する土壌では汚染物質の拡大はみられなかったという。一方、県が実施したにおいに関する住民アンケートは、800戸に配布したものの回答がわずか30戸分にとどまった。硫化水素のにおいを感じるなどの声があったという。
  検討委では、住民アンケートの結果、「周辺住民に化学物質過敏症が疑われる可能性がある」とする報告が出された。
  今月末に有害物質の分布や量がまとまるため、これを待って3月の検討委で今後の対応策を決める。県は現在、業者に代わって土を覆いかぶせる応急的な措置をしているが、委員からは、「許可容量を超える分は撤去すべきだ」「業者の投棄を見過ごした県の責任は明らか」との意見が出された。
(2005/2/5:朝日新聞・宮城)
防犯住宅建設を支援 埼玉県、住宅公庫
 埼玉県は2月1日から、防犯、バリアフリー、シックハウス及び緑化に配慮した住宅建設の支援を、住宅金融公庫と連携して実施する。
 埼玉県が定める基準に基づき建設する住宅に対して、公庫が「地方公共団体施策住宅特別加算制度」による割増制度を実施するもの。防犯、バリアフリー、シックハウス対策、緑化基準を満たした賃貸住宅については、公庫が基本融資に加え1戸当たり400万円を割増融資する。また、防犯対策を講じた持家、賃貸住宅については、基本融資に加え1戸当たり200万円の割増融資。
 詳しくは埼玉県住宅課、電話048(830)5562まで。
(2005/1/25:住宅新報)
同記事 安全な住宅 県が住宅金融公庫と連携・支援(埼玉県)
バリアフリー・防犯に
 防犯やバリアフリー対策を講じた新築住宅に割り増し融資する制度を県が住宅金融公庫と連携し、2月1日から受け付ける。侵入犯罪の増加や、バリアフリー化されている民間借家の割合が県内では0・2%にとどまっているため、「安全な住まい」づくりを県としても後押しする考えだ。
きょうから融資開始
 県住宅課によると、県内の住宅侵入盗は03年に1万5375件と、5年間で約2倍に増えた。
 手すりなどバリアフリー対策は03年12月現在、県平均で4・1%。内訳を見ると、公営借家の7・2%に対し、民間借家は0・2%だった。同課は「防犯やバリアフリー対策はコストがかかるので、借家の場合、積極的に取り組まない大家が多い」とみている。
 県は1月、防犯などに配慮した民間賃貸住宅向けなど二つの建設基準を作った。
 「安心・安全賃貸住宅建設基準」と、「侵入予防住宅建設基準」。この基準を満たすと、住宅金融公庫の「地方公共団体施策住宅特別加算制度」で、基本融資のほか、上乗せ融資が受けられる。
 「安心・安全基準」は新築の民間賃貸マンションやアパートが対象。防犯・バリアフリー・シックハウス・緑化の4項目の基準がある。防犯対策では出入り口で人の顔がはっきり見える程度の明るさの確保や、ピッキング防止、バリアフリー対策では道路から住宅までの段差解消などが挙げられている。シックハウス対策ではホルムアルデヒドの発散量が少ない材料の使用も求めている。
 割り増し融資額は一戸につき400万円。
 「侵入予防基準」は民間の賃貸マンションのほか、一戸建ての持ち家や分譲マンションも対象となる。駐車場の見通しの良さなどを満たせば、一戸あたり200万円の追加融資が受けられる。
(2005/2/1:朝日新聞・埼玉) 
研究プロジェクト
「木質建材から放散される揮発性有機化合物の評価と快適増進効果の解明」の紹介
   研究管理官 山本 幸一
  新築住宅で気分が悪くなるといった、いわゆる「シックハウス症候群が社会問題となっています。厚生労働省はホルムアルデヒドを含む13種類の揮発性有機化合物(VOC)の室内濃度指針値を策定しています。また、個々のVOCの総量である総揮発性有機化合物(TVOC)についても暫定目標値を定めています。現在、厚生労働省が定めたTVOCの定義によると、木材の香り成分であるテルペン類など人に対して有用なものも含まれてしまいます。
  そこで、本プロジェクトでは木材由来のVOC(テルペン類など)の放散実態を明らかにし、木材由来のVOCが人に対して快適性を増進する効果を明らかにすることにより、木材による快適な住空間を創出するための基礎的なデータを整備することを目的として、平成14年から3年間の計画で研究を推進しています。
  木材からのVOC放散については、平成15年に制定された「小形チャンバー法」(JIS A1901)を用いて、主要国産材(スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツ、トドマツ、ヒバ、ナラ、ブナ、ケヤキ、サクラ)の測定を行いました。また、スギ材についてはVOC放散に及ぼす乾燥条件の影響を調べました。その結果、供試木材のすべてにおいて、トルエンやホルムアルデヒド等指針値の示された物質については定量限界値以下か極めて低い値であり、VOCのほとんどはピネン類等のモノテルペンとカジネン類等のセスキテルペンなどで構成されていました。一方、TVOCについては、暫定目標値を大きく上回りますが、スギについては高温過熱蒸気乾燥することにより少なくなることがわかりました。また、アセトアルデヒドについては、ホルムアルデヒドのJAS試験法であるデシケーター法を応用した簡易測定法の開発に成功しました。
  木材由来成分の人への快適性増進効果については、森林総研で開発した生理面と心理面の測定を組み合わせる方法で行いました。生理面の測定としては、中枢神経活動を近赤外線分光法による脳血液動態測定により評価し、自律神経活動は指式の血圧(収縮期と拡張期)・脈拍数測定から評価しました。その結果、モノテルペン類であるリモネンの吸入は、主観的に快適で自然であると感じられることがわかりました。生理的には、脈拍数の低下及び脳活動の鎮静化が認められ、生体がリラックスできることがわかりました。α−ピネンの吸入は、ストレス時に昂進することが知られている交感神経活動を抑える効果があることがわかりました。すなわちα−ピネンは、交感神経の活動を反映する散瞳速度(光により瞳孔が閉じ、それが元に戻る時間)を抑制することがわかりました。ダニの行動抑制効果に関しては、ヒバ単板及びヒノキ単板を挟み込んだ畳を用い、ダニの長期暴露試験を行いました。その結果、ヒノキ単板では約3ヶ月、ヒバ単板では約1年という長期間のダニ行動抑制効果があることがわかりました。
  以上のように、テルペン類などの木材由来の成分は人に対して快適性を増進する効果がありますが、個々のVOCまたはTVOCについて、厚生労働省の室内濃度指針値や暫定目標値に基づき一律に規制が行われると、木材のような天然素材まで規制される恐れがあります。木材が適正に評価されるよう、今後も研究を進める必要があります。
(2005/1/19:森林総合研究所 所報 Y45・2004-12)
県産材利用拡大へ県が使用を率先(三重)
年度内に推進指針を策定
 県内で切り出された木材の利用拡大を目指し、県は本年度中に、公共土木工事に県産材を使う指針を定める。林業を活性化し、荒廃する森林の適切な整備につなげるのが目的。県は新年度、県産材で建てる住宅への補助制度などを創設して民間に利用を促すが、まずは公共工事で「隗(かい)より始めよ」−。 (小嶋 麻友美)
知事「災害防止からも積極的に」
 指針では、建築基準法など法令上の制約がある場合を除き、原則県産材を使うこととし、土木工事では手すりや木柵(さく)、型枠などに県産間伐材の使用を求める。新年度に創設する県産材の認証制度も活用する。
 県林業経営室のまとめでは、昨年度の県内の間伐材利用率は12%止まり。昨年度建てられた県や市町村の施設で、構造材や内装材に使われた木材に占める県産材の割合は83%だった。
 シックハウス問題などを追い風に自然の木造建築が見直されつつあるが、ネックは価格面。育林に多額の費用をかける分、県産材は市場の平均15−20%増しという。県は県産材の単価を市場価格に近づけるよう、今後業界側に働きかける。
 十七日、野呂昭彦知事を本部長に各部局の幹部で「県産材利用推進本部」を設置。三月までに指針をまとめ、新年度の工事から適用する。
 十八日の定例記者会見で野呂知事は、昨年の台風21号災害に触れ「間伐など山の手入れは非常に大切。災害防止の観点からも県が積極的に進めたい」と話した。
(2005/1/19:中日新聞)
市街地の農薬散布に対策 環境省、健康への影響調査
 環境省は14日、住宅地に近接した農地や市街地の街路樹管理で散布される農薬について、周辺住民への健康被害を防ぐために安全対策を強化する方針を決めた。
 住民の健康への影響を調査し、大気中濃度の指針値の設定などを検討する。化学物質過敏症やアトピー性皮膚炎など、身近な化学物質の影響に関心が高まっており、農薬使用に関する規制強化が必要と判断した。
 安全対策を策定するため、学識者による検討会を設置。2005年度から5年計画で取り組む。
 計画では、都市近郊の農地などで散布された農薬がどの程度拡散しているか、大気中濃度を測定。住民の健康被害の可能性があると判断した場合は、散布後の周辺大気の農薬濃度について指針値を設定する。
( 2005/1/14:共同通信)
化学物質と子どもの健康について国際シンポジウム開催へ
 環境省は、化学物質と子どもの健康保護とに関する調査研究や施策についての情報交換の場として、平成17年2月24日に東京・港区の三田共用会議所で「小児等の環境保健に関する国際シンポジウム−こどもの健康と環境中の化学物質」を開催する。
 今回のシンポジウムは、スウェーデンで約3万人を対象に実施された「小児の生活環境と化学物質」に関する国民調査の担当者カタリナ・ヴィクトリン氏、ドイツ連邦環境庁のノルベルト・エングラート氏、米国環境保護庁ジャクリーヌ・モヤ氏らを招き、それぞれの国での化学物質と子どもの健康保護に関する研究の成果や施策内容を報告してもらうほか、内山巖雄・京都大学教授の司会による総合ディスカッションを実施する。
 参加希望者は申込書に必要事項を記入の上、独立行政法人国立環境研究所化学物質環境リスク研究センターまで郵送、FAX、電子メールのいずれかで17年2月17日までに申し込む必要がある。【環境省】
環境省プレスリリース:小児等の環境保健に関する国際シンポジウム(第3回)の開催について
(2005/1/12:EICネット・国立環境研究所情報サイト)
知恵を絞ろう:温暖化防止/1 究極、非電化の家
◇シックハウス症候群とも無縁
 地球温暖化防止のための京都議定書が来月16日、いよいよ発効する。待ったなしの温暖化問題に、私たちはどう向き合えば良いのだろうか。知恵を絞り、時に楽しみながら温暖化防止に取り組んでいる人々や地域、企業の試みを紹介する。【足立旬子、去石信一、河内敏康】
 究極のエコハウスの建築が岡山県津山市で始まった。主要なエネルギー源は太陽光で、電気や石油、ガスの力を借りずに冷暖房する。電気を使わない冷蔵庫や洗濯機も導入し、二酸化炭素(CO2)の排出を極力抑えるつもりだ。建築主の小原冨治雄さん(43)は住宅販売会社の経営者。「ぬくもりがあり、環境への負荷も少ない家を提供したい」という思いが高じ、自宅を「非電化住宅」にすることにした。
 住宅は木造2階建て、延べ216平方メートル。建材は地元産のスギやヒノキで、塗料や防腐剤は使っていないので、シックハウス症候群とも無縁だ。建築費は3・3平方メートル当たり50万円が目標で、今秋にも完成する。
 住宅には南側に広いガラス窓を設ける。窓は、日差しが高い夏場は直射日光が入らないが、日差しが低い冬場は日光が入りやすい角度にする。光が差し込む場所には、熱を蓄えやすい日干しレンガの壁を造る。
 冬は、昼の間にため込んだ熱をレンガが夜中にじわじわと放出し、部屋を暖める。寒い時はまきストーブを燃やす。
 一方、夏の冷房は、晴れた夜に地表から空に熱が放出される放射冷却の原理を使う。水を充てんした金属の円筒を、日が差さない北側の外壁の外に並べる。それを透明なガラスかプラスチックで覆い、壁には通風用の扉を設ける。夜に放射冷却が起きると円筒内の水が冷える。昼間はその冷気が扉を通って室内に入り、部屋が冷やされる。
 冷房と同様に放射冷却を利用する冷蔵庫は家のすぐ外に置くが、ドアは室内から開けられるようにする。氷はできないが、条件の悪い真夏の昼でも庫内は7〜8度に保てる。電気冷蔵庫の庫内は1〜5度なので、非電化でも十分実用的だ。
 洗濯機は、屋根に置いた太陽熱温水器で80度以上にしたお湯を入れる。洗濯槽に洗い物を入れたら密閉し、内部の圧力を上げてやる。これなら、洗剤を使わなくとも汚れが落ちるという。照明やコンピューターには電気が必要だが、同規模の通常の住宅と比べると、電力使用量は10分の1になる見通しだ。
 小原さんは「ちょっとした工夫で環境にも優しく、暮らしやすい家ができる。地元の建築家や林業関係者とも連携し、実用的な非電化住宅を普及させたい」と語る。
  □  □  □
 小原さんが導入を予定している「非電化製品」を次々に開発しているのが神奈川県逗子市の発明家、藤村靖之さん(60)だ。途上国の人々が電化製品を求める姿を何度も目にし、「電気がなくとも、快適や便利は実現できる」と伝えたくなったのがきっかけだ。
 昨年10月には、モンゴルの草原を訪れ、遊牧民に放射冷却を利用した非電化の地下式大型冷蔵室を贈った。移動式テントの日陰になる場所に穴を掘り、上部を放熱しやすい鉄板で覆った。内部には、冷気をためる墨汁水入りのペットボトルを敷き詰めた。庫内は4度以下になった。
 遊牧民の間では羊の肉を腐らせないようにする冷蔵庫の需要は高いが、市販の冷蔵庫は高価で発電装置も必要だ。しかし、非電化冷蔵室なら、手軽で費用も安い。現地の実業家に特許権を無料で譲渡し、羊1頭分(日本円で約3500円)の価格で商品化する話が進んでいる。
 同県葉山町の工房の屋外にも、容量400リットルの非電化冷蔵庫が置いてある。注文が1000台集まれば、1台4万4000円で作れる。
 「20世紀は電気文明の世紀だった。電化製品を否定はしないが、非電化でもそこそこできる。工房で冷蔵庫のビールを飲むには、いちいち外に出なければならないが、それが楽しい。そんな心の余裕が、いまの暮らしに求められていると思う」
 ◇増える家庭排出−−CO2
 食事、入浴、睡眠、家族のだんらん……。住まいは、生活の基盤だ。その「基盤」からのCO2の排出量は、自家用車の利用も含めると日本の総排出量の5分の1を超える。しかも、年々増加している。
 02年度のCO2の国内総排出量は約12億4800万トン。家庭からの排出は約2億6000万トンで全体の21%を占めた。総排出量は京都議定書の基準年である90年比で7・6%の増加だったが、家庭からの排出は同33%増になってしまった。
 1世帯当たりの年間排出量は5・5トンで、家電製品や照明などの電気の使用(冷暖房を除く)が30・1%で最も多い。2番目は自家用車の29・5%で、暖房14・4%、給湯12・5%と続く。
 政府は02年の地球温暖化対策推進大綱で、家電製品の省エネ効率や住宅の省エネ性能の向上など家庭での対策を盛り込んだ。しかし、パソコンや大型テレビなどの普及が省エネ効果を相殺し、効果は上がらなかった。
 住環境計画研究所の中上英俊所長は「家電製品の省エネを一層進め、住宅の気密性や断熱性を高める必要がある。そうしないと、冷暖房が効率よくできない。生活の基盤である住まいでの対策は温暖化防止の基本で、国民の意識改革にもつながる」と指摘する。
 ◇エアコンなし、ぽかぽか−−千葉のエコハウス
 自然の恵みを利用したエコハウスの建設は、各地で進み始めている。千葉県流山市東深井の会社員、野崎恵太さん(35)の自宅もその一つだ。
 2階建てで延べ約130平方メートル。2階居間の南側は全面ガラス張りで、太陽エネルギーを利用した作りだ。床や壁は熱容量の大きいコンクリートを使用した。夏は夜間の冷気を、冬は昼間の暖気を蓄えてくれる。庭には年末の雪が残っていたが、エアコンなしでも室内は寒くない。
 川崎市の建築事務所に設計を依頼、00年に完成した。土地は両親から譲り受けたため、建築費は大きな負担にならなかった。建築事務所と提携するコンサルタント会社の調査だと、野崎さん宅の年間エネルギー消費量は関東地区の一般家庭の約半分だ。野崎さんは「エアコンなしの、人にも優しい住環境がもっと広がっていい」と話す。
 名古屋市西区の保険代理業、臼井章二さん(66)の家は、地下の貯水槽などに雨水を120トンもためている。これで、夫婦と子供の家族4人が使う水はすべてまかなう。飲み水だけは卓上ろ過器で浄化するが、口当たりが柔らかい水だった。
 臼井さんは「浄水場での水の浄化や送水にも多くの電気が必要だ。各家庭が雨水をためれば、この電気使用量を相当節約できる」と言う。
 建築家の善養寺幸子さん(38)は、太陽光発電や雨水利用などの機能を組み合わせた東京都足立区の事務所兼自宅を00年に新築した。「地球環境を守るにしても、生活の質を守らないと面白くないし、長続きしない。自力で電力や水をまかなうことは防災対策にもつながる」と考えている。
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 太陽光や風力発電、雨水利用など技術的に可能な環境対策をとことん取り入れたエコハウスを建て、CO2排出量の大幅な削減に成功したのが、東京都世田谷区羽根木に住む環境省の環境管理局長、小林光さんだ。
 小林さんは97年の地球温暖化防止京都会議で担当課長を務めた。親と同居する2世帯住宅への建て替えを機に、住宅のエコ化に挑戦した。
 00年に完成した住宅は地上3階、地下1階。夫婦と子供2人、母親の5人で暮らす。導入した環境対策は30項目以上になる。屋根に太陽熱を集めるパネルを取り付け、そこから暖かい空気を床下に運んで床暖房として使用。断熱化のため窓ガラスは二重にした。他にも▽省エネのためのインバーター照明▽壁面緑化▽風呂の排水をトイレの洗浄水として使う−−などの対策を採用した。
 これらの取り組みをCO2の排出量に換算して計算すると、建て替え前の小林さん夫婦と両親の2世帯分を合わせた排出量に比べ、4年間平均で36%削減できた。
 小林さんは「6%削減という京都議定書の目標も楽々クリアできた。既にある技術だけでも家庭からのCO2は十分に削減できる」と話す。だが、温暖化を本当に防止するためには50%、60%と削減する必要がある。「燃料電池などの新たな対策を導入し、さらに削減したい」と意欲的だ。
 課題もある。高額な費用だ。導入した環境対策に約950万円かかった。35年間住宅を利用する前提で計算すると、金利を含めた場合、光熱費の節約分などを引いても月額約1万7000円の持ち出しになる。設備を導入した結果、固定資産税も増えてしまった。
 小林さんは「出費は地球に住むための家賃と考えたいが、エコハウスの普及には税制や助成金を改革し、個人の出費を抑える工夫が必要だ」と訴える。
 ◇「光熱費ゼロ」PRも
 「エコハウスはお得です」とPRする住宅メーカーもある。積水化学工業は「光熱費ゼロ」がキャッチフレーズだ。
 同社によると、住宅から失われる熱の約4割は窓から逃げる。ガラスとサッシを高断熱仕様にすると、省エネ効果も高まる。屋根に付けた太陽光発電のエネルギー(創エネ)を組み合わせ、給湯や調理も電気でまかなうと光熱費がゼロになる。太陽光発電の設置など初期費用は一般住宅より約250万円高いが、十数年で元が取れるという。
 03年度は約1200戸を販売、同社の戸建て住宅「セキスイハイム」の1割を占めた。05年度は2割を目指す。塩将一主席技術員は「経済的負担も軽く、住んでも快適というバランスの良さが評価されている」と話す。
■ことば
 ◇京都議定書
 97年に採択。先進国の08〜12年の温室効果ガスの排出量を90年比で5%以上削減することを義務付けている。国別の削減率は欧州連合全体で8%、米国7%、日本6%など。米国の離脱表明で発効が危ぶまれたが、ロシアの批准で2月16日の発効が決まった。
 ◇エコハウス
 環境への負荷の低減を目指した住宅を指す。(1)自然エネルギーの活用など温暖化防止に配慮した家(2)建材に化学物質を使わないなど健康に配慮した家(3)リサイクル建材などを用いた家−−などがある。いくつかのタイプを組み合わせたエコハウスも多い。
(2005/1/10:毎日新聞-東京朝刊)
サポート建築士、無料相談始動へ
 バリアフリー化やシックハウス対策など、安全で健康な住まいづくりについての相談に対応しようと、「安全住まいづくりサポーター」として登録した建築士らが無料相談事業を始める。電話で受け付け、現地に出向いて具体的に相談を受ける計画。「中立、公平な立場で気軽に相談を受ける体制をつくりたい」としている。
 住宅に関しては「相談すると、すぐに営業に結びつけられてしまう」との声があることから、県建築士会と県建築士事務所協会は昨年九月、「県安全住まいづくりサポートセンター」(大石榮センター長)を設立、県の支援を受けて計画した。
 相談は同センターと県内十支部で受け付け(平日午前九時−午後五時)、複数の建築士が現地を訪ねて行う。内容は新築や増改築、リフォームなど住宅全般に関するもので、バリアフリー化やシックハウス対策、敷地の選定、融資制度などについても応じる。
 サポーターとなる建築士は実務経験などをもとに審査し、既に百七十三人を登録。最終的には約三百人体制で県内全域をカバーする。今月はちらし四千枚を配布するなどでPRし、二月から本格始動の予定。
 同センターは「県内での安全な住宅づくりや県産木材の利用促進につなげたい」と話す。問い合わせは事務局(県建築士会)、電話0952(26)2198。
(2005/1/7:佐賀新聞)