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第4回 建築人賞 発表

主催:公益社団法人 大阪府建築士会 / 後援:(一社) 大阪府建築士事務所協会

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「建築人賞」の趣旨と目的

 大阪府建築士会の会報誌「建築人」は1964年より毎月刊行され、2012年4月号で574号目の発刊となりました。会員に向けて情報提供を行うとともに作品発表の場を設け、建築にかかる技術及び文化の普及・発展に寄与することを目的としてきました。
 「建築人賞」は2009年(平成21年)に創設され、今年で第4回目を迎えました。「建築人」の「Gallery」で掲載された作品を審査対象とし、それらの中から特に社会・芸術・文化・技術面で優れた作品を顕彰することを目的としています。審査については、日本を代表する数々の建築雑誌の編集に携われてきた石堂威氏に第1回目より審査委員長を務めていただいています。審査対象は建築地や建築種別を問わず、大阪府建築士会の会員のみならず、近畿全域で活動する建築士に応募の門戸を広げています。
 石堂氏が今年度の審査総評で触れられている通り、「建築人」には大阪さらには近畿地区が担うべき文化の伝統を伝える役割があります。「建築人賞」が建築士の登竜門となり、建築文化の発展に寄与し、大阪・近畿から全国へ発信する役割を担い続けられるよう、「建築人」の編集に関わる私たちはこれからも引き続き努めてまいります。

受賞作品紹介

受賞建築主設計者施工者
建築人賞 神戸国際中学校・高等学校
河野記念アルモニーホール
学校法人 睦学園 竹中工務店 竹中工務店
建築人賞 苦楽園の家 松井 龍 二宮俊一郎+諸留智子
一級建築士事務所エヌアールエム
創建
建築人奨励賞 児童養護施設 三ヶ山学園 社会福祉法人
三ヶ山学園
野村充建築設計事務所 東亜建設工業
建築人奨励賞 西宮神社 祈祷殿 宗教法人 西宮神社 大林組 大阪本店
一級建築士事務所
大林組
建築人奨励賞 あおい町里山文化交流センター おおい町 徳岡設計 こんどう・日登建設
共同企業体
建築人奨励賞 路地のある寺内町の家 NEO GEO
横関正人
+三木万貴子
山本建設

審査総評

 未曾有の3.11から一年以上が過ぎました。地震の解明が進み、近い将来、東海・東南海・南海の連動型地震の可能性が高いと指摘され、それによる長周期地震動への対策も講じる必要があることがわかってきました。地震・津波・原発事故による被災地の復興の問題はまだまだ深刻な状況にありますが、将来に向けての対策も急がれています。建築物の設計、施工、維持管理に関わる建築人はいっそうの情報収集、技術の習得に励むことが望まれています。
 4回目を迎えた建築人賞に審査員として関わってきて少し気付いた事があります。「建築人」は、市販の全国版の雑誌とは違って大阪府地区の会誌として建築作品を募り、その中から賞を定めることをしてきています。大阪府地区に設計の拠点はあっても、しかし応募作品は近県に散在して近畿一円を圏内に置き、さらにその周囲にも応募の作品を持っています。その状況は東京でも同じかと思いますが、はっきりと異なる点があります。東京都地区の会誌はそれなりの独自性をもってはいても全国版の存在にかすんでしまいがちです。「建築人」は、やはり商都大阪の歴史を持ち、文化が違います。文化という面でいえば、北海道、東北、北陸、九州など、それぞれ雰囲気の面持ちが違って貴重です。つまり「建築人」には全国版が持ち得ない役割、地区版が担うべき文化の伝統を伝える役割があるということです。
 さて今回の審査ですが、第1次審査では一般の部が粒ぞろいでなかなか建築人賞を決められずにいたところ、現地審査後に判断してもよいといわれ、現地審査で決定しました。住宅の部は第1次審査で決定後、確認のために現地を訪れました。現地審査で思ったことは、建築家の敷地に対するこだわり、敷地からの発想を何よりも大切にしていたことでした。敷地は風土を構成するものの一部で、文化を担う重要な要の一部でもあります。敷地という特定の場所で、何を建築家素が考えるか、その一つ一つの試みの積み重ねがいずれ文化へとつながります。
 一般の部・建築人賞の「神戸国際中学校・高等学校 河野記念アルモニホール」はこの点で興味深いものでした。中高女子一貫校としては異例とも思えるコンクリート打放しを基調としたキャンパスで、その奥の一隅に計画された体育館が今回の対象です。コンクリート打放しは組織の先輩が選んだデザイン・コンセプトであり、風化せずに優れた建築の姿を今に留めていました。デザインの継続性は暗黙裏にあり、その上で何ができるかが設計担当に求められていました。担当者は敷地の法面に着目して、付け加えうるデザイン・コンセプトの「自然」を発見しました。これにより、このキャンパスは新たに展開できるソースを獲得したといえるでしょう。
 住宅の部・建築人賞「苦楽園の家」は阪神間のきつい傾斜地のぽっかりと空いた場所、いわば今まで見捨てられてきた場所が敷地であるがゆえに、逆に安全で、生活を快適に楽しむ家として美しく存在しています。これは間違いなく阪神間の文化で、こうした目で見ると、「露地のある寺内町の家」、「西宮神社 祈祷殿」は関西文化の中にあり、福井県に位置する「おおい町里山文化交流センター」も同じく関西文化圏の中にあって、さらに山村文化を内外に纏っています。
 21世紀が20世紀と大きく違うところは、よく指摘されるように多様性です。今後、地方分権もゆっくりと進み、伝統、文化が新たに促され、育まれていくことでしょう。「建築人」も旧式の全国版雑誌に対抗するものではなく、文化を担う広域の地域、地区版へと育っていっていただきたいと切に思います。

建築人賞審査委員長 : 石堂 威


審査委員長 : 石堂 威

1942年台北市生まれ
1964年早稲田大学第一理工学部建築学科卒
㈱新建築社入社
1980年~「新建築」編集長(1991年まで)
1985年~「住宅特集」創刊編集長(1987年まで)
1992年~「GA JAPAN」創刊編集長(1995年まで)
1996年~都市建築編集研究所 設立 代表
2008年~第1回から現在まで建築人賞審査委員長

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