過去の入賞発表
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主催:公益社団法人 大阪府建築士会 / 後援:(一社) 大阪府建築士事務所協会
「建築人賞」の趣旨と目的
大阪府建築士会の会報誌「建築人」は1964年より毎月刊行され、2013年4月号で586号目の発刊となりました。会員に向けて情報提供を行うとともに作品発表の場を設け、建築にかかる技術及び文化の普及・発展に寄与することを目的としてきました。
「建築人賞」は2009年(平成21年)に創設され、今年で第5回目を迎えました。「建築人」の「Gallery」で掲載された作品を審査対象とし、それらの中から特に社会・芸術・文化・技術面で優れた作品を顕彰することを目的としています。
審査対象は、建築地や建築種別を問わず、本会の会員のみならず、近畿全域で活躍する建築士に門戸を開いています。審査については、日本を代表する数々の建築雑誌に携わられてきた石堂 威氏に、第1回から第5回まで5ヵ年にわたってお引き受けいただきました。石堂氏には、建築人賞が本会の主催する重要な賞のひとつとして定着するまでに育てていただき、感謝いたしております。 「建築人」には、大阪さらには近畿地区が担うべき文化や伝統を伝えていく役割があります。「建築人賞」が建築士の登竜門となり、建築文化の発展に寄与し。大阪・近畿から全国へ発信する役割を担い続けられるよう、「建築人」の編集に携わる私たちはこれからも引き続き努めてまいります。
建築人編集人代表 米井寛
受賞作品紹介
賞 | 受賞 | 建築主 | 設計者 | 施工者 |
---|---|---|---|---|
建築人賞 | 大正製薬(株) 関西支店 | 大正製薬株式会社 | 竹中工務店 | 竹中工務店 |
建築人賞 | 楡の木テラス | 石井良平建築研究所 | ------ | 林建設 |
建築人奨励賞 | (株)小松製作所 大阪工場 大阪テクニカルセンタ |
株式会社 小松製作所 | KAJIMA DESIGN | 鹿島・前田建設工業・間組 共同企業体 |
建築人奨励賞 | 柊木の家 | ------ | 木原千利設計工房 | SEEDS・CASA |
最終選考に残った作品
最終選考 | 設計者 | 構造設計者 | 施工者 |
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滋賀銀行名古屋志賀寮 | 竹中工務店大阪一級建築士事務所 | ------ | 竹中工務店 |
大山崎の家 | マニエラ建築設計事務所 | 木構造建築研究所 田原 | 加藤組 |
帝塚山東の家 | 井上久実設計室 | ------ | 伊藤嘉材木店 |
岩倉の家 | 吉村篤一+建築環境研究所 | ------ | 片山工務店 |
Zepp Namba(Osaka) | 大林組大阪本店一級建築士事務所 | ------ | 大林組 |
審査総評
建築人賞が第五回を数え、ようやく御役御免となったところで、これまでの審査を少し振り返りながら総評を書かせていただこうと思う。
最初に審査員のお話をいただいたとき、現地審査があるものだと思っていたが、あくまでも『建築人』の誌面上のみからの判断で、ただし大阪府建築士会会員のメンバーがサポートするということであった。現地審査がなくて可能だろうかとやや疑問に思いつつ、専門誌の編集を長くやってきた経験を生かしてみようと前向きに考え、お引き受けした。しかし実際には、掲載のスペースが一/四ページから二ページのものまであり、一/四ページのものは、経験上の想像力を加えてもさすがに判断するには材料不足で、すべての作品を同一の審査レベルに持っていくのに大いに苦労した。
それはともあれ、審査を終えたあと、やはり結果に対して気になりだした。そこで建築士会の担当者にお願いして、選出した作品を自主的に確認したい旨を伝えて、設計者に連絡を入れてもらい、見せていただくことをしてきた。この確認作業は審査員の責任を果たすという意味で必要なことだったと思っている。昨年の第四回は第二次審査でなかなか最終判断ができずにいたところ、結論は確認後でもよいといわれて、それに従った。第五回の今回は第二次審査を大阪で行うこととなり、ならば審査の前に確認できるものは見せていただこうとお願いした。第二次審査用に設計者に用意していただいた資料を読み込んだ上で、事前の確認ができたのは心強かった。
このようにして審査員の役割をなんとか果たしてきたと思っているが、力強かったのは、同じ五年間、陰ながら技術面のサポート役を果たしていただいた指田孝太郎、川北英の両氏の存在である。お二人はまさに実践で設計者の役を務め上げてこられた信頼できる方々で、私の迷いや逡巡、また無知に対しては積極的にアドバイスをいただいた。的確な配剤をしていただいたと士会に感謝しているところである。
さて今回のことである。第一次審査で選んだ作品を対象に、名古屋、京阪神間にあるものを見て回った。「(株)小松製作所大阪テクニカルセンタ」は広大な工場敷地の中にあり、その正門からやや距離をおいた真向かいに、特徴の柱・梁によるグリッド・ファサードがある。建物の手前にはビオトープがあり、工場敷地内とは思えない雰囲気をつくり出していたが、これも設計側からの提案だったようだ。毎年、周囲の住民を敷地内に入れ、交流を図る行事があり、テクニカルセンタの屋上から周りの景色を楽しんでもらったという。これは周囲には高層の建物がないため大変喜ばれたそうだ。
また、「大正製薬(株)関西支店」でも、資料からのみでは読み取れない成熟した今日の自社ビルのあり方を確認できた。車で地階にアプローチすると、八層の屋上から光庭を通して届いた柔らかな光の中で、白砂利、ミスト、竹、照明のアンサンブルが出迎えてくれた。次に一階の爽やかなエントランス空間と二〇〇席ほどの清楚なホール、ホールから出て化粧室に至までの気分転換を促す空間、各階の両面採光による明るい執務空間など、クライアント企業の特性を感じさせるような上質で豊かな空間で、またルーバーや手摺など磨き上げたディテールの数々が光っていた。
住宅の「柊木の家」は事前に連絡を取ることができなかったため道路からの観察に止まったが、周辺の環境を実感できただけでも設計者の追い求めているものが推察できたように思う。まことに設計の達者な方だと思った。「楡の木テラス」は六戸の内、まだ入居していない一戸の内部を見学することができた。この建物は、二次審査用の資料で設計者が自ら進んでむずかしい六軒長屋の課題を選んで挑戦したことを知り、ぜひ見学したいと思った。プライバシーを極度に保ちたいという人には向かないかもしれないが、むしろ隣人たちと上手に触れ合いながら暮らしたいと思っている人たちも多いのではないか。事業者の説得を含め苦労の多いプロジェクトだったろうが、それをクリアするために多くのことにトライしていて、好感がもてた。こうした前向きで、ひたむきな情熱こそ建築人賞にふさわしいのではないかと思った。後日聞いたところによると、見学した日の夕刻、入居希望者が現れて満室となり、関係者全員がホッとされたという。
思い返すと、毎回、設計者の熱い思いを感じた建物を賞に選んできたように思う。紙一重の差で選べなかった作品も多数あり、その中で私も考え、多くのことを学んできたとつくづく思う。作品をGallery欄に寄せていただいた皆様に心から感謝申し上げたい。
建築人賞審査委員長 : 石堂 威
審査委員長 : 石堂 威
1942年 | 台北市生まれ |
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1964年 | 早稲田大学第一理工学部建築学科卒 |
(株)新建築社入社 | |
1980年~ | 「新建築」編集長(1991年まで) |
1985年~ | 「住宅特集」創刊編集長(1987年まで) |
1992年~ | 「GA JAPAN」創刊編集長(1995年まで) |
1996年~ | 都市建築編集研究所 設立 代表 |
2008年~ | 第1回から現在まで建築人賞審査委員長 |
新審査委員長決定
古谷誠章氏
第6回建築人賞より、審査委員長として古谷誠章先生に就任して頂くことになりました。
1955年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。同大学院博士後期課程修了。早稲田大学助手、近畿大学工学部講師を経て、1994年に早稲田大学助教授に就任。1997年より現職(教授)。1986年から文化庁建築家芸術家在外研究員としてスイスの建築家マリオ・ボッタの事務所に在籍。1994年に八木佐千子と共同してスタジオナスカ(現NASCA)を設立。「詩とメルヘン絵本館」日本建築家協会新人賞(1999)、「やなせたかし記念館」、「會津八一記念博物館」、「ZIG HOUSE / ZAG HOUSE」、「近藤内科病院」、「高崎市立桜山小学校」、「小布施町立図書館 まちとしょテラソ」などで日本建築学会作品選奨、2007年に「茅野市民館」で日本建築学会賞作品賞、日本建築学会作品選奨、日本建築家協会賞、BCS賞などを受賞、2011年に日本芸術院賞受賞。著書に「Shuffled 古谷誠章の建築ノート」(TOTO出版)「がらんどう」(王国社)「マドの思想」(彰国社)など。
平成25年度 | 第5回 建築人賞発表 |
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平成24年度 | 第4回 建築人賞発表 |