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主催 : 公益社団法人大阪府建築士会 / 後援 : 大阪府・公益財団法人関西・大阪21 世紀協会
「大阪建築コンクール」の趣旨
建築士はその職責を通じて地域社会の発展に寄与し、建築美を通じて建築文化の向上、ひいては地域文化の振興にも寄与していく必要があり、その責務は重大であります。
大阪建築コンクールは、建築士と社会とのかかわりを通じて建築作品を評価し、その優れた実績をたたえ、建築作品の設計者である大阪府建築士会正会員または大阪府在住もしくは在勤の設計者を表彰します。同時に行う渡辺節賞については、新しい建築文化の原動力となる若い優れた設計者をたたえ、さらなる発展を望むものであります。
募集範囲
2009年1月1日から2013年12月31日の間に竣工し、完了検査済証の交付を受けた建築物
*建築確認申請不要物件は完了検査済証不要竣工年月日は工事完了時
審査委員会
委員長 | 本多 友常(摂南大学 教授) | ||||||
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委 員 ※50音順 |
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受賞作品紹介
●大阪府知事賞部門
賞 | 受賞 | 設計者 |
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大阪府知事賞 | 日本圧着端子製造株式会社 | 岸下真理、岸下和代、都倉泰信、稲垣誠(Atelier KISHISHITA + Man*go design) |
楡の木テラス | 石井良平(石井良平建築研究所) | |
中之島フェスティバルタワー | 江副敏史(株式会社日建設計) |
●渡辺節賞部門
賞 | 受賞 | 設計者 |
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渡辺節賞 | 斑鳩の家 | 中山大介(中山建築設計事務所) |
東大谷高等学校泉ヶ丘キャンパス | 國本暁彦(株式会社竹中工務店) |
審査経過並びに総評
審査委員長 : 本多 友常
昭和29年度(1954)より毎年開催されてきた当建築コンクールは、今回から1年おきに開催されることとなった。その結果コンクールとしてのハードルは相対的に高まり、建築に求められる期待も高度なものとなった。その結果応募作品は社会的に影響力の高いビッグプロジェクトも多く、それらの評価のクライテリアをどこにおくべきかについて、議論は百出し多岐に亘った。その過程において、審査という行為は、現代における建築のあり方に対するメッセージを送ることでもあることが、強く意識された。
審査の観点は多面性を帯びたが、コンセプトと結果の間の筋道が厳しく問われることとなった。何をどのように評価し、受賞作品として推薦する理由は何であるか、あるいは推薦しない理由は何であるかが率直に議論された。その結果最終段階での絞込みにあたっては、投票による決定に頼ることなく、各委員の観点とその評価をめぐって意見を出しつつ収束への道を辿ることとなった。
議論の主題は、「保存問題に端を発する都市の持続性と継承のあり方」、「立論の立て方と建築の整合性」、「都市空間への提案性」、「周辺環境との手の結び方」、「新たなビルディングタイプへの挑戦」等々であり、総括的には建築物本体の作品性を超えて、周辺環境との関係性のあり方、生成された意味について、評価の光が向けられたといえる。
第一次審査では知事賞部門42点、渡辺節賞部門15点につき提出書類を閲覧し、現地審査に残すべきものを選定した。選定方法は各人が数票をもって推薦投票するものを選出し、1票でも入ったものについては推薦理由を尊重しつつ、見逃しのないように意見交換され、最終的に知事賞部門候補6点、渡辺節賞候補3点を現地審査対象とすることとなった。
「中之島フェスティバルタワー」は「ダイビル本館」とともに、都市景観の骨格を形成する大プロジェクトとして注目され、旧館の存在感が大きかっただけに、歴史的持続性の課題が重く課せられていた。
しかし「ダイビル」については、最後までオーセンティシティ(真実性)に対する建築的所作としてのアプローチが議論を沸騰させ続けた。元在った場所を移し、復元的手法を駆使した再生は、都市に於ける場の意味と、建築としての歴史的持続性においてどこまで評価すべきか、設計者が関与できる範囲の事情は十分に理解しつつも、最終的にはこれを是とするメッセージは、控えるべきではないかとの判断に至ることとなった。
一方「中之島フェスティバルタワー」は、その課題をあっさりとすり抜け、現代における高層複合建築のひとつのあり方を示した点で、今日的シルエットを生み出した点が評価された。一般的に現代の高層建築物はカーテンウォールなどの単一の表層によって包まれ、結果的に巨大さの表現として林立する。ここでは旧ホールのボリューム感を利用し、複合的要素を率直に積み重ねた結果が、今日的都市の様相として外観に建ち現れ、遠景、中景にも応答する建築として成立している。
「日本圧着端子製造株式会社」は、各階の床を4つに分割しスキップさせたもので、これをらせん状に繋ぎ合わせて積み上げている。そこに発生しているオフィス空間は立体的にずれた床が重なり合い、自分の位置を把握しにくい錯覚をおぼえるが、そこに配置されている家具やデスクのオフィスレイアウトが、場の安定性を支えている。このように全館を一体の空間として使いこなす意志は、発注者の理解と熱意も一体となったものであり、建築の幸せな造られ方を示しており、オフィスとしてのビルディングタイプを拡張することに成功している。
「楡の木テラス」はローコストの賃貸住宅であるが、6個の平面をずらすことにより住まいとしての機能と生活の質を確保しつつ、まちなみへの軽妙な柔らかさを生み出している。前面に位置する住戸の店舗を可能とした使い方と、奥に位置する住戸のニーズの違いにも配慮しつつ、まちなみへの接続の仕方、スケール感、素材の使い方も含めて、きわめて高い評価を集めたものである。
渡辺節賞
現地審査に残ったものは3点あり、設計者としての力量はともに三者三様に高いポテンシャルを感じさせるものであった。
その中で浮上した判断のよりどころは、「場」の生成において気負いを感じさせない静かな作法にあった。
中山大介氏の「斑鳩の家」と國本暁彦氏の「東大谷高等学校泉ヶ丘キャンパス」はともに置かれた環境において、存在を強く主張するものではない。しかし空間の特異性を突出させないことが、結果的に環境の質に関与する巧妙な手法となっていたとも言える。
「斑鳩の家」は広い農地に囲まれ、白い面を外壁にまとい、小さく、小さく、しかしそれでも凛として気品を保ち、住まいとしての力強さを放っていた。昔から存在していたかのような普通の家としての存在感は、内部の居心地の良さと相まって家のあり方を静かに主張していると感じられた。
「東大谷高等学校泉ヶ丘キャンパス」は多数の教室を襞状に折り曲げ、配置していくことで中庭を生み出し、回遊性を獲得している。これにより校外からは学生達の見え隠れが、ほどよい接触度として制御されており、地域とのつながり方の配慮がほどこされている。
以上の評価により、2年おきのコンクールとなったことに鑑み、今回は小規模な住宅と、大規模な校舎の設計者を、ともに渡辺節賞として推薦することとなった。
平成30年度 | 第63回大阪建築コンクール入賞発表 |
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平成29年度 | 第62回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成28年度 | 第61回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成27年度 | 第60回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成25年度 | 第59回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成24年度 | 第58回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成23年度 | 第57回大阪建築コンクール入賞発表 |
平成22年度 | 第56回大阪建築コンクール入賞発表 |
岡本 森廣 | 田中 義久 | 濵田 徹 |
上田 茂久 | 岡﨑 雅 | 横田 友行 |
水谷 敢 | 芳村 隆史 | 米井 寛 |
藤田 忍 | 今井 俊夫 | 辻井 光憲 |
中島 薫 | 山城 健児 | ㈱原田彰建築設計事務所 |
株式会社ライト・ストーリー総合計画 | 株式会社IAO 竹田設計 | 須部 恭浩 |
修成建設専門学校 | 生山 雅英 | 株式会社アトリエ天藤 |
越井木材工業株式会社 | 株式会社三菱地所設計 | 株式会社ノザワ関西支店 |
あけぼの住研有限会社 | 織部製陶株式会社 | 株式会社徳岡設計 |
岸下 愛子 | 岸下 秀一 | 有限会社家倶家 |
木原千利設計工房 | 株式会社ピアレックス・テクノロジーズ | 岸下 真理 |
岸下 和代 | 株式会社インターオフィス | ATELIER-ASH |
榊原 節子 | 森村 政悦 |