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大阪建築コンクール
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平成30年度 第63回大阪建築コンクール 入賞発表

主催 : 公益社団法人大阪府建築士会 / 後援 : 大阪府

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「大阪建築コンクール」の趣旨

 建築士はその職責を通じて地域社会の発展に寄与し、建築美を通じて建築文化の向上、ひいては地域文化の振興にも寄与していく必要があり、その責務は重大である。
 大阪建築コンクールは、建築士と社会とのかかわりを通じて建築作品を評価し、その優れた実績をたたえ、建築作品の設計者である大阪府建築士会正会員または大阪府在住もしくは在勤の設計者を表彰する。同時に行う渡辺節賞については、新しい建築文化の原動力となる若い優れた設計者をたたえ、さらなる発展を望むものである。

募集範囲

 2014年1月1日から2018年12月31日の間に竣工し、完了検査済証の交付を受けた建築物
 *建築確認申請不要物件は完了検査済証不要
 *竣工年月日は工事完了時

審査委員会

委員長松隈 洋(京都工芸繊維大学教授)
委 員
※50音順
橋本 一郎(エス・キューブ・アソシエイツ)鉾井 修一(京都大学名誉教授)
松岡 聡(近畿大学教授)松田 浩三(大阪府住宅まちづくり部公共建築室室長)

受賞作品紹介

●大阪府知事賞部門

受賞設計者
大阪府知事賞 龍谷大学 大宮キャンパス 東黌 岡田 泰典・近藤 努・金井田 雄介(株式会社日建設計)

●渡辺節賞部門

受賞設計者
渡辺節賞 HAT house ―生きていく住まい― 阿曽 芙実(阿曽芙実建築設計事務所)
奨励賞 該当作品なし -

審査経過並びに総評


審査委員長 : 松隈 洋
 図らずも、引き続き審査委員長を務めることになった。それでも、初対面だった前回の審査員4人のうち3人が続投となり、構造設計者の桝田洋子氏と交代した橋本一郎氏も含め、前回の議論を踏まえる形で、審査は順調に進められた。また、事務局の万全のスケジュール管理と配慮もあって、忌憚のない活発な意見交換が行なわれ、十分な時間をかけた議論を通して、それぞれの賞が持つ意味と、それを選ぶことによって、審査委員会が今の時代において建築に求められているテーマをどう提示できるのか、という評価基準について、密度の高い議論ができたと思う。その一方で、今回の応募作品の傾向として目についたのは、大規模なものや公共性のある建物が大幅に減り、住宅や小規模な建物が大半を占めた点である。このことが、昨今の厳しさを増す時代状況を反映し、コンクールの応募に値するような建築を手がける機会が減少したのか、と少し気がかりにもなった。
 さて、今回は大阪府知事賞部門に26点、渡辺節賞に7点の応募があり、審査初日に、応募書類による一次審査を行なった。審査員各自による十分な時間をかけた応募書類の自由閲覧を経て、それぞれの判断により現地審査の対象に推薦する作品の投票を行い、その集計結果に基づいて絞込み作業を行なった。そこでは、1票以上の得票を得たものについて、推薦した委員の意見を再確認しながら、評価軸を見定める議論を繰り返した。そして、昨年と同じく、最後は審査員全員による合議により、現地審査対象を選定した。
 以上のような一次審査の結果、府知事賞6点、渡辺節賞3点が現地審査の対象となり、2日間にわたって全9作品を巡り歩いた。2日目の現地審査の終了後、最終審査会を開いた。この二次審査では、現地審査した順に、それぞれの建物の評価について、再度一つ一つ意見交換をしながら確認を行なった。また、その際、書類審査によって判断した一次審査の時点と、現地で設計者の説明を受けた時点での印象の違いや、書類では読みきれなかった周辺環境とのつながりについても意見を求め、評価軸の再検証を進めた。そして、最後は、一次審査と同じく合議により、それぞれ1件の受賞作品を決定した。
 府知事賞に選ばれた「龍谷大学大宮キャンパス東黌」は、龍谷大学発祥の地である大宮学舎の一角に建設された。特筆されるのは、対面に建つ国の重要文化財に指定された本館など既存の建物と新しい形での調和を図ろうとしたファサード・デザインの方法である。それらの建物の歴史的要素に敬意を払いつつ、建築的な解釈を施した上で、さらに現代技術によって可能となった洗練さと透明感を加えることに成功している。その対比的なデザインは新たな道筋を切り拓いたものとして共感と賛同を得た。ただ、せっかくファサードで実現した透明性が内部空間までは貫徹できておらず、やや閉じた雰囲気となってしまったことが惜しまれる。それでも、今後の規範と成り得る優れた質を備えた建築である。
 また、渡辺節賞に選ばれた「HAThouse-生きていく住まい-」は、設計者の建築と町に対する思いが十全に盛り込まれた表情豊かな空間づくりに共感が集まった。敷地は六甲山麓の閑静な住宅地にあり、設計者自身のアトリエと住まいを併設したつくりになっている。アトリエを住宅地に開き、住まいに奥行きのある迷路性を創出するために、屋根の架構を45度に傾けるなど、過剰なまでの楽しいアイデアが盛り込まれた内部空間になっている。一方で、玄関まわりの開き方や外観のまとめ方など、住宅地に対する公共空間のさりげない創出と小気味良いデザインが、好ましい雰囲気を醸し出していた。設計者のバランスの良い設計センスと誠実な姿勢に今後の活躍が期待される。尚、構造を担当した審査員の橋本氏は、この作品の審査には加わっていない。
 続いて、現地審査の対象で受賞に届かなかった作品について、コメントを記しておきたい。
 府知事賞候補の「農人町の町家」は、洗練された作風と高い施工技術によって上質な住まいを実現していた。しかし、昔の町割りと民家の点在する独特な周辺環境に対しての提案が希薄な点に違和感が残った。「と」も、前所有者が残した庭の植栽を活かしながら、簡潔で心地よい住まいが提示されていたが、道路側の妻面に開口部がなく、やはり周辺環境への提案が見られないことが問題とされた。「こんごう福祉センター障害者支援施設かつらぎ・にじょう」は、施設特有の困難な条件を乗り越えて機能的な空間が実現されていたが、24時間体制で働く職員も含めて、この施設で長時間過ごす人々が心を通わせられるような仕掛け(家具、照明器具、素材感や細部のつくり込み)を見つけることができなかった。「ハハハウス」は、一人暮らしの母のために建てられた高気密・高断熱で、高齢者に配慮したエレベーターやつかまり手すりの設置、開放感とプライバシーを両立した隅切りの開口部など、さまざまなアイデアを盛り込んだ住まいと設計者自身のアトリエの併設だが、割り切りの良すぎる外壁の取扱い方など、もう少し踏み込んだ建築的提案がほしかった。
 また、渡辺節賞候補の「デッキプロジェクト」は、宅地造成で生まれた斜面地への大胆な提案として注目されたが、上部の木造部分の構造が明晰ではないこと、1階の擁壁と基礎部分に期待された以上の空間的な工夫が欠けていること、全体にやや仮設的な状態であり、将来性に不安が残るなどの疑問点が出された。そして、「太陽の塔」は、1970年万博の遺構であるモニュメントの再生計画であり、内部空間を蘇らせる困難な仕事として高く評価される一方で、これほどの事業が果たして応募者個人に帰属できるものなのか、についての疑問が拭い切れなかった。
 今回の審査で問われたのは、府知事賞における普遍性を併せ持つ優れた設計方法と周辺環境に対する積極的な提案の有無であり、渡辺節賞における自らの設計方法に対する真摯な姿勢と初心的なデザインの魅力だったのだと思う。続く応募と議論の広がりに期待したい。

年度別 大阪建築コンクール 入賞発表
大阪建築コンクール基金出捐者リスト 順不同 敬称略
株式会社IAO 竹田設計 岸下 和代 濵田 徹
あけぼの住研有限会社 岸下 秀一 株式会社原田彰建築設計事務所
ATELIER-ASH 岸下 真理 株式会社ピアレックス・テクノロジーズ
株式会社アトリエ天藤 木原千利設計工房 藤田 忍
生山 雅英 越井木材工業株式会社 水谷 敢
今井 俊夫 榊原 節子 株式会社三菱地所設計
株式会社インターオフィス 修成建設専門学校 森村 政悦
上田 茂久 須部 恭浩 山城 健児
岡﨑 雅 田中 義久 横田 友行
岡本 森廣 辻井 光憲 芳村 隆史
織部製陶株式会社 株式会社徳岡設計 米井 寛
有限会社家倶家 中島 薫 株式会社ライト・ストリート総合計画
岸下 愛子 株式会社ノザワ関西支店 竹原 義二
中嶋 節子 大阪府住宅まちづくり部 堤 勇二 森田一弥建築設計事務所
金森 秀治郎 越智 正一 樫永一男建築研究所
都窯業株式会社 河原輝雄 長谷川 総一

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